表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/48

サマーバケーションその5

流れるプールの後に、幽達は滑り台に向かった。滑り台は、この市民プールの名物のようなもので、当然、彼女らがそれをスルーするわけも無かった。


「な、何かさ。滑り台の下の方に、おっさんがやたらいるんだけど」

「そうかしら。鼻の下を伸ばしたマセガキもいるわ」

滑り台の下は、絶好のポロリポイントでもあったので、男達は、美少女が滑り台の頂上から降りて来ると、水圧で水着が吹き飛ぶという、ラッキースケベイベントを目当てに、ゾロゾロとイナゴのように、滑り台の下に集まって来るのだ。その中には、明らかに、泳ぎに来たのでは無く、コレ目当てに、来たとしか思えない輩もいた。


「な、あのおっさん、双眼鏡なんか持ってるわよ」

「やだぁ、谷間とか見られちゃう」

恥ずかしそうに、両手で胸を隠す仕草をする椿を見て、棗は冷静に言った。

「いや、あんたは大丈夫。谷間どころか、平原だから」

「心配なのは、私と楓、そして棗と幽ちゃんね」

「てか、私以外全員じゃない」

「いや、俺も平気だぞ」

「当たり前でしょ。公平君は男なんだから」


滑り台の頂上という、不安定な場所で喧嘩する女子達。それを下から見上げる男達を、焦燥と苛立ちが支配した。

「おい、早くしろよ」

煩悩丸出しの男が叫んだ。すると、その隣にいた、見るからにオタク風の、小太りの男が、それに触発されて、さらにこう続けた。

「そこの、茶髪の美少女ちゃん。最高に僕好みナリよ。ささ、早くポロリするナリ」

茶髪の美少女。明らかに幽を指して言っている。確かに、幽は、オタクが夢見るような、ギャルゲーのメインヒロインに抜擢されても、おかしくなさそうな、清純な雰囲気を放っている。ゆえに、特にロングヘアーが好きだとか、そういった、性癖やフェチが無い限り、大部分の男は、まず、幽か楓で分かれることになる。例外的に、マゾ気質のある人間は棗に、ロリコンは椿に向かうことが多い。


「ささ、茶髪ちゃん。早く脱ぎ脱ぎするナリ」

「おい」

突然、オタク風の男が、後ろから後頭部を掴まれて、水面に沈められた。

「ぷはぁ、な、何をする」

「何をするじゃねぇだろ。テメー、何、お嬢に上等決めてんだコラァ。テメーみてーな三下がぁ、お嬢に性的な関心を向けることすら罪であると知れ」

そこには、海パン姿の、幽達と同じぐらいの年齢に見える少年が立っていた。しかし、その雰囲気は、とても同じ学生と呼べる身分には見えない。明らかに、ヤンキーだとか、そういったものを超越した存在だった。


「あ、吉村」

幽はそれが誰であるか知っていた。まさか、自分のことが心配で、彼がプールに来たとは、思いも寄らなかった。

「何だよ。お前、今日は休みか?」

「え、あ、ええ」

「ねえねえ、幽ちゃん。あの人、誰よ。むっちゃイケメンじゃん」

棗が瞳をキラキラ輝かせている。まさか、ああいうタイプが好みなのかと、幽は思わず、彼女の好みを糾弾したくなった。


「しかし、堅木相手にやりすぎだぞ。吉村」

「後悔はしてませんぜ。こんな三下、いや、玉ねぎ剣士にお嬢を汚させやしねー」

「おい、玉ねぎ剣士は最後は忍者よりも強くなるんだ。その点は忘れるなよ」

「いやはや、ラスダンで、手裏剣を99個に増やして投げまくるお嬢に言われたくは無いですぜ」

「あ、あれはだな」


吉村と幽の会話に付いて行けない者が多数。その中で、何を思ったのか、公平が突然、手を上げて、話に割り込んで来た。

「あのさ、それって、ひょっとして、◯ドラの話?」

「違げぇぇぇぇよ。どうみても3だろうが。エフ×2の3だろうが」

吉村は吠えると、もう、滑り台の周りで、彼女らのポロリを期待する連中はいなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