エリス革命
数ヶ月が過ぎた。
民衆は口々に意見を言うが、それぞれの意見の違いから対立することもあった。
以前のエリスは、全ての民衆の意見を受け入れようとして、破滅した。
前回はまだ3年も民衆が動かないような状態だったが、現実ならそうはいかない。
全ての人が同じ意見になることなどは無いのだ。民衆の全ての意見を受け入れようとするエリスの統治は、3年と言わず、3日で破滅していただろう。
だが、それをすると、また恐るべき独裁体制の時代が来る。
執務室の机に涙が落ちる。
「無理だ。また私は何もできない……」
マリアは、それをそばで聞いていた。
「エリス様。 大丈夫ですか?」
「ええ、ごめんなさい。ねえ、マリア。どうすればこの国の民衆は幸せになれるの?」
「エリス様……。私はこんな話を聞いたことがあります」
「何?」
「1人の人間に変化が起こることで多くの人が変わるというものです。エリス様が変えようとしている、その1人というのは、得体の知れないものです……」
「マリア……この世界は夢のようなもの。やってみるわ」
「私が胸を押さえて死んだ時、その悔しさはエリス様と共にありました。この国を変えましょう。アイラ様とも一緒に」
「えっ!? マリアは覚えているの?」
「私はそういう人間なだけですよ。エリス様、分かりますよね。私はいつもあなたと一緒にいたのです」
「そうね。マリアは最初から仲間だったのに、その後一度も姿を見ていなかった。ふふふ。いつも一緒にいたんだね」
「この国が日本という国の政権交代実現の立役者を表現するために創られたなんて、悲しすぎます。この国の民衆はそれに創造した当人の世界の民衆はそう愚かではないと思います。私は信じたいのです。この世界は必ず変わると。エリス様、人々は真実を求めています。本当に幸せにしたいなら、ただ政治が変わるだけではいけません。根底から変わらなければならないと思うのです」
「そうね。それを誰から聞けばいいのかしら」
「それは、民衆を信じるエリス様自身から発現されるものではないでしょうか? もしあの時のように信じた民衆から非難されたとしても、私たちの思いを変えなければ大丈夫です」
「自由体制を強化するために、法制度を整えましょう。今は、独裁体制によって押さえられた不満は雪崩のように出てきているだけだわ。それが諦めと冷笑を生み出して出なくなるほうが怖い。今はたくさんの意見を書き残しましょう。全てを受け入れて実現はできないけど、書き残して考えることはできるから」
エリスの思いはすぐに実現された。
民衆が期待していたのは、自分たちの生活の向上であった。しかし、それ以上に互いの自由が認められる生活に安堵を覚えた。
エリス革命の一つの目標は達成された。
民衆の中にはかつての独裁者もいることを忘れてはならない。
アイラはガトルーの側にあって、自由を利用する独裁者がいることも知り、それをエリスに伝えた。