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4.情報を求めてみました

「えー? 婚約披露で隠しキャラがー? いいなー」


「よくないわよ! だいたいなんで私の前に現れるのよ!? あんなの出るにしたって貴女のところへ行くものでしょう!?」


「なんかその言い方だと幽霊みたい。でも銀髪にオッドアイかー、見てみたいなー」


 夏休みである。昨日の婚約披露パーティーには当然のことながらヒロインは招待されていない。男爵令嬢だから。昨日みたいな場だと男爵令息(次期男爵に限る)までは招待された男爵にくっついて行くのは問題ないが令嬢はアウトである。一応王城でも年に2回ほど婚活目的の舞踏会は開かれるのでそちらに出席するのは自由である。(ただし16歳以上に限る)


「実際に見てどうだった?」


「西洋系の顔だから様にはなってたけど……二度と会いたくはないわね」


「えーもったいない。紹介してもらおうかと思ってたのに」


「ロオヒョさまのお兄さんみたいだからおねだりすれば会わせてくださるんじゃない?」


「ええー。もうロオヒョさまと接点ないじゃん」


 ロオヒョというのは攻略対象の一人である宰相の息子のことである。ヒロインもある程度までは好感度を上げたようだが相手の卒業後に連絡を取り合うほどではない。それもそうか、と納得したがこれ以上厄介ごとを引き受けたくないので絶対に会いたくない。

 そういえば延々人の寮の部屋を花で埋め尽くしてくれた従兄がどうしたのかといえば。「王太子と婚約することになりまして」と伝えると「そっか」と何か納得したような顔して、翌朝からは来なくなった。だが花だけは毎日届けられ続けている。何故だ。(夏休み中は屋敷に届いている)


「見たいー見たいー見たいー、むぐぐ……」


 だだっこのように騒ぐヒロインの口には、うるさいのでクッキーを詰め込んでやることにした。


 正直隠しキャラその2の情報があまりないことが不安だ。とりあえず今日一日かけてヒロインを締め上げ吐かせるつもりである。

 そういえば夏休み直前に行われた期末テストで見事ヒロインは学年二位に返り咲いた。総合の点数が僅差でかなりひやひやしたのはないしょである。(一位は私だ) そんなわけで約束通り2学期には隠しキャラその1の隣国の王子にヒロインを紹介することになった。あくまで友人としてだが。

 一応十位以内に入ったことで早ければ3学期にはAクラスに戻ってくる見込みらしい。その時隣国の王子とヒロインの関係がどうなっているかはわからないが、せめて友人ぐらいにはなっていてもいいのではないかと思う。ヒロインには伝えていないが貴族には養子縁組の制度がある。いろいろな形式はあるが、主に身分の低い者を高い者に嫁がせる為などに用いられてきた。(他にも用途があるがそれはこの話には関係ないので割愛する)つまりヒロインが万が一隣国の王子に見初められ、王子が正妃にしたいと思えば結婚できないことはないのである。だが第二王子はヒロインを妾にしようとした。それが全てである。


 さて、気になる隠しキャラその2、宰相の長男であり魔術師団第二の副団長であるシクカの件に戻そう。

 この国には少なからず魔術、というものを扱える人が存在する。残念ながら私にはその素養がないので詳細はわからないが、魔術を使える者は国に登録し、16歳以上で魔術師団に入ることができるらしい。魔術師団は2つに分かれており、1つは研究や教育を行う第一、もう1つが攻撃魔法や治癒魔法など軍部と連携している第二である。くだんの魔術師はその第二の副団長、しかも宰相の長男といったら次期ショウサイ公爵ではないか。ただの気まぐれならばいいのだが、もし昨日のあれがゲームのシチュエーションというならばこれから嫌でも絡んでくるに違いない。ヒロインじゃないのに。


「それで? くだんの魔術師に関して何か情報はありませんこと?」


 大好物だというシフォンケーキを目の前にかざして聞けば、「ケーキ……」と切ない声を出してヒロインは目をうるうるさせた。その無駄な媚は隣国の王子にでも向けてやれ。


「んー、私はプレイしてないから掲示板情報とかになっちゃうけど」


 そう前置きしてヒロインは覚えている限りの魔術師情報を出した。

 曰く、魔術師はたまたま学園に来た際ヒロインを見掛け、気になっていた。第二王子とヒロインが婚約することになり王城に行儀見習いにくるヒロインを度々見掛け、婚約披露パーティーが近づくにつれヒロインの顔が曇っていくことに胸を痛めていた。そして第二王子とヒロインの婚約披露パーティーの時に機会を見つけて声をかける。美形の魔術師に口説かれて揺れるヒロイン。魔術師は王太子の友人で、第二王子に気兼ねする必要はないという。最終的にどちらを選ぶかはヒロインに決定権があるらしいが、魔術師からはこれでもかと甘く口説かれるのだとか。それにしてもゲーム内のヒロインよ、気が多すぎやしないか。


「でもシーアンの前に現れたのよね? そしたら設定が変わってきちゃうんじゃない?」


「まぁゲームに似てる世界だからあくまで参考程度にね。助かったわ」


 そう言ってケーキ皿を今度こそヒロインの前に置いてあげた。


「んー! ふわふわー! もっと欲しいー!」


「太るわよ」


「ううう……今日だけ! 今日だけだから!!」


 これでもかと甘い物を食べて幸せそうなヒロインを眺めながら私はこれからのことに考えを巡らした。

 王太子の友人、ということは兄も知っているかもしれない。なんだかとんでもない厄介ごとの匂いがする。

 そしてその予感は、翌日王城へ顔を出したことで的中する。


「やぁ、また会ったね」


 壁に寄りかかり麗しい(かんばせ)に微笑みを浮かべている魔術師を見て、私はげんなりした。

 美形怖い。

掲示板:《「電子掲示板システム」の略》インターネット上に提供されている、さまざまな話題について自由に意見を書きこめるページや仕組み。BBS。

デジタル大辞泉より。

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