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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サヨナラ現実世界

作者: 九条アリア

「どんなに頑張ったって報われない世界に一体何の意味があるの?」 バッドエンド一直線な可哀想な物語。でも、ちゃんと続きがあるのでご安心を。 部活で別名義で書いた作品です。 受験勉強であと出来れば2,3作品投稿して一時休止します。

あの時の私は笑っていた。父と母と手を繋ぎ、楽しそうに歩いていた。永遠にこの時間が続くと信じていた。ずっと幸せでいられると信じていた。けど、あの時から私の人生の歯車は狂い始めていたんだ。


「めぐみ、おはよー。うわ、酷いクマ出来てるよ。寝不足?」

「おはよう…。うん、ちょっとね…。」

「またいつもの…?」

「そうだよ。もう慣れたけどね。」

昨夜は十時に眠って快適な朝を迎えるつもりだったのに、一時に帰ってきた母親に夕食を作らされ、そしてよく分からない愚痴を長々と聞かされ寝ることが出来たのは三時だ。お弁当を作るために五時に起きなければならないから寝た気になれなかった。

「大変だね…。私でよければ協力するから頼っていいからね?」

「あ、今度うちに泊まりにくればー?一日くらい大丈夫でしょ?」

「それなら、今度皆でどっか遊びに行こうよ!」

「うん…ありがとね。」

話を聞いていた周りの友達が気を遣って私に声をかけてくれる。だから私はこんな生活でも頑張れる。優しい友達がたくさんいるから。

「めぐみ、いるかー?自宅に帰ってこいと連絡が入った。すぐに準備してくれ。」

「…分かりました。」

先生の言葉にため息が出た。またいつものお呼び出しだ。私はさっさと家へと戻ることにした。



「着替えがないじゃない!それと、昼食を用意しておいてと言ったでしょう!?あんたは何をしているの!」

「それくらいメールしてよ…。いつものは洗濯して乾いてないし、昼食は冷蔵庫の中にあるから。」

「昨日、洗濯しておいてって言ったでしょ!?乾かすまでが洗濯に決まってるじゃない!どうしてその年になってこんなことができないの!まったく親の顔が見てみたいわ…。」

無茶を言わないでほしい。それに私の母親はあなただ。と言いたいけれど、お父さんがいなくなった十年前から母親の中では私は養子ということになっているらしい。余計なことを言わない方が身のためだ。あの時のショックは未だに抜けていないから。

「とりあえず着替えはそこのタンスに入ってるから。私はもう行くね。」

「待ちなさい…!」

母親に襟を掴まれ、思い切り引っ張られそのまま後ろの壁に頭を打ち付けた。痛みで頭がくらくらする。そして、腕を掴まれ無理やり起こされた。

「もうこんな手間かけさせないでね…?私は忙しいの。遊んでるだけのガキとは違うのよ。」

母親は吐き捨てるように言うと私を地面に叩きつけた。身体が物凄く痛む。床が赤い液体で染まっていた。どうやら頭から出血しているらしい。

「…学校行かないと。」

とりあえず私は痛みに耐えて学校に向かった。



「どうしたのよこんな傷だらけで…。」

学校に着いてからすぐに保健室に行ったら先生に驚かれた。頭から血を流した女子生徒が急にやってきたのだから当たり前の反応だろう。

「途中で転んだんです。痛みはそんなにないので。」

「そんなわけないでしょう?女の子なんだから身体は大切にしなさい。」

先生の手当のおかげで痛みはあまりなくなった。頭に包帯を巻いているから教室に戻りにくいけどしょうがない。私は教室の後ろのドアからそっと入った。

「めぐみ、おかえ…その怪我どうしたの!?」

クラスメイトが私の姿を見た途端に教室は騒がしくなった。個人的には気にしないでほしいけど常識的に考えてクラスメイトが数十分の間で頭に包帯を巻いて帰ってきたらおとなしくしていられるわけがない。しばらくしたら静かになるだろうからそれまでおとなしく待とう。

私が静かにしていると、クラスのみんなは触れてはいけないことを察してくれたのかだんだんと静かになっていった。

「女の子なのにこんなに傷があって…跡が残らないといいね…。」

「大丈夫大丈夫。いつもちゃんと治ってるからさ。」

そこまで深い傷ではないし、目立つ場所でもないからきっと生活には支障はない。本当にあの母親は容赦ない…。けど、お父さんが残して行った母親は私が守らないといけない。何をされても、私がついていないと駄目なんだ。母親には私しか残されていない…。私にはみんながついているから大丈夫。大丈夫なんだよね…?

