お茶会にお呼ばれされたみたいです。
「アウリガ公爵夫人様!!お久しぶですわ!」
「そんなに他人行儀な呼び方をしないで頂戴。私と貴女の仲でしょう?どうぞ、アトリアと。」
薄い白金色に淡い桃色の瞳。
どうやったらこの人から黒い髪に黄色い瞳のカペラが生まれてくるのか分からない。
どうやら先祖返りらしい。父方の祖父が黒い髪に黄色い瞳をしていたらしい。
その爺様はとても優れた領主として有名になっていたので私も知っている。そんな祖父に似たためかカペラに大きな期待がかかっているのももちろん知っている。
もちろん、カペラはそれに答えようと一生懸命頑張っているし、周りもカペラが出来ないと答えたことはやらせない。でも、期待をしてしまうのは人間の性だろう。
「お加減はいかがでしょうか?今回はお呼び頂き光栄ですわ。」
そんなに寝込む程調子が悪そうには見えない。
顔色も悪くは無いし、手もふっくらと血色がよくむしろ、カペラの弟を生む前よりも元気そうに見える。
「それが、とても元気なのよ。でもあの人が布団から出してくれないのよ。少し調子を崩しただけで大袈裟だわ!!」
実際彼女は公爵家よりいくつも身分が下の男爵家の出だ。
それも、男爵家の中でも貧しい家の出でそれこそ風邪を引いても医者にかかれない様な家だったらしい。お前も乙女ゲームのヒロインかっ!ってツッコミたくなるくらい玉の輿だ。実際アウリガ公爵とアトリア様は恋愛結婚だけど!!祖母に反対された公爵が家を捨てようとするぐらい本気だったとカペラに聞いた時にはそんな素敵な恋がしたいものだと思ったけど……調子を崩しただけでベッドに縛り付けるなんてどれだけ過保護なんだ……
「お元気そうで何よりですわ……」
正直元気そうで来た意味が無いようにも思える。
でも、本当に元気そうで良かった……
「スピカさん、いらっしゃって!スピカさんのために仕立てたドレスが有りますの!ぜひ着てお茶会に参加して欲しいですわ!スピカさんは、うちの愚息が嫁に貰うのですもの。遠慮は必 要無いわ!」
いやいやいや!?遠慮するし、カペラに嫁ぐ予定も無いよ?
「そんな……申し訳ないですわ。」
思わず下を向いた。
小さい時から何度も仕立てて貰っている。その恩を私は返すことが出来ないかも知れない。それなのにカペラを含むアウリガ公爵家の人は私に底なしの優しさをくれるから時々泣きたくなる。彼等は私の友人などではなく父様の友人だ。友人の娘にまで、優しくする意味も無いのに甘やかして優しげな雰囲気包み込んでくれる。
泣きそうな顔をしていると自分でも分かった。
顔を上げるとアトリア様は緩く微笑んでいた。
「私が作ったものなの。でも、スピカさんに着てもらえないならこれはもう捨てるしかありませんね……」
えぇ!?
手作りのものだなんてそれこそ娘や息子にあげるべきものだ。
間違っても友人の娘にやるものでもない。
「お母様が夜も眠らずなにやら一生懸命何かをしていると思ったらそんな事をしていたのですか?」
夜も眠らずに何をやってるんだってツッコミを入れるべきなんだろうけど声が出ない。黙ってカペラとアトリア様を交互に見ることしかできない。
もし、母親がいたらドレスを作ってもらいたかった。もちろん、口に出した事はない。母親が居ないのは父様のせいでもないし、誰のせいでもない。そんなことは分かっていたけど母親が欲しかった。それこそアトリア様が母親だったら良かったと思う位には母親が欲しい。
「だって、スピカさんがいらっしゃるのが楽しみだったもの。可愛らしいスピカさんを着飾らせることを楽しみに生きているのよ?それに、娘が居ないもの。」
私が母親が欲しいと思うのと同時にアトリア様は娘が欲しいかったのだろうか?
母親も娘も簡単に手に入るわけがない。それでも、欲しいと願うのは悪い事じゃないと思う。段々とアトリア様が可哀想になってきた。
「そんな事を楽しみに生きてるだなんてスピカ嬢に迷惑がかかります!!」
……そう言えばカペラって母親の前では関西弁じゃないんだねって思った?
私も思って聞いたこと有るんだけど、どうやらアトリア様に泣かれたらしい。それ以来母親の前では普通に喋っているらしい。つくづく親思いのいい子だなって思うよ。
「では、カペラが着てくれるのですか?」
いくら親思いのいい子でもカペラは男の子だ。ドレスは着ないだろう……
「いやや!スピカ嬢申しわけございません、助けられそうにありません……会場にてお待ちしております……」
……うん、何となく分かってたけどやっぱり実際着るとなると恥ずかしいかも。
新キャラお幼なじみのお母様が現れた!!
12/19
加筆修正しました。