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サマーバケーションその3

「何してんの。あんたら」

棗が眼を細めて呆れていた。見ると、スチャラカ三人組は、いつの間にか、周囲の視線を集めている。

「櫻まで・・・・」

「うう、だってこの娘が」

櫻はほつれた髪を整えながら幽を指差した。すると、棗の表情が強張った。彼女に見覚えがあるからだ。そして、それは決して良い思い出では無かった。


「あんた、どうしてよ。何で」

「ええと、従兄の優が体調不良だから、代わりにあたしが・・・・」

「冗談じゃないわよ。あんた、優はどこよ」

「ちょっと、棗ちゃん落ち着いて」

椿は棗を止めようとするも、興奮した彼女は、椿の小さな身体を降り下ろすと、野犬のように、ガルルルと吠えながら、幽を威嚇していた。


「あの、私、松嶋楓です。よろしくね」

棗を無視して、楓は幽と握手をしていた。ちゃっかり仲良くなっていた。

「あたしは幽です。あの、おっぱい大きいですね」

楓は背が低い。しかし胸は大きいので、身長の分が全て、胸の方に取られていると、よく、棗にからかわれていた。最も、楓からすれば、大きすぎる胸はコンプレックスでしか無く、目立ちたく無いというのに、嫌でも、異性、さらに同性の視線すら集めてしまうのは、迷惑としか言いようが無かった。


「こんな胸、重くて邪魔なだけよ」

「いえいえ、あたし、凄いと思います」

幽は楓の胸をうっとりと見つめると、両手でそれを持ち上げた。

「ちょ、あん」

「んん、温かい」

幽はそのまま、楓の胸に顔を埋めていた。人懐っこいとか、そんなレベルを超えて、危険なものを、棗達は感じていた。

「あのさ、お二人とも、禁断の世界に旅立とうとしてない?」

「ううん、そんなこと無いの。だけど、こうしてると落ち着くの」

楓は幽を抱き締めていた。こんな場所で、さらに注目を集めるようなことをして、何がしたいのか、棗は呆れていた。ただ、公平だけは顔を赤らめて、身を乗り出していた。


その後、皆で更衣室に向かった。公平だけは男子更衣室に、それ以外は当然、女子更衣室に向かった。思えば、このメンバーで男性は公平だけである。何故だか、彼を中心にハーレムが完成していた。


「あたしは認めないからね。あんたじゃあ、優の代わりは務まらない」

「優がどうだって言うんです。彼はただ、静かにしてるだけでしょ?」

「あんたねぇ、ただいるだけで、癒されるのよ。ほら、一家に一台よ」

棗と幽はビリビリと互いに、火花を散らしていた。よほど、相性が悪いらしく、困惑ムードから一転、幽と仲良くなろうと、櫻や楓がシフトし始めたのに対して、棗と椿はまだ、彼女を仲間に入れようとはしなかった。椿の意向は不明だが、少なくとも、棗は彼女に敵意を抱いていた。


「あっ、楓ちゃん。そのビキニに凄く似合ってます」

幽は楓の着ている水色のビキニを着けていた。当然、彼女の豊満な肉体に、そのビキニは相性ばっちりだった。そして、楓はピンクのハイレグ風水着、椿は紺色のスクール水着、櫻は黒い、少しアダルトなビキニを着けていた。


「うう、幽ちゃんも似合ってるよ」

「そ、そんなこと無いです。ほら、このおっぱいには勝てません」

幽はまたも、楓の胸を掴むと、自分の顔に引き寄せていた。まるで、新しい玩具を与えられた子供である。

「ふん、何よ、ベタベタしちゃって」

棗は不愉快そうに鼻を鳴らすと、一足先に更衣室を後にした。すると慌てて、後から櫻が追い掛けて来た。

「ねえ、どうしたの?」

「どうしたもこうしたも無いわよ。何なのよ。あたし達のグループに、あんな余所者入れないで」

「余所者って・・・・」


楓も最初は戸惑った。気心の知れた仲間との休日、彼女とて、優の代わりに幽が来た時は不愉快だった。しかし、彼女にとっては、そんな僅かな不快感よりも、今日という一日を楽しく過ごすことの方が大切だった。それは、この幸せが有限であると知っていたから、そんなことで、楽しい時間を妨害されたく無かった。


「私はね、楽しみたいの。だから、棗が私の楽しい時間を邪魔することが許せない。あの娘は良い人よ。可愛くて、その、もふもふなの。ぬいぐるみみたいで、持ち運びやすいのよ」

「ちょっと、あたし怒って良いわよね。持ち運びやすいって、いつ持ち運んだのよ」

「あなたも試せば良いのよ。もふもふで、良い匂いがするの」

「ああ、あたしの親友が変態になってしまった」

棗はそれ以上、楓を相手にはしなかった。しかし、最後の彼女の言葉だけは無視しなかった。

「ねえ、私の幸せな日々を壊さないでね?」

「分かってるよ。あたしも努力する。あの娘と仲良くする。それで、もふもふするわ」

棗は溜め息を吐いた。少しだけ大人になろうと思ったのだ。


レポート・魔法体系


魔法を行使する者を魔法使いと呼ぶ。そして、魔法使いの数だけ、魔法の流派である。魔法体系が存在している。魔法使いは魔法界という、現実とは別次元の世界に住んでおり、そこで、日夜、魔法の修業を行っている。かつて、魔法使いは現実世界に住んでいたらしいが、中世に広まった、魔女狩りの横行により、大部分の魔法使いは死に絶えた。そして、残った、少数の魔法使いは、魔法界を作り上げ、そこに皆で移転したのだ。


マリア・クレセル 魔法界の長。あらゆる魔法の源流を生み出した、最強の魔法使い。


マミ マリアの弟子であるが、魔法使いでありながら、魔法を否定することを厭わず、真実を追求する魔法探偵。その性質ゆえ、他の魔法使い達からは外道と呼ばれている。魔法によって行われた犯罪を裁く、魔法裁判所を発動する権限を持つ。


サクラ マリアの一番新しい弟子。憎しみを魔力に還る力を持つ。

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