何故か分からないけれど私は不安になった。まるでそれはこれから起きる出来事に気づいているかのようだった…。



そして一週間後、私は放課後に職員室に呼び出された。職員室に入ると数人の先生がいらいらしたような表情で椅子に座っていた。

「何の用件ですか?」

私はなんとなく察していたけれど、この後の状況を推測して気づいていないふりをした。子どもは大人たちの駒じゃないんだ。言いたいことがあるなら本人に言ってほしい。

「この前のPTAの集まりだよ!君の親はいちいち言うことに突っかかってきて、何とかならないのか!?」

「疑問を出すのは構わないけど、人の話を聞かないんだよ…。何回も同じことを言うからやってられない。」

私は溜め息をついた。どうしてあの母親はこういう行事には参加するのだろうか。それを私に言う先生たちも先生たちだ。

「とりあえず母には言っておきますので。失礼しました。」

「ちょっと待ちなさい!」

後ろで先生が何か言っているが私は職員室を出て家へ帰った。



「ただいま。」

返事は返ってこない。たぶん母親はどこかにでかけているのだろう。とりあえず課題を済ませて夕飯の仕度をする。母親はまだ帰ってこない。。まだどこかで遊びまわっているのか分からないけど待っているこっちの身にもなってほしい。一時間くらい待っていると玄関からドアを開く音が聞こえてきた。

「ただいま…。」

「おかえり。遅くなるなら連絡くらいいれてよ。」

そう言いながら玄関に行くと、そこにいる母親の服はぼろぼろで髪はぐしゃぐしゃになっていた。

「全く何なのよ!勝手に私のせいにして掴みかかったりして!おかげでこんな有り様よ。」

「何があったの…?」

「うるさい!」

母親は怒って大きく足音を立てながら自室へ向かっていった。ただ事じゃない気がするが今はどうしようもない。警察沙汰になっていませんようにと願うだけだ。きっと大丈夫。

そう思っていればいるほど不安になるのは何故だろうか…?



次の日、私は何も変わらずいつもの時間に家を出て、いつもの時間に学校に着いた。今日もいつも通りの一日だと思っていた。その思いは教室に入った瞬間打ち砕かれてしまった。

「めぐみ、どういうことなの!?何があったの!?」

「え?え?何が…?」

クラスメイトに急に肩を掴まれた。彼女は焦っていて何を言っているのか分からない。私自身は見た感じ何もないけれど…。

「私のお母さんに何があったの!?入院してるなんて何をしたの!?答えてよ!答えてよめぐみ!!」

「私にも…分からないよ…。」

たぶん昨日の母親の姿から考えて、彼女の母親と何らかの問題があったに違いない。けれど、私は詳しくは何も知らないから答えようがない。それでも彼女は私の肩を激しく揺すって聞いてきた。

「めぐみ!何で答えられないの!?答えられない理由があるの!?まさか…私に恨みでもあるの…?」

彼女がそう言うと教室がざわめき始めて、周りは私たちをひそひそと話していた。

そんなわけがない。友達で一番仲が良い彼女にどうしてそんなことをしなければならないんだ。

「違うよ…!私は知らないの。何も聞いてないの!」

「嘘吐き!そんなわけない!めぐみがしっかりしてれば、あなたのお母さんのせいで私のお母さんが苦しむことはなかったのに…。」

「そんなのってないよ…。どうして…。」

いつのまにかクラス全体の雰囲気が私が悪者みたいになっていた。私は何もしていないのに。いや、何もしていなかったから…?私には何が良くて何が駄目なのか分からない。ただ、泣くのを堪えてじっとしていることしか出来なかった。



