閑話 リゲル視点
疲れた顔で帰ってきた私のお嬢様がやたら無防備な格好で部屋の中を行ったり来たりとしているので私は気が気でありません。
もし今、誰かが尋ねてきたら確実に不味いことになる、そんな格好をお嬢様はしております。
しばらくすると動き回るのに疲れたのかダランとだらしなくソファーに寝転がりました……
いくら、だらしが無いからと注意しても聞かないので注意するのを諦めました。
「……ねぇ、リゲル。
好感度って見えないのかしら?」
好感度?そんなもの見えてどうするのでしょう。
そう言ったものが見えるとも言われる魔法使いはいるにはいます。
ですが、とても貴重なのでそう言った人たちは早め早めに貴族たちが囲い込んでしまうので学園にすら来ていない事も多くまだ子供であるお嬢様が目にする事はまず有り得ません。
「見えますよ。一部の方のみですが。」
正直に答えます。彼女が真実を知り落胆するのを分かっていても。
「本当!?この学園にはいるかしら!?」
15歳……もうすぐ16歳の少女とは思えないほど大人びた身体と精神をしているお嬢様ですが、時折見せる年相応の仕草がなんとも愛らしいです。
そのキラキラとした年相応の表情が落胆の色を浮かべ、年不相応のやたら大人びた顔つきに戻る事を分かりながら事実を告げるのは少し、胸が苦しいですが、嘘をつくのはもっと胸が苦しくなります。
「いえ、いらっしゃいません。」
「あら……そうなのね。残念だわ。」
すっとお嬢様の顔から喜びの色が消えてしまったのが分かります。それから取り繕った様な澄ました笑みを浮かべました。
自分で彼女の顔を喜びの色に染めて差し上げる事が出来ないことが心苦しいです……
彼女との出会いは私が六つお嬢様がお生まれになった時です。
それから彼女は真っ当な……(この場合普通の貴族の様な傲慢で自堕落な性格)の少女に育ちましたが、彼女はとある日を境に変わりました。
それまで真っ当な貴族だった彼女が使用人にまともに返事をする様になり、使用人の仕事をやりたがったり、使用人の仕事を手伝う様になりました。御家族と交流される様にもなり人に囲まれる様になりました。
いくら、傲慢でも見た目は良かったお嬢様が性格が良くなったのです……彼女に恋する少年や使用人すら出来てきました。斯く言う私もその1人です。
彼女が色々な方に好かれるようになり囲まれて帰ってきた日はとても疲れた顔をされています。始めは義務感から彼女の好きなお茶やお菓子を用意し、彼女の好きなお湯を張って差し上げておりました。
ある日お嬢様が私のしている事に気がついたのかお茶を飲んだあとホットした顔で『ありがとうリゲル。』と仰って微笑まれました。
使用人を叱りこそすれお礼を述べるなどすることの無かったお嬢様がホットした顔を私に見せた。信頼されている気がして嬉しく、そして……その表情が愛おしく思いお嬢様の喜ぶ顔をもっと見たいと思いました。それからです。お嬢様が喜ぶ度にその顔に惹かれその顔を見る度にお嬢様を思う様になったのは……
あけましておめでとうございます。
久々の更新がこんな物で良いのかと思いつつ……
執事さんを主役にしたお話を少しは書きたくて書いてしまいました。
今年も宜しくお願いします(ㅅ´ ˘ `)