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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

沈みゆく山脈

作者: 泉 末広

水没した山脈の頂上をふらふら歩き、僕は鋼の城を目指す。

目にも突き刺さるような、青い深みを持つ透明が輝き広がっている。

青く透き通る水面下、命の保証が吸い込まれる。

美しくすぎる水面は、諦観の滝になり、轟音たてて落下する。

鉄壁の島は存在する。博愛者が占領する安全地帯。

見ず知らずの博愛者が、卑猥に曲がった杖を投げつける。

偽りの慈愛が、いつも未来を無駄にする。

裸足を選んだ僕は、鋭利な岩肌で踵の肉を削ぎ落とす。

清廉な青に、僕の痛みの水脈は、ゆらゆら流れて枯渇する。

義務を終えたクルマが、凝縮された絶望を形成する。

苦痛に囚われた身体なら、堕落の慣性に任せておけ。

握り締めた杖に群がる単細胞の生存願望。

透き通る水面は、希望と絶縁した黒い谷を見せつける。

腐乱した顔のない四足歩行者が、僕の足元を漂流する。

せせらぎから加速する、生命の奔流の到達点。

澄み切った空気に微粒な水が混ざりあい、着こなされた白装束を濡らしていく。

血の気を失った僕の足は、まだ山の頂を踏みしめている。

錆びた鉄と生命の残骸が折り重なる山脈。見落とされた未来からの遺跡。

屋上の四方から滝のように水を落とす巨大なビル。

乱反射する光が、崩れそうな外壁を壮大なフレスコ画に塗り替える。

廃墟と化した窓際で、絵画の裸婦が手招きする。

滑り落ちそうなバランスで、僕は無駄な性欲を抱き締める。

この美しすぎる世界で、僕は鋼の城を目指す。

芸術を纏う裸婦画に見送られ、水没した山脈の頂上を歩く。

僕は、死と生と涙を匿う鋼の城を目指す。

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