エリス視点
私は歴史書をめくった。
メモを取る。
-------メモの内容-------
少し手が震えている。
この世界が作られたものであることは分かった。
この歴史書も用意されたものなのだ。
創造主の歴史に対する思い込みの中の夢を見ている少女の歴史観なのかもしれない。たとえそうだとしても、歴史を学ぶ価値は落ちないだろう。
この世界に歴史書が生まれたのは約5000年〜6000年前。様々な地域で農業の発展に力を尽くして、その農村指導者の多岐にわたる生産活動が活発に行われ始めたところから始まった。
それからは、生産物の支配権を有する王によって国が支配された。
その王政は、王家の変化はあるが、約4500年続いた。約550年前に革命が起きる。
その次に民主主義が始まった。それも100年間続いた。
だが、民衆の生活の苦しみは無くなることが無かった。
民主主義の社会体制が秩序の維持能力を失っていく中で、王政のような支配体制の独裁政権というのが誕生した。
ここからは現代史になるが、20年前に最高指導者はガトルーという人間に変わった。そして歴史書にも載っていないのが、ガトルーの支配体制を崩した私だ。
永遠に安全で平和な民主政を実現するには、何年かかるだろうか?
創造主が考えた女の子の夢の中は、民衆をよく見ていたとは言えない。
創造主が同じ人間であるならば、それは仕方ない。それにここから始まる物語の民衆に対する考え方も向こうの世界ではたくさんあるだろう。
私の祈りは、まず創造主の生きている世界が平和で安全で幸せな世界になることだ。
それに創造主が、私自身の生きている世界を平和で安全で幸せな世界に書くかどうかに関わらず、必ずこの私たちの世界の人々の平和と安全と幸せを実現してみせる。
こうして人生が動き始めたのだ。
私は必ず叶えてみせる。
南暦1750年 5月3日
エリス
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私は私を信じている。
全ての命を信じている。
歴史書を振り返った私は、ガトルーの孫娘アイラに話しかけに行く。
アイラは、10歳くらいの女の子でガトルーが可愛がっている。
私がアイラを知ったのはテレパシーのようなものが使えたからだった。
執務室で行う。
「こんにちは。今どんな状況?」
「もうすぐ学校だよ」
「学校は楽しい?」
「楽しくない。何のために勉強してるか分からないもの。役に立つとは思えないし」
「そう……」
「この夢の世界を見ていた時からそうだった。学校の授業は面白くない」
学年が上がれば上がるほど、良くない状況になる。
まるで沼にはまっていくようなものだ。
本当は大事なことなのに、教わる側の自分にはそれが分からない。
それが分からなくて、どんどんと闇の中で目が見えなくなっていくような教育。そして支配体制に組み込まれると、もう抜け出すことが難しくなってしまう。
今ここから変えることはできるのかしら。