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4.逆ハーではありません

主人公(公爵令嬢) シーアン・サワクーロ

兄 シェーン・サワクーロ

第二王子 ザワーオ・ウトッレ・リムッツ・ガイーナ

従兄 ジンセンバニ・ワカアラ

王太子 レイン・メンイケ・シュワイ・ガイーナ


名前考えるのめんどくさい(ぉぃ

 結論から言うと、「第二王子に心から愛する人ができた場合は婚約解消」という条件は王家が飲んだ。


 兄があのまま黙っているはずもなく、第二王子の暴言は一応オブラートに包まれて両親に伝えられたらしい。私を溺愛している父は激怒し、母もまた「あらあら……王妃様と話し合いをしなきゃならないようね……」と壮絶な笑みを浮かべのたまったらしい。

 だが当然のことながらその程度では婚約解消はできない。不本意ながら王家と公爵家の婚姻である。あんな暴言王子でも将来王弟として兄を支えるという役割がある。本人の能力や資質はどうあれ公爵家の後ろ盾がなければ将来の地位は約束されない。


 そう考えると乙女ゲームの王子エンドというのはもしかして修羅の道なのではないだろうか。


 確かヒロインは男爵家の庶子だったはずである。乙女ゲームの鉄板だ。悪役令嬢が、ヒロインに対して行った悪事を断罪し、王子の婚約者としての地位を剥奪。その後釜にヒロインが座る。王太子が王となってからは王弟として政治に関与する夫を支え幸せな生活を送る。

 なんてことは現実ではありえない。

 この世界は身分制度が確立されている。よしんば悪役令嬢であるシーアンが男爵家の庶子になど嫌がらせをしたところで咎める者はいない。殺そうとしたというのなら別だが階段から突き落としたぐらいでは「殺意はありませんでした」で済む話だ。そしてその程度で王家と公爵家の間の婚姻がなくなることなどありえない。第二王子にできることはせいぜいヒロインを妾にするぐらいである。

 だがそんなこと、私はお断りだ。

 暴言王子の妻になるぐらいなら修道院へ行った方がましである。

 王子と婚約解消したらもらい手がなくなるかもしれないよ? ということは事前に王太子から言われていた。確かに王子に婚約破棄なんてされたら求婚してくれる人はまずいないだろう。けれど誰がわざわざ不幸になるとわかっていて王子妃になりたいと思うのか。


「でしたら余生は修道院で暮らしたいと思いますわ」


 と枯れたことを言ったら兄と従兄に止められた。


「それならば僕がもらう! 初めから君に求婚する予定だったんだ!」


 とすごい勢いで従兄に迫られた。


「……え、ええと……その時はまた考えますね……?」


 とりあえず曖昧に返事をし、事なきを得た。「修道院」という単語は禁句のようである。従兄のことは嫌いではないがあのテンションについていくのはいささかつらいものがある。


 そして第二王子と会う場合についてどうなったのかといえば。


「やあ」


「……失礼ですが、何故レイン兄さまがこちらにいらっしゃるのですか」


「ウトッレ、私がここにいることに何か不都合でも?」


「い、いえ……」


 いつものように庭園に案内され2人にされたと思ったら、何故かそこに王太子がいたのである。誰かを付けるという約束だったじゃないかと内心悪態をついていたが、すまなかったとは思う。しかし学園はどうした?


「親友の妹が弟の婚約者になったと聞いてな。ウトッレ、紹介してくれないのか?」


「……はい兄さま、こちらがサワクーロ公爵令嬢です」


「王太子殿下におかれましてはご機嫌麗しく……」


 といったかんじで、何故かそれからというもの王城で第二王子と会う際には必ず王太子が同行するようになった。やがてそれを知った兄も参加し、そのうちにシーアンを猫可愛がりしている従兄まで加わって混沌としてきた。だから、従兄はともかくオマエラ学園はどうしたんだ。

 とはいえそれから第二王子からの嫌味というか暴言はなりをひそめた。時折きつく睨まれることはあるがそれぐらいなんてことはない。

 王太子と兄が学園を卒業した後もその集まりは続き、時には勉強をみてもらったり、礼儀作法の上達をはかったりした。そして13歳になる頃には化粧も解禁になり、侍女たちによって魔法のような化粧をほどこされた私の顔は母似の美少女となった。

 あれ? もしかして乙女ゲームのシーアンの顔って化粧補正だったとか……?

 冷汗をかいたが従兄の顔は依然美しいままである。そして第二王子は魔法がかかったような私の顔にしばし見惚れていたが、


「は、母上のように化けているんだな!」


 とあほなことを言ったおかげで、私たちが帰宅した後王妃から思いっきり折檻されたらしいというのは余談である。15歳になっても失言が多いことは変わらないらしい。暴言王子ではなく失言王子と改名した方がいいのだろうかと一瞬悩んでしまったほどである。

 一番解せないのが王太子の反応で、第二王子と共に会うことになってからどうも彼から観察されているらしいということにある時気付いた。ふと視線に気づいて顔を上げれば王太子が自分を見ているのである。心臓に悪いので頼むからやめてほしい。


「あの……」


「何?」


「何を見てらっしゃるんですか?」


「シーアを見てるよ。面白いから」


 そう言って屈託なく王太子は笑う。いつの頃からか彼の目もまた笑うようになった。


「失礼ですね」


「失礼なのはお前だ! 兄さまになんてことを言うんだ!」


 第二王子よ、貴様もブラコンか。

 私は不適に笑う。悪いが私の兄の方が何倍も美しいし、妹思いだ。


「な、何を笑う!?」


「断りもなく淑女を凝視するなんて失礼以外のなにものでもないでしょう?」


「では断ればいいんだな。シーア、君を見つめさせてくれ」


「そういう問題じゃないでしょう!?」


「レイン貴様!!」


「シーア、私にも君を見つめる許可を!」


「ジン、どさくさに紛れてシーアの手を握るなあああっ!!」


「ああもううるさあああああい!!!」


 こんな混沌としたやり取りをしている間に第二王子と従兄は学園に通い始め、準備不足は否めないが私もまた学園に通う歳になった。

 さぁゲームの始まりだ。

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