お礼
キングの屋敷の応接室で、ヒルダは仕事についての説明を受けていた。
その説明に際して、ヒルダは3人掛けソファに座ることを要求した。
3人掛けのソファに並んで座ると、ヒルダはキングにぴたりと体を寄せた。
ヒルダはご機嫌であった。
キングの話は、以下のようなものだった。
ヒルダが働く場所は、ハクキン地区である。
食事を提供する仕事であるが、基本的にはその職場の上長の指示に従ってほしい。
その範囲で、あとは自由に振舞って構わない。
寮住みになる。部屋は狭いが一人部屋である。
名前を偽る必要はないが、自分の素姓は明らかにしないよう気をつける。ここだけは厳守。
お守り袋を渡すので、常時身につけていること。万一、危険を感じたら、お守り袋を開けるように。誰かが必ず駆け付ける。
期限は未定。終了する時は迎えに行く。
キングがヒルダに話す様子を、向かいのソファからミカゲは見ていた。
絶対、聞いてない。この人。
ミカゲはヒルダを見ながら、そう思っていた。
ヒルダは適当にふんふんと言いながら、キングの顔を見ているだけだった。
「以上だ」
「分かったよ」
ミカゲは驚いた。
キングの説明不足にもヒルダの了承にも、まるで納得がいかなかった。
具体的には、どこで何をする何のための仕事なのかも、さっぱり分からない。
にもかかわらず、二人の間では話が成立しているようなのだ。
ヒルダはキングにしなだれかかりながら言った。
「あたしはさ、肉屋で働いていた時も、きちんとした仕事ぶりを評価されてた。任せておくれよ」
「ああ。ヒルダの職歴として紹介状にも書いておいた」
ミカゲは再び驚いた。
ヒルダがどこかでまともに働いている姿など、思い描けなかった。
この屋敷に来て数日経ったが、ヒルダは使用人の服は着ているものの、キングにつきまとって多少の給仕をする以外に何もしていなかった。
キングが言うように、ミカゲの人生経験が少ないために理解が及ばないのだろうか。
キングは、今後についての話を始めた。
ミドリ地区を経由して、ハクキン地区の仕事場にヒルダを送り届ける、という話だった。
ヒルダはキングの義手ではない方の右腕に絡みつき、やはり話を聞いていないようだった。
むしろ、ミカゲが反応した。
「キングさん、連れて行ってください!」
絡みつくヒルダをそのままに、キングはミカゲを見て言った。
「ここで大人しくしてろ」
「お願いです。何度も考えたのですが、やっぱりフロウ、助けてくれた恩人に直接、礼が言いたいんです。慌てて書いた手紙じゃ足りない。俺、すごく世話になったのに」
ミカゲはキングに保護され、やることを失ったこの数日の中で、家出をしてからの日々を振り返っていた。
不安、恐怖、後悔、反省、さまざまな場面が浮かんできては、苦しい思いにもなった。
しかし、それらを越えて何よりもミカゲの胸を占めるのは、フロウに心身を救われた安堵と、マルタの家での一夜の転機だった。
マルタではなくフロウに会いたいと願うのは、フロウに対する親しみの情ゆえであるが、ミカゲはそこまで思い至ってはいなかった。
フロウの幼さとミカゲの大人びた部分が釣りあったのか。はたまた、女友達のいない境遇の二人が、知らず知らずのうちにお互いを求めたのか。
ミカゲは頭を下げて、声を張った。
「お願いします!ご迷惑はおかけしません!魔術は使いません!敵には男だと思われているので、女の格好をします!他に余計なこともしないと誓います!」
ヒルダはうるさそうにミカゲから目を逸らし、キングの腕に頬をつけた。
キングは考えていた。
