表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鬼ごっこ

作者:
掲載日:2026/02/26

気持ち悪い。視界が黒い渦で染まるような感覚がした。

「いい天気なのに、」

8月の夏真っ盛り、とてつもない大きさの入道雲に比べ、幾分涼しい風が吹いていた。俺はただ一人友達の家へつながる道を歩いていたのだが、不快な感覚により立ち止まった。

「…」

しかし、すぐにその感覚も収まり歩き出す。今日はいつもつるんでいた4人組で今度でかける旅行の計画を立てようとしていたのだ。家につき、ドアノブに手をかけると、鍵は開いていた。

「いくら田舎でも危機感が足りんだろ」

とつぶやきながら家に入る。

「健!鍵はしめとけよ!」

「お前が来るから開けてたんだよ!」

2階から降ってきた怒鳴り声に、お前はいつもしめてないだろという文句を飲み込む。駆け足で階段を登り、健の部屋に入るともう集まっていた3人がだらしなくゲームをしていた。寝転んでいた洋介が画面を見ながらコントローラーを差し出す。

「今日は計画立てに集まったんじゃないんかい」

そう言いながらも3人に混ざってゲームをする。画面の見すぎでそろそろ目が痛くなってきた頃、誠也が起き上がり言った。

「喉乾いたんだけどコーラない?」

「冷蔵庫に入ってる」

「取りに行ってきて」

なんて傲慢なやつだ。そもそもコーラは更に喉が渇くだろ。

「陸人、お前も来い。一人は嫌だ」

健にそう言われ、一緒に階段を降りる。冷蔵庫から2リットルペットボトルのコーラを取り出している間に、俺は4人分のコップを出していた。

「どうせみんな口つけて飲むんだし、いらないんじゃない?」

そう振り返ると、健は冷蔵庫に手をかけたまま突っ立っていた。

「おーい」

そうやって肩に手を置こうとした瞬間、健が振り向いた。

「っ」

健の目がおかしかった。生きている感じのしない、死者の目をしていた。その時、ふと朝の不快感を思い出した。黒い渦が視界を奪う。目眩でふらついて来た時、唐突な喉の締付けで正気に戻ると、健が無表情で俺の首を絞めていた。

「あ ああ 」

声にもならない声で呼びかけるが、死んだ目は変わらない。無我夢中で手足を動かすと、腕が健の腹に見事にあたったらしく、それをチャンスに健の腕から逃れる。

「おい!何やってんだよ!」

俺はそう怒鳴るが、話し終わる前に、横にあった包丁を掴み飛びかかってきた。それを間一髪で避けると、机を挟んで距離を取った。

「おい、落ち着けって。ふざけてんだとしても流石に笑えんぞ」

そう言うも返事はない。心の奥底から感じたことのない恐怖が流れ込んでくる。ヤバい。これは何かがおかしい。そう思ってる隙に健は机に飛び乗り、おれの胸めがけ包丁を振り下ろそうとする。俺は反射的に机を思いっきり蹴った。すると健はバランスを崩し、机から落下した。包丁を抱きかかえるようにして。ドッという音がして健は動かなくなった。見たことのないほど鮮やかな赤が広が

る。

「なんなんだよ…」

どうすることもできず立ち尽くした。どれほどの時間が経っただろう。数秒にも数時間にも感じられた。突然脳が焼き切れるような痛みを感じた。脳が暗転していく。 


ペットボトルのコーラとコップを3つ持って階段を上がっていく。部屋に入ると誠也が文句を言ってくる。

「遅えよお。迷ってた?」

「持ってきてもらった身で何を言うとるんじゃ」

そろそろゲームにも飽きてきたらしく、2人は思い思いに行きたい旅行先を調べていた。

「っぱ旅行といえば沖縄だろ」

「いっそのこと海外まで行っちゃう?」

「3人で海外に行くのは初めてだよな」

そういった瞬間、凄まじい違和感を感じた。3人…?いや、3人。高校生の頃からずっとこの3人で過ごしてきた。違和感を感じることなど一つもない。

「ハワイまで行っちゃう?」

調子に乗った洋介の声で我に返る。

「東南アジアもありだろ」

その後も話し続けたが、特に決まることはなくそのまま自分達の家に帰った。俺は家から出る瞬間思った。この家は誰の家だ?しかし、すぐに考えるのをやめた。なにか触れてはいけない領域な気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