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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第7話 空より来る者(セリナ視点)

低い唸りが、空から降ってきた。

最初は風だと思った。

廃都を吹き抜ける、いつもの冷たい風。

けれど――違った。

地面が震えている。

瓦礫が、小さく跳ねる。

空気そのものが、押し潰されるように重くなる。

まるで――

空そのものが、こちらを見下ろしているようだった。

「……来た」

声が、自然に漏れた。

空を見上げる。

灰色の雲が、裂ける。

影。

ひとつじゃない。

三つ。

五つ。

――十。

巨大な飛空艇。

魔導推進器の赤い光が、雲を焼く。

護衛艇が、その周囲を取り巻いている。

逃げ場はない。

七聖の兵団。

胸の奥が、冷たくなる。

「予想より早い……」

隣でアオトが呟く。

義手の光が、高速で明滅している。

都市の鼓動と同期するように。

《飛空体識別:テンレア同盟軍》

《主艦級二》

《随伴艦八》

《降下シーケンス開始》

冷たい文字。

逃れられない現実。

「降りてくる」

喉が、乾く。

それでも剣を握る。

逃げないと、決めたから。

「ここで迎え撃つの?」

「いや」

アオトは首を振る。

迷いはない。

「正面衝突は無理」

一拍。

「まだ、街は完全に目覚めてない」

その言葉に。

胸の奥が、わずかに揺れた。

――街が、目覚める。

それは。

私たちの側に立つ、という意味なのか。

背後でカイが言う。

「防御陣形を組む」

短い言葉。

覚悟の声。

エリーナはすでに空へ舞い上がっている。

「敵編隊、降下確認!」

その瞬間。

光。

遠方。

瓦礫の地面に、赤い柱が突き刺さる。

衝撃。

空気が爆ぜる。

灰が舞う。

着陸。

都市が、わずかに震えた。

まるで――

侵入者を認識したかのように。

「……始まった」

もう、止められない。

廃都外縁部。

中型飛空艇が地面に降りる。

推進器の光が消える。

静寂。

装甲ハッチが開く。

足音。

軽い足音。

「うわぁ……これはまた」

声。

若い男の声。

「派手に焼いたねぇ」

青い外套。

軽装。

武装は――見えない。

だが。

空気が違った。

周囲の魔導兵とは、明らかに。

存在の密度が違う。

耳元の魔導具が、微かに光る。

古い。

だが――生きている。

彼は周囲を見る。

観察する。

評価する。

人間を見る目じゃない。

現象を見る目。

「ここがファランシアか」

通信機に触れる。

「――エミリオ・アクアマリン。現地到達」

一拍。

『状況確認を』

「旧文明反応あり」

彼の視線が、街の中心へ向く。

正確に。

迷いなく。

「炉心クラス」

そして。

笑った。

「鍵保持者も確認済み」

その目が、細くなる。

楽しんでいる。

違う。

――再会を、歓迎している。

「久しぶりだ」

小さく呟く。

「この感覚」

まるで。

長い観測の末に。

ようやく現れた答えを、目にしたように。

◆(セリナ視点)

アオトが制御端末に触れる。

義手が光る。

応答。

都市が応答する。

低い振動。

鼓動。

それは――

私の足元から、確かに伝わってきた。

「防壁、限定展開」

空気が歪む。

建物の輪郭が揺れる。

現実が、わずかにズレる。

都市が、私たちを隠そうとしている。

「完全じゃない」

アオトが言う。

悔しそうに。

「隠蔽は部分的」

それでも。

十分だった。

私たちは、まだここに立っている。

その時。

エリーナが戻る。

息を切らして。

「来ます!」

振り向く。

瓦礫の向こう。

黒い列。

整然と進む魔導兵。

そして。

先頭。

青い外套。

男。

エミリオ。

距離はある。

それでも。

彼の目が――こちらを捉える。

正確に。

迷いなく。

最初から、見えていたかのように。

「……セリナ」

アオトの声。

「探知具」

一拍。

「旧文明式」

つまり。

隠れていない。

都市の防壁すら。

彼には、意味を持たない。

逃げ場はない。

それでも。

私は前に出る。

王女としてじゃない。

選択した者として。

カイが剣を抜く。

空気が張り詰める。

都市の鼓動が、わずかに強くなる。

その時。

エミリオが手を上げた。

魔導兵が止まる。

そして。

彼は言った。

「おーい」

軽い声。

まるで、散歩の途中のように。

「王女様」

笑う。

「話そうか」

一拍。

「撃ち合う前にさ」

灰の空。

死んだはずの都市。

その中心で。

支配者の使者と。

選択した王女が。

初めて、対峙した。

都市は沈黙している。

だが。

その鼓動だけは――

確かに、続いていた。

戦いは――まだ始まっていない。

だが。

もう。

後戻りはできなかった。

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