第二部 第80話 七聖会議
テンレア同盟。
七聖議会室。
絢爛な装飾に囲まれた巨大な円卓。
その席に、七聖が静かに座していた。
最初に口を開いたのは、アルディアスだった。
「アルヴァ砦」
短く言う。
「陥落」
机の上に報告書が置かれる。
室内の空気が、わずかに揺れた。
◆
ミハイマールが静かに指を組む。
「聖導軍守備隊は?」
ジュリアが肩をすくめた。
「壊滅」
短い言葉。
だが、その意味は重い。
アンリエットが目を伏せた。
「……予想より早いですね」
◆
エミリオが報告書を指で叩く。
「問題はそこじゃない」
紙に書かれている言葉。
――レグノル再建軍。
「民が動いてる」
エミリオは楽しそうに笑う。
「秩序に対抗した混沌か」
◆
リンシアが小さく息を吐いた。
「英雄が現れれば」
静かな声で続ける。
「民は動くものです」
◆
アルディアスが低く言う。
「秩序を乱す存在だ」
「もう放置はできない」
机の中央に地図が広げられる。
リーデル。
グラナス。
アルヴァ。
三つの地点を結ぶ線は――
レグノル王城へ続いていた。
◆
ミハイマールが静かに言う。
「次は王城ですね」
アンリエットも頷く。
「象徴としては十分です」
「王城を奪われれば、民衆の士気はさらに上がる」
◆
その時。
ジュリアが扇で机を軽く叩いた。
「一つ」
「気になることがあります」
◆
全員の視線が集まる。
ジュリアは地図を指でなぞる。
リーデル。
グラナス。
アルヴァ。
「この三つ」
「同じ現象が起きている」
◆
リンシアが目を細めた。
「……黒い染み」
◆
ジュリアは微笑む。
「ええ」
「私の計画にはない駒です」
◆
アルディアスが低く言う。
「何だ、その染みとは」
◆
ジュリアは肩をすくめた。
「わかりません」
扇の奥の目は笑っていない。
そして静かに言った。
「ですが――」
ほんの一瞬、言葉を切る。
「世界が」
「動いている」
◆
リンシアが小さく笑う。
「確かに」
「私達の秩序で守られていた世界が」
「動き始めています」
◆
アルディアスが告げる。
「レグノル城の守備に出る」
視線が巡る。
「俺」
「ミハイマール」
「エミリオ」
「ジュリア」
短く続けた。
「四人で行く」
◆
誰も反対しなかった。
七聖四名の出撃。
それは、この戦争が新しい段階へ入ったことを意味していた。
◆
会議が終わる。
廊下を歩きながら、リンシアは窓の外を見た。
テンレアの旗が、風に揺れている。
ぽつりと呟く。
「正念場ね」
わずかに微笑む。
「セリナ」
◆
レグノル。
七聖。
そして――
未知の存在。
◆
世界は静かに
次の戦場へ向かっていた。




