呪術師を攻略しちゃったみたいです。
「どわぁああ?大丈夫ですか!?」
おとめらしからぬ声が出てしまったが気にしない……
呪術師も申し訳なさそうに魔道士を見ている。
「わ……悪い。」
咄嗟に避けたら魔道士の彼にクリーンヒットしてしまったので魔術で癒す。
癒すと言っても呪術にかかってしまったと言う異常状態をちょっといじって呪術にかかってしまったけど何も無かったと言う状態に弄るくらいしか出来ない。忘れてただろうけど私の魔法は異常操作だ。
「ううぅん……アルデ呪術は気をつけて放てと言われてるだろう……あぁ、嫌な夢を見たよ!」
魔道士は彼の呪術に慣れているのだろうか?案外なんとも無さそうで安心する。
いや?慣れてたら慣れてるでまた心配だけど……
「気を付けた。タイミングも気配もバッチリだった。普通人がよけれる様なスピードじゃ無かった!」
「……えっと……あーえっ?」
なんと、呪術師に呪術をかけられそうになっていたらしい。
ひゃあ怖いわ。
「呪術を、見ても怖くは無いみたいだね。名乗り遅れてゴメンね。
僕はレグルス・フォン・レオンで、こっちが「アルデ」ははっは……アルデバラン・フォン・トーラスだよ。」
「私はスピカ・フォン・ヴァーゴです。」
アルデバランがアルデと言う愛称で名乗ってくれたという事は好感度はかなり高いって事かな?
「……申し訳ございませんでした!!」
レグルスが土下座をしそうな勢いで頭を下げた。
「何がですか?私は「口調も、態度も行動も全てです!」いえ、仲良くしてくれようとしてるみたいで嬉しかったんですよ?」
その事は本当だ。数少ない魔法を専攻する学友なのだ。仲良くなれて嬉しくないわけない。ヒロインに関わることになりそうだけど王子と比べれば彼らのお別れフラグなんてメじゃない。
「僕はスピカは好ましく思ってる」
「アルデが初対面でこんな事を言うなんて初めてです。」
ううん?やばい、ヒロインの立場でお別れフラグ立った……
わーい、フラグが立った!フラグが立った!わーいわーい。
「スピカ!!」
王子が焦った様に部屋に入ってきた。いくら、王子と言えどノックも無しに部屋に入るのはどうかと思うがそれほど焦るような事があったのだろう……
でも、私はあえてのんびりとした口調で問いかけた。
「あら王子。スピーチ素晴らしかったですわ」
「前半は瞬き48回欠伸87回後半は隣のヤツとずっと話していた上に途中で隣のやつに連れられて退場。」
…………
サッと血の気が引いた……
そうだ、ここにもヤンデレが居たのだ……
「あら、王子お久しぶりですね!!なかなかお会いできなくて寂しかったですわ。」
……どうしよう。怖い。スピーチの話題を避けたくて思わず話題を変えてしまったけど王子には最近会ったばっかりだ。
「1日と15時間前に会ったばっかりですよ?」
レグルスとアルデバランも真っ青だよ?
あれ?アルデバランはそうでもないみたい……
「それで、どこが素晴らしかったのか教えて頂けませんか?」
王子の私を見つめる目が怖くて後ずさる。王子もそれに気がついているのか、少しづつだが、距離を詰めてくる。だめだ、うん、怖い……影縫い?でも、王子に魔法をかけるだなんて不敬罪にも程がある……逃げ道はない。
「えーあーそう!王子のお声がそれはそれは素晴らしかったですわ。」
しどろもどろになりながら答える。冷や汗が背筋を流れたが気にしている暇はない……
レグルスが焦った様に王子を呼んだが王子には聞こえていない様だ。
「でっ……殿下!?「スピカ怖がってる」アルデ!?」
「顔色が悪い、異常に心拍数も早いみたい、指先が震えてる、目、あわせようとしない」
アルデバランが私たちの間に割り込んで来た。少しビックリしたけど何故か、安心した。私は黙ってアルデバランの背中を見つめた。
「アルデ黙って!!殿下申し訳ございません……彼は、まともに教育を受けさせてもらえず世間を知らないのでございます!!」
焦った様にレグルスが王子に弁解する。きっとレグルスは小さな時からそうしているのだろう。仲が良いのはいい事だと思う。
「僕は悪くない。おいでスピカ」
えっ!?急にアルデバランが私の手を引いて……移動魔法!?
呪術だけじゃなくて魔法も使えるの?
「すぐに逃げれるようにこれだけ練習した。」
練習は楽な事じゃ無かったと思う。移動魔法だなんて使える人は本当に少ない。
彼はヤンデレだけど不思議と王子より怖くなくて余計な事をペラペラと喋ってしまいそうになるが一番聞きたかった問だけを口にした。
「どうして私を連れ出してくれたのですか?」
「スピカ怖がってた。違う?」
いや、全然違わない。舞台の上から私がいた場所まで約15メートル大した距離ではないけどスピーチをしながら一挙一動全てを見れる距離ではない。だから、自分でさえ知らないようなことを知られそうで怖いと思った。
「なら良かった。」
かれの微笑みにドキリとした。それと同時に考えを読まれていた事に気がついてビックリする。声にならない声が出てしまうのも仕方ない事だろう。
「!?!?」
「ビックリした?勝手に感情が流れ込んでくるの。意図はして無い。」
ならいい……じゃあわざわざ話す必要無いかな……
「スピカの声……聞かせて?」
少し屈んで私の目を真っ直ぐ見つめ困った様に微笑んだ。
ドキドキと高鳴る鼓動を悟られないに気をつけながら彼を見つめる。
「そんな顔……反則です……アルデバラン様…「アルデでいい。」その、私のことを好意的に思って頂けてるのは嬉しいのですが……王子がアレなので……あまり近づかれると怖いです……」
そうなのだ、どんどんアルデが近づいて来てるのだ……最初は指先が触れるくらいの距離だったにも関わらず今では肩がピッタリとくっついている。
「ゴメンね。諦めない……」
だから、どうしてヒロインのポジションを傍から奪って行くんですか!!
呪術師が可愛くて仕方ないんです。
王子みたいな対象にヤンデレなタイプも好きですが、無口で対象に寄り添いつつ外堀を埋めていくタイプのヤンデレの方が好きなんです。
お前の好みなんか知らねぇよとか酷いこと言わないでくださいね?
ヤンデレ好きなんですよ。