あれから二週間が経ったけれどクラスの雰囲気が戻ることはなかった。今でも私は悪者扱いをされている。けれど、第三者からはいじめには見えなかった。彼女たちは私に直接手を出してこないからだ。物を隠したり、暴力をふるったりは一切してこない。ただ、私を見てひそひそ話したり嫌な目で見てくるだけだ。だから、人と会うのが怖い。誰がどこで見ているのか分からなくて外にいるのが怖い。誰かにいじめられていますと言ったところで「自意識過剰なだけじゃない?」と返ってくるのがオチだ。先生にだって嫌われているのだから。私は誰にも助けを求められない。

大丈夫。まだ辛くない…。



「ちょっとめぐみー。これ手伝ってよ。」

クラスメイトに話しかけられ、渡されたのはそれなりの量の委員会の書類だった。

「え、私は違う委員会だよ…?」

「私達忙しくてさー、頼れるのはめぐみしかいないんだよ。お願いしてもいい?」

「うん…分かった。やっておくね…。」

みんなのために頑張ったら許してもらえるかもしれない。これからはみんなのために頑張ろう。そうすればきっと悪者だなんて言われない…。

私は必死で書類を片づけた。思っていたよりも大変ではなくて、数時間で終わった。私はそれを持ってクラスメイトの元へ向かった。

「終わったよ…!」

「めぐみ凄いじゃんー。やっぱりめぐみに頼んで正解だったよ。めぐみはやっぱり頼れるね。」

「…ありがとう!」

凄い嬉しかった。やっと私を悪者じゃなく扱ってくれた。頼ってくれた。その時の彼女がニヤニヤと笑っていたことには気づかず…。

その日を境に私はクラスメイトのみんなになった。私は文句一つ言わずにそれらをこなした。みんなが頼ってくれるから。私を…○○として…?



「そこどいてー!」

「え?」

急に強い衝撃を受けたと思ったら私の身体は宙に浮いていた。そして階段から踊り場へと落ちていく。

「いった…!」

「だからどいてって言ったのに。ごめんねー。」

ぶつかった人は私を無視して階段を下りて行った。誰も見ていない。誰かに言ってもきっと私が一人で勝手に落ちたことにされる…。

私は足をひきずって保健室へ向かう。痛くない…痛くないんだ…。

「どうしたのその足…。めぐみちゃん最近怪我多くない?大丈夫?」

「階段から落ちただけですから…大丈夫です…。」

保健の先生が心配してくれたが、私は詳しくは何も言わなかった。自分が耐えれば何の問題にもならないから。

「落ちただけって結構重症よ?とりあえず湿布するから痛むようなら病院に行ってね。」

「はい…。」

さっきよりは痛みは抑えられたけど、歩くのはつらい。ゆっくりと足を引きずりながら家へ帰った。


「何でこんなに帰りが遅いのよ!夕飯の仕度しなさい!」

帰って早々母親に怒鳴られた。どんな言い訳も通用しない。謝ってさっさと言われたことをするしかないのだ。

「はい、ごめんなさい…すぐします…。」

私は台所へ向かって冷蔵庫を開けた。中には何も入っていない。

「食材ないから…買い物に…。」

「何よこの役立たず!もういいわ!私は出掛ける!」

母親に髪の毛を引っ張られ壁に叩きつけられ蹴り飛ばされ、近くにあった掃除機で叩かれる。激しい痛みで抵抗すらできない。我慢しないと…我慢しないと…。最愛の人を失った母親の方がつらいんだ。私が守ってあげないといけないんだ…。

私はしばらく動くことが出来なかった。泣きそうなのを必死で堪える。私は…道具…。使ってもらえるだけ嬉しいと思わないと。つらいとか悲しいなんて感情は持ってはいけない…。



「めぐみ、これやってよー!」

「うん、待ってて…。」

「めぐみー、こっちもだよ!」

「今行くよ…。」

「流石うちらの頼れる人だね!」

「ありがとう…ありがとう…。」

みんなが私を頼ってくれている。だから頑張る…。でも、これは本当に私が望んだ生き方なの…?