ミカゲは、5歳にしてあのデンジの言いつけを破り、以降、命を狙われているにも構わずシェイドにどこまでもついて歩き、13歳で恋敵を討ち取るのだと家出をして敵の巣窟に乗り込んだ娘である。
ここで止めたら、絶対、何かしでかす。
キングは空いている義手で頭を抱えた。
とんでもないじゃじゃ馬娘だ。
どうしたものか。
ふと、キングの頭に、シェイドがやってくる日程が浮かび上がってきた。
物事は、早いところ、収まるところに収めてしまったほうがいい。
キングは一つの考えにたどり着いた。
キングは琥珀色の瞳を少し細めて、厳しさを浮かべた上でミカゲに言った。
「俺の目に届くところにいることを条件に許可する」
「わ!ありがとうござ」
「反対!あたしはキングと二人で行くんだ!てめえ、邪魔してんじゃねえよ!」
ヒルダが即座に横やりを入れた。
ミカゲはムッとした。
「うるさいな。あんたには関係ないだろ」
「バカやろう!こっちのセリフだ!無関係のガキがしゃしゃり出てきてんじゃねえ!」
「やることがあるんだよ!あんた、話、全然聞いてないから分かってないんだろ!」
「クソガキ!キングの話は聞かなくてもあたしには分かるんだ!バーカ、バーカ!」
「バカって言うヤツほど、自分がバカなんだよ!」
「うるせえ!バーカ!大体、何で大人の話の席にガキがいるんだ!」
「キングさんがあんたと二人きりになりたくないからに決まってる!俺は好きな時に好きなとこにいるんだよ!」
突然にヒルダとミカゲの口げんかが始まった。
ののしり合いに熱中するヒルダの手元から、そーっと腕を抜き、キングは静かに立ち上がった。
キングはコソコソと応接室のドアへ行き、すばやくその場を離脱したのであった。
そんなこんなで準備は整い、ヒルダが新しい仕事場に送り込まれる日となった。
「へえ。あそこかい」
ハクキン地区、王立魔術学院の通用門が見える街路樹の陰から、ヒルダは学院を覗き見た。
「これが紹介状だ。学生食堂で働くことになりましたと、あそこの守衛に言って、これを見せるんだ。できるか?」
「任せて」
ミカゲはいちいち驚いてしまうのだが、ヒルダはここに来て初めて、勤務地と勤務内容を知った様子なのだ。
しかも、あっさりと受け入れている。
なぜ、ここで、ヒルダが食堂のおばさんをする必要があるのか。
ミカゲは不思議でならないのだが、ヒルダはそれを聞きもしない。
説明とも言えないキングの雑な話は続く。
「それさえできれば問題ない。あとは、流れに乗って、ついていくんだ」
「分かった」
「自分の正体は明かすな」
「ミステリアスな女ってことね」
「そうだ。さて、万一、危険が迫った時はどうする?」
ヒルダは首から下げたお守り袋を取り出した。
「これを開ける」
「そうだ。完璧だ」
キングとヒルダは頷きあった。
ミカゲは、自分の頭が悪いせいなのか、と何度めかの疑問にとりつかれた。
どうやら、すべての打ち合わせが、これにて終了したようなのだ。
端から見ているミカゲには、この仕事のことがさっぱり分からなかった。
「じゃあ、行ってくるよ」
ヒルダは目を閉じて、心持ち顔を上向けた。
キングが一歩下がった。
「ん」
ヒルダは目を閉じたまま、口を尖らせた。
キングがもう一歩下がった。
ミカゲはヒルダの意図に気付いて、どうするつもりかとキングの顔を見た。
キングは苦い顔をしていた。
ヒルダはそのまま動かなかった。
キングは小さく息を吐いたようだった。
キングは、ヒルダにパッと大きく一歩踏みこんで、その額にキスをした。
ヒルダは額に手を当て、十分満足した顔で目を開けた。
明るい顔で、ヒルダは言った。
「いってきます!」
ヒルダは元気に手を振り、荷物の詰まった鞄を片手に歩き出した。
キングは苦笑いで手を振り、ヒルダを送り出した。
