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新たなる探偵

「ふう」

魔法界での修行を終えて、一人の魔術師が欅空港に降り立った。その魔術師は、銀色の髪に、碧眼の、明らかに日本人では無かった。その名を、反転の魔術師、ギース・ペンバーという。

「下らぬな。否定の魔術師、別名外道とも表された、魔法探偵魔魅が、術式一つ組めぬ、たかが無学な人間どもに、殺されたなとはな。哀れな蛆虫め。このギースが、本当の魔法というものを見せてやろう」

ギースはニヤリと不敵に微笑むと、フワッと地に付いた足を浮かせて、ある場所へと向かった。そこは、遥か雲の向こうに存在する、水晶の壁でできた、この世ならざる城である。その名を、クリスタルパレスという。


「開けろ、俺だ」

ギースはクリスタルの城門を手で叩いて、開けるように促した。すると、中から、傲慢そうな男の声が聞こえて来た。

「ふん、その声はギースだな。何の面目あって、ここへ来たのだ」

「貴様のような蛆虫に語る口は持たぬ。このギースが、口で説明してやっているのだ。何故、ありがたく思わぬのだ。それとも、ここをぶち壊した方が早いか」

「うう、ま、待て。用件を言えば、開けぬことも無い」

「貴様の是非など聞いていない。俺が開けろと言ったのだ。犬畜生と契約を交わす人間がいるものか、さっさと開けろ。同じ事を言わせるな。次は魔法の弾丸にて返答するぞ」


最早、話せる相手で無いことぐらい理解している。ギースがその気になれば、この城を滅することも、赤子の手を捻るよりも容易いのだ。だからこそ、彼は城門を通された。そして、女王の間へと単身で乗り込むと、彼を見て、怯える天使達を横目に、城の主である、奇跡の魔術師・マリア・クレセルと対峙した。


「ギース、あなたは何故、ここに?」

「マリア、俺が来たからには分かっているはずだ。俺は、どんな物語をも引っくり返す、反転の魔術師だ。俺はこの物語に異議があって来たのだ」

「その異議とは?」

「それは、極東の島国で起こった、ある事件の結末だ。この物語は酷かった。結局、物語を紐解こうとした、刑事の男と、否定の魔術師、魔魅は、黒き服を纏った男達の姿を目撃したまま、失踪してしまった。これは、小説だったら、打ち切りじゃないのか?」

ギースの文句は、マリアにも理解できた。彼女とて腑に落ちないのだ。二人は何故消えたのか。そもそも生きているのか、分からないことばかりだった。


「正直言って、俺はこの事件の結末なぞ、どうでも良い。どうせ、悪趣味な魔術師が作り出した幻想だろう。だが、気に喰わんのは、魔法が妄想であると結論付けられたことだ」

魔法は実在している。にも関わらず、科学を盲信する無学な奴らのせいで、魔法は無いと結論が出された。故に、最早、誰も魔法の存在を妄想であると、疑わないだろう。ギースの言い分は大体このようなものであった。


「あなたは、何がしたいのですか?」

「簡単なことだ。今から、魔法裁判所を開廷させてもらいたい。そこで、真犯人と推理で勝負するのだ」

「な、何故、そのようなことを、それに、真犯人をあなたは知っているのですか?」

「俺は知らない、故に、真犯人の姿は分からないが、この世界の何処かにいる、いや、かつていた、真犯人を召喚する。知っているだろう。俺の魔法は、ネクロマンシー。つまり、死者の蘇生だ。どうやら、既に真犯人は他界しているらしい。だから、俺の能力でそいつを呼び出せる。最も、姿は見たことか無いからな、魂しか呼べないが」


魔法裁判所とは、かつて、魔術師と科学者が、魔法は実在するのか、否かで、推理対決を行った場所であり、現在は罪を犯した魔術師を裁く、神聖にして犯すべからずの空間となっている。


「宜しい。場所の提供なら、いくらでもします。さあ、思う存分やりなさい」

「くく、そうか、ならば早速・・・・」

マリアは意外にも、あっさりと承諾した。百万以上の数に及ぶ、宝具を要求されたと思えば、安い話である。


ギースは法廷に到着すると、床に右手を突いて、深紅の魔方陣を眼前に出現させた。そして、そこから、真犯人のシルエットらしきものが、姿を表す。


「うう、苦しい。ここは・・・・?」

「くくく、大罪を犯し、練獄にて、一億年の責め苦を受けている最中であったか、まあ許せ。今宵は、貴様にも再び生の息吹を与えてやる。そして、俺の今から言う言葉を、後に続いて、復唱するのだ。行くぞ、魔法は実在する」

ギースの言葉に、苦しげに体を曲げている、シルエットがピタリと動きを止めた。


「魔法は・・・・実在しない。ぷくく、あひゃひゃひゃ」

「き、貴様」

「あたしは後悔などしていない。あひひ、あたしは事件を引き起こして、良かったと思っているよ」

「ほほう、自分が欅町の全ての事件の犯人と認めるのだな?」

「全てではない。くく、この町は呪われているからね、あたしだけじゃ、全ての惨劇は引き起こせない」

「ふん、俺の目的は、犯人を突き止めることでは無い。魔法を認めさせることだ。さあ、始めるぞ。魔法裁判の開廷だ」

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