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魔法探偵の推理ゲームその4

魔魅は櫻の顔を横目で睨み付けていた。体育館での四人殺しのみに限れば、櫻こそが、一番の重要参考人なのだから。しかし、彼女は安易に、櫻を追い詰めたりはしない。外堀から固めるように、推理を展開していくのだ。


「私は、体育館にいた人間を限定したりはしません。もしかしたら、100人はいたのかも知れないし、本当に5人なのかも知れない。しかし、あまりにも現実味が無い話も、バカバカしいので、ここで一つの指針を決めておきます。まず、体育館にいた人間は、棗、楓、公平、櫻、悠の他に、もう一人いた。それをXと呼称することにする。さあ、このXは誰でしょうか?」

「ふん、知らぬな。まさか、檜山家の人間だとでも?」

「欅町では、四年前のある時期に集中して、奇っ怪な事件が多発しています。それも、複数犯でなければ、実現不可能なものばかり。消去法から、檜山組のような、組織を疑うのは当たり前ですわ」


魔魅の推理は次のようなものだった。まず、悠は友人四人を体育館に呼び出した。友人からの連絡であるから、少しぐらい不審に思っても、彼らは従うはずである。動機は不明だが、悠は彼らを殺すつもりだった。四人を呼び出して、一ヶ所に集めた後、予め隠れさせておいた、檜山組の人間Xを連れて来る。Xはショットガンを肩に掛けて、その場で四人の顔面を、身元が分からなくなるぐらいに、射ちまくり粉砕。弾などはその場で回収した。


「まて、異議ありと言わせてもらう。何故、ショットガンなのだ?」

「ほほほ、これは例え話に過ぎませんので、お気になさらず」

「ふん、そうは言っても、死体からは弾痕の類いは検出されたのかな。仮にも警察が絡んでいて、妄想で話をされても困る」

銀治は不愉快そうに眉をしかめた。しかし、魔魅の方は、相変わらずヘラヘラと薄ら笑いを浮かべている。彼女の目的は真実を暴くことでは無い。極端な話をするならば、誰が犯人でも構わないのだ。ただ、自分が犯人を捕まえた。自分が世間に認められれば、それで十分なのだ。故に、彼女は冤罪など気にしない。鬼塚はどうも、この小娘は好きになれないと、彼女と組んだことを後悔した。


「さてと、Xの存在は認めて下さいますか?」

「認めるも何も、その現場にいなかった我々には、何も言えん」

「ふふ、ならば良いでしょう。さてと、さっきから、蚊屋の外にいる櫻さん。この事件の唯一の生き残りであるあなたにも、話してもらいましょうか。あの体育館に、銀治さんはいらっしゃいましたか?」

櫻は突然、話を振られて、ビクッと肩を揺らすと、銀治の顔をチラリと一瞥した。最初から、魔魅の目的に、檜山家の暗部を白日の元に曝すようなことは関係無く、寧ろ、当主を殺されて、犯人を憎んでいるであろう、檜山家の人間の前で、櫻から真実を聞き出すことだったのだ。


檜山家からすれば、次期当主を殺害した人間は、絶対に許さないだろうし、見つけ次第、それなりの処置をするはずである。だから、今、櫻は絶体絶命だった。自分が犯人と認めれば、檜山家に殺される。しかし、鬼塚と魔魅がいるこの時に、真実を話してしまえば、彼女は二人に護られ、檜山家から出ることができる。


「あの体育館には、7人いました」

「7人?」

鬼塚は思わず身を乗り出した。何故、そんな大事なことを今話すのか。

「とすると、そこにいたのは、棗、楓、悠、公平、そしてあなた、それ以外に二人?」

「はい」

「そのXとYは誰です?」

「一人は黒いカッパを着ていて、顔は分かりませんでした。そして、もう一人は、うう、警察の方でした」

「な、そんなバカな」

聞き捨てならないのは、鬼塚の方である。突然、身内を容疑者にされたのだ。それは怒っても許されるレベルの話だろう。


「鬼塚さん落ち着いて。その方は、制服姿だったんですか?」

「いえ、茶色のコートを羽織っていました」

「ふうん、制服でないのに、その人物が警察だと分かったということは、あなたの知り合いですね?」

「え、ええ。一度だけ、校門の辺りで見掛けましたから」

「ま、待て。校門の辺りって、まさか・・・・」

「もう隠しません。そうです、あなたのパートナーだった、藤田刑事です」

「なっ、そんなバカなぁぁぁぁぁぁぁ」


鬼塚は叫んだ。ついさっき、墓参りまでした友を、勝手に犯人にされた。そして同時に、それは彼の生前の名誉すら汚すものだった。


「櫻は、黒いカッパのことを、くろおにと呼んでいました。そして藤田さんについては、マリアと・・・・」

「マリア?」

あまりにも藤田からは不釣り合いなハンドルネームに、鬼塚は不謹慎にも失笑した。しかし、魔魅だけは真剣に耳を傾けている。

「イエスイエス、既に裏は取れていますわ。藤田刑事は、オンラインゲームを趣味とされていました。確か、グランドランサーというMMORPGですね。確か、彼はそこでネカマ、おほん失礼。マリアというハンドルネームで、魔法使い(女)キャラでプレイされております。楓さんも確か、魔法使いでプレイされており、二人は同じギルドであったと。彼女は、辛いことがあると、現実の世界を、そのグランドランサーに置き換えて、逃避される癖があるようですね」

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