ミカゲは、不覚にもちょっとドキドキしてしまったのだった。
フロウは行き場を失い、家に閉じこもっていた。
家にいるのも気が滅入る。
しかし、どこかに行きたくても、どこに行けばいいのか分からない。
海はよかった。
しかし、知らない男に声をかけられるのは怖かった。
同じことがあったとき、うまく対処する自信がフロウにはなかった。
家の中で何かをする気にもなれない。
何をする気力も湧いてこない。
せめて、病気にかからないようにしようという気持ちが働いた。
薬草茶をいれた。
フロウは、ダイニングテーブルで薬草茶を飲んでぼんやりとしていた。
リンリンリン
突然、呼び鈴が鳴った。
フロウは、心臓が止まりそうなほどドキッとした。
静けさの中にいたので、呼び鈴の音は大きく脅威的に聞こえた。瞬間的に、居留守を使ってしまおうかとさえ思った。
フロウは首を振った。
フロウは重い体を引きずり、玄関に応対に出た。
ドアを開けるとミカゲがいた。
フロウは驚きのあまり、固まった。
ミカゲは、グレー地にピンクのラインが入った品のいいワンピースを着ていた。
キングの屋敷の使用人クラリスが見立てて整えた。今のミカゲは見事に、育ちのいいお嬢さんにしか見えなかった。
ミカゲは照れ隠しに、怒った口調で言った。
「相手も確かめないでドア開けるなよ。無用心だぞ」
フロウはドアノブから手を離し、口元に手を当てた。
「本当にミカゲちゃん?」
「見れば分かるだろ」
恥じらいで頬を染めながらミカゲは言った。
その瞬間、フロウはミカゲに抱きついた。
「ちょっと」
「ミカゲちゃん、会いたかった」
ミカゲはさすがに焦った。
夕方の往来は、人も少なくない。
フロウのことだから、ミカゲが行けば歓迎して、すぐに家に招き入れてくれるだろうとは思っていた。
歓迎どころではなかった。
何この感動の再会。
あまり目立つ行動もいかがなものかと思いながら、ミカゲはどこかうれしくも感じていた。
「フロウちゃん?その子は?」
ミカゲが喜び、かつ焦る中、大家のタツが通りかかり声をかけてきた。
フロウはハッと我に返った。
ミカゲから手を離すと、タツに向かった。
「こんにちは。あの。お日柄もよく。あの。この子は。あの」
フロウは、ミカゲについて何と説明していいか分からず、真っ赤になって口ごもった。
「こんにちは。初めまして」
挙動不審のフロウに目をぱちくりとしていたタツは、ミカゲから話しかけられて、そちらを向いた。
「私はフロウ姉さんの親戚です」
ミカゲは堂々と言い切った。
タツは目を丸くした。
「初めてだね。驚いた。親戚なんていたのかい」
ミカゲは恥ずかしそうに言った。
「今まであんまり付き合いがなかったのですが、フロウ姉さんが手紙をくれるので、ずっとやり取りしていたんです。とうとう会いに来ちゃいました」
タツは、納得した顔で何度も頷いた。
フロウはポカンとしながら二人を見ていた。
タツが言った。
「やっぱりマルタがねえ、ちょっとアレだから、親戚のほうもアレだろうけど、フロウちゃんは昔からしっかり者だからね」
アレとは何なのか、フロウにはさっぱり分からない中、タツにはもはや何の疑問もないようであった。
「フロウちゃん、よかったね。可愛いいとこと会えて。親がどんなでも、あんたたちは仲良くしなさい。親戚づきあいも大事だよ」
「はい、ありがとうございます」
ミカゲはにっこりとタツに笑いかけた。
タツも笑顔を返して立ち去った。
ミカゲは、呆気にとられるフロウにささやいた。
「こういうのはコソコソすると余計に怪しいんだ。堂々としてりゃいいんだよ。てか、早く家に入れて」