「めぐみ、何してんの?邪魔だよ。」

「あ、ごめん…。」

かつては親友だった子がやってきて、私は移動しようとした。しかし、足をかけられ転んだ。

「ぶっざまー!まるで誰かの母親みたい!」

「そういえばさ!俺、この前部活帰りにめぐみの母親が駅の南口歩いてるの見たぜ!」

「あの辺ってホテルあるじゃん!不潔よ不潔!」

「俺もたまに見るけど、会う度会う度別の男といるぜ!身体売ってるんじゃね!?」

「ってことは、めぐみもそうなんじゃないの!」

「めぐみ、気持ち悪いー!女としてあり得ないわー!」

次々と投げかけられる母親と私への暴言。あの出来事から1ヶ月。クラスメイトたちの行動は悪化し、直接手を出すようになった。悪口を聞こえるように言われ、大量の文句を書いた紙を靴箱に詰められ、あげていくとキリがない。先生たちはそれを見て見ぬふりだ。私がいなければ楽になるから。

悪口は我慢できる…はずだったのに、もう我慢できなくなった。

「黙れ…!黙れ黙れ!あんたらに私の何が分かる!あんたらは人として最低だ!」

「め、めぐみ…?」

おとなしかった私が急に叫んだからか。クラスは静かになった。みんな驚いた表情で私を見ていた。

「自分の下に誰かがいることがそんなに安心か!それなら自分は何もされないから、安心だよね!自分のために誰かを踏みにじる行為がそんなにも偉いか!」

しかしおとなしかったのもほんの数秒。クラスのみんなは再び騒ぎ始めた。

「元々あんたなんかいらなかったよ!使える子が欲しかっただけだし!」

「せっかく頼ってたのにそういうこと言うんだ…。めぐみ、最低!謝ってよ!」

「そうだよ!謝れ!」

「謝れ!謝れ!」

謝れコールが教室を埋め尽くす。なんで!?悪いのは私なの!?私が黙っていると、親友だった子が私を引っ張り教壇に無理やり立たせた。

「めぐみ、謝ってよ。」

「なんで…?昔はあんなに優しくしてくれたのに…。」

「私は…昔からあんたなんか大嫌いだったよ!」

その言葉を聞いた瞬間、私の何かが壊れた。クラスがあんなに騒いでいたのに何も聞こえなくなる。何もかも壊れていく私の日常が。私の人生が。全てが。


「ごめんなさい…。生まれてきてごめんなさい…。道具として無能でごめんなさい…。使えなくてごめんなさい。黙ってみんなの言うとおりにしてれば幸せだったのに…。私はみんなのために存在する道具。それが捨てられたのであれば存在価値なんてないよね…。いなくなります。さようなら。今までありがとう。」

「めぐみ…?」

「おい、めぐみ…!」

クラスのみんなが不安そうな目で見ていた。まさかこんなこと言われるとは思っていなかったのだろう。みんなが私の元へ集まってきた。私はそれを振り切って教室を飛び出した。ひたすら全力で走る。左右の確認なんて知らない。信号機なんて知らない。轢くなら轢いて!こんな命くれてやる!

家に着く頃には身体が酸素を欲していて呼吸が荒くなる。私は家の物置に入り、鉈を取り出した。私がこんな辛い目にあってるのも…ずっと縛られて生きてきたのも、全部全部…!


「帰ってきたの?なら、ただいまくらい言いなさいよ。」

家にこっそりと入ったつもりが音が聞こえていたのか、母親に気づかれた。けど、そんなの関係ない。これで何もかも終わりにしてやる。

「あんた、何て物を持って…!」

「今までありがとう…。けど、お別れだよ。最後に言わせてもらう。私はあなたの娘だから!それだけは忘れないで!」

そう言って、私は鉈で自分の首を切断した。意識が無くなっていく…きっと私は何もかもから解放されて…笑っているだろう。


To be continued…?


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