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5:沢 里佳子

「なんでなん?」


里佳子は激怒した。


まるで理不尽な王に対して「激怒」したメ○スのように。


腕組みをしたまま目の前の男を睨みつける。



沢 里佳子。21歳、大学3年生。



「えー……っと、はは」


正座させられた男は、足の痛みで思考がうまく働かない。


「何か面白い?」


「いえ」


男は顔から脂汗をたらしながら開いた口をきゅっと結ぶ。



近藤政弘。21歳、大学3年生。



4回目の浮気で、おとなしい(と思っていた)彼女が、キレた。


深夜のファミレスで、突然里佳子に浮気を攻められ、地べたに正座させられた。

周りの客の笑いと、カメラのシャッター音がイタい。


「どっちからなん」


「何が、ぁィタ…ですか」


「どっちが先に好きになったん」


里佳子はポテトをつまみながら興味なさそうに尋ねる。


「あっちです」


「…そぉ」


「ハィ……」


「…………」


通りかかった店員も興味心身で耳を傾けている。


「あ、すいません。この皿片付けて下さい」


皿にはまだ沢山のポテトが残っている。


「はぃ、あーんしてー」と里佳子はおもむろに政弘に皿を向ける。


「ばゎ…ぐっふ」


大量のポテトを一気に口の中に放り込まれた政弘は目を白黒させる。

その光景を見て店員は目をまん丸にする。


「お皿、片付けてクダサイ」


里佳子は半強制で店員に下がらせる。


政弘は必死でポテトを飲み込もうとしている。



「私と、別れたい?」


突然の言葉に政弘は動きを止める。


こういうパターンでは、絶対に別れないからと言われる・又はボコボコにされてフラれる

というオチに決まっていると思っていた政弘は、自分の前に現れた選択肢に驚きを隠せない。


どう、答えるべきか。


「いっつもさ、私がなんかする度決めよったやん?今度はマサが決めて」


里佳子の笑顔に政弘は恐怖を覚えた。

目の前に提示された選択肢は、フェイクだ。


「ごめんなさい。もうしません」


「ハイよく出来ました☆」


里佳子はすっと立ち上がり帰り支度を始める。


政弘も立ち上がるが、足の痺れにふらつきテーブルの角で頭を打つ。


「ごゎっ!!」


それを一瞥し、里佳子は政弘に言葉を吐きかけた。


「なにやってんの ポチ。行くわよ」



その言葉に政弘は目を丸くしたが、すべてを悟ったように里佳子の後に続いた。




―――――――――――――――――――――――――


「オイ、あの客帰ったぞ」

「お前怖くなかった?」

「皿渡されたとき心臓止まるかと思った」

「アレは魔物だ」

「ポチ、一生しりに敷かれるぞ」

「かわいそうだが仕方が無い」

「でもなんか、俺愛着わくわ」

「何か同じにおいを感じたな」

「俺らも彼女できたらしりにしかれるタイプか…」

「やだなー、『あんた、お茶』とか尻かきながら言われたときにゃへこむわ」

「炊事洗濯掃除に子どもの世話…」

「……」

「…やめようぜ。悲しい妄想」

「そだな」

「今日は俺らのバイトが深夜のファミレスだってことが読者に分かっただけで」

「満足だな」

「満足だ。」

「いつ俺たち本編に登場するかな」

「夢のまた夢だ」

「…そんな」

「…」

「…」





・・・・・・・・・・・・・・・・


おしまい












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