フロウは慌ててミカゲを家に招き入れたのだった。
家の中を移動しながらも、二人は自然と会話をしていた。
ミカゲは、今日はフロウの仕事が休みの日だから、こっちにいるだろうと思って来たんだと言った。
フロウは、実は古書店が決闘場になってしまって、と事情を話した。
ミカゲは驚き、大丈夫かとフロウの心痛に声をかけた。
フロウは、ミカゲの顔を見たら気持ちが晴れたと、心からの感謝を伝えた。
ダイニングテーブルに向かい合って着席するなり、ミカゲは用件をフロウに伝えた。
お礼をきちんと言いたくて来たこと。
長くはいられない。半刻で行かなければならないこと。
おそらくもう会えないこと。
「ミカゲちゃん。会えてうれしいのに、もう会えないのね」
涙をこらえるフロウに、ミカゲの胸は痛んだ。
ミカゲにとっても、こんな出会いと別れは経験にないことだった。
せっかく出会えたのに。
ミカゲにも惜しむ気持ちがあった。
自分がまことの黒であるばかりに。
普通の人と関わることは、その人を危険に巻き込むことにつながる。
決して親しくなってはいけない。
親戚という先ほどの嘘が、悲しくミカゲの胸に迫った。
ミカゲの目にも涙が浮かんだ。
「本当にありがとう。フロウが助けてくれなかったら、どうなっていたか分からない。傷の手当て、本当にうれしかった」
「ミカゲちゃん」
「女の子としての俺を認めてくれてありがとう。マルタさんにも伝えてよ。心から感謝している」
「うん」
「俺」
「うん」
「フロウに会えてよかった」
「うん」
「気をつけてよ。あんたちょっとフラフラしてて隙だらけだから」
「うん」
フロウは言葉にならない様子だった。
フロウは泣いていた。そして、それを堰き止めようとするかのように、組んだ手を胸に当て、歯を食いしばっていた。
そんな顔見せるなとミカゲは思った。
ミカゲもたまらず泣いた。
友達になりたかった。
友達になるなら、あなたがよかった。
「ありがとう。さようなら」
ミカゲは精一杯の気持ちをこめて言った。
フロウは声も出ない様子で、ただ頷いていた。
フロウは何も問わないし、何も異論を唱えなかった。
ミカゲとフロウはしばらく何も言わずに声を殺して泣いていた。
二人とも、必死に涙を抑えこもうとした。
ここに流れる感情さえ、あまり大っぴらにしてはいけないのだという思いにかられていた。
夕暮れ時であった。
出発の時刻になったミカゲをフロウは見送りに出た。
その頃には、二人とも気持ちを治め、涙を止めていた。
玄関ドアを開けて外に出ると、突然、ミカゲが駆け出した。
「シェイド!」
一日閉じこもっていたフロウには、夕焼けが眩しすぎて、視界がはっきりしなかった。フロウは手をかざして、目を細めた。
通りの向こうに背の高い黒髪の男がいるのは分かった。ミカゲがその男のもとに駆け寄って行くのが見えた。
「来てくれたの!どうしてここが?」
はじけるような喜びに満ちたミカゲの声が聞こえてきた。
フロウは、少し胸が痛くなった。
ミカゲには帰る場所があるのだと感じた。
少しずつ目が慣れてくると、男が優しい目でミカゲを見下ろしている様子がフロウにも見てとれた。
「キングさんから全部聞いている。後で説教だ」
ミカゲは、くすぐったそうな表情で頬を染めた。
それからミカゲはフロウの存在を思い出し、ガバッと振り向いた。
フロウが自分たちを見ているのを確認すると、男をこっそり指さして、この人なの、と唇だけ動かした。
フロウには通じた。
ミカゲが好きな人だ、とすぐに理解した。
フロウは慌てて頭を下げた。
シェイドは静かにフロウを見ていた。
動かないシェイドを不思議に思い、ミカゲは首をかしげた。
ミカゲは、はたと思い当たった。
フロウは、シェイドの想い人ではなくても、好みのタイプなのではないか。
少し焦って見上げたが、シェイドは平静な顔をしていた。
おもむろに、シェイドは歩き出した。
ミカゲは一拍遅れて小走りについて行った。
シェイドはフロウの前で足を止めた。
「ミカゲが世話になったと聞いています」
「いいえ!こちらのほうも助けてもらいました。今も、あの、ミカゲちゃんが会いに来てくれてとてもうれしかったんです」
フロウは赤くなりながら、懸命に話した。
ミカゲが片想いをするシェイドを一目見て、フロウは何とも言えない好感を持った。
造作の美しさにも驚いたが、ミカゲを見る優しさが良かった。
なぜだか妙に、胸の鼓動がうるさかった。
ミカゲがシェイドの隣に立った。
フロウは、すてきな人だねという思いをこめて、ミカゲに目配せをし、笑いかけた。
ミカゲも笑顔を返した。
シェイドは静かに言った。
「ありがとうございました」
「いえ、あの、本当に。私が、ミカゲちゃんに会えてよかったです。ミカゲちゃんが、お迎えの方と無事に会えたことも分かって、安心しました」
シェイドは、じっとフロウを見た。
フロウはその静かな眼差しを受けてドキドキした。
シェイドが口を開いた。
「お礼を何か」
フロウはブンブンと手を振った。
「何も要りません」
シェイドの小指が誰にも知られずに、ピクリと動いた。
ミカゲは不満そうに言った。
「本当に?せっかくだから、何か受け取って。俺に使った金だけでも」
「欲を言えば、またミカゲちゃんに会いたい。あ、ごめんなさい!困らせること言っちゃった。ごめんなさい。私、バカだな」
フロウは赤くなってうろたえた。
ミカゲもつられるように赤くなった。
シェイドはじっとフロウを見ていた。
視線に気づいてフロウはシェイドを見た。
ミカゲと同じ、黒曜石の瞳だと思った。
フロウの胸がざわざわと騒いだ。
シェイドは表情を変えず、静かに尋ねた。
「望みはそれだけ?」
「何も要りません。本当にどうかお気になさらないでください」
フロウは頭を下げた。
ミカゲが覚悟を決めて言った。
「じゃあな、フロウ。どうか元気で」
「うん。ミカゲちゃんも、幸せになってね」
そこに込められた意味に気づいて、ミカゲは力こぶしを作って見せた。
ミカゲは、シェイドに好きになってもらえるよう頑張ると決めたのだ。
フロウがエールを送ってくれた。ミカゲはとてもうれしかった。
フロウとミカゲは微笑みあった。
そうして、フロウはミカゲを見送った。
通りを渡った先で、ふいにシェイドが振り向いた。
見送っていたフロウと目が合った。
シェイドは先ほどまでとは違う目をしていた。
静けさなどない。
そこにあるのは、荒ぶる本性を垣間見せるような鋭い輝き。
それは一瞬の出来事だった。
シェイドはミカゲとともに、路地裏に消えた。
フロウは一人、家に戻ってドアを閉めた。
そこから動けなくなった。
ミカゲと別れた悲しみがあったはずなのに、今のフロウをめぐるものはそれだけではなかった。
そうだ、月だ。
フロウは思い至った。
似ているのだ。月を見た時の胸騒ぎに。
刺し貫かれたように痛む胸があった。グルグルと湧いて出る言葉たちがあった。
離れたくなかった。置いていかないで。そばにいて。
胸に去来するその言葉は、誰に向けたものなのか。
父か。母か。ハシマか。ミカゲか。それとも。
フロウは涙を流した。
それは、フロウの実感できる感情からはかけ離れていた。
なぜ泣いているのか分からなかった。
フロウは自分を見失った。不確かな自分に翻弄された。
フロウの心は、訳も分からず月を求めた。
夜が恋しかった。




