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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第二部 第77話 希望の砦

 アルヴァ砦の朝は、静かだった。

 昨日まで戦場だった谷には、まだ硝煙の匂いが残っている。

 崩れた城壁。

 焼け焦げた石畳。

 瓦礫の隙間から、朝の光が差し込んでいた。

 レグノル兵たちは黙々と瓦礫を運び、負傷兵を運び出している。

 勝利の空気ではない。

 ただ、生き残った者たちが動いているだけだった。

 中央制御塔の前。

 カイは腕を組み、床の穴を見下ろしていた。

 巨大な空洞。

 そこにあるはずの魔導炉は――ない。

 副官が報告する。

「カイ隊長、中央制御塔調査完了です」

「魔導炉は完全に消失しています」

 カイは眉をひそめた。

「残骸は」

「ありません」

「破片すら」

 バルドが穴を覗き込み、鼻を鳴らす。

「爆発じゃねぇな」

「爆発なら瓦礫が残る」

 石の縁を足で蹴る。

「こりゃ――」

「持っていかれてる」

 カイは静かに床を撫でた。

 石の表面は削れている。

 爆発ではない。

 何かが――通った跡だ。

「……地下から」

 低く呟く。

 エリーナが小さく声を出す。

「昨日の……黒いもの」

 カイは答えない。

 ただ穴を見つめていた。

 セリナが口を開く。

「魔導炉が無いと」

「この砦は?」

 カイは即答した。

「防御結界が使えません」

「魔導砲も沈黙します」

「城門術式も機能しない」

 つまり――

「ただの石の城です」

 沈黙が落ちる。

 バルドが肩をすくめた。

「じゃあどうする」

 カイは地図を広げる。

「前線拠点には使えません」

 指が谷をなぞる。

「だが」

「補給基地にはなる」

「谷の入口を抑えれば、レグノルへの道を確保できる」

 カイは中央塔を見上げた。

「ただし――」

「復旧には時間がかかる」

 セリナは静かに頷いた。

「アルヴァを、補給基地として再建します」

「祖国へ進むための足がかりとして」

 その時。

 外で兵士達の声が上がった。

 兵が駆け込んでくる。

「報告!」

「谷の外に人影が!」

 カイが振り向く。

「敵か」

「いえ」

 兵は首を振る。

「武装していますが……」

「旗が違います」

 砦の門。

 外に立っていたのは数十人の兵だった。

 鎧は古い。

 だが姿勢はまっすぐだった。

 先頭の老騎士が膝をつく。

「我ら」

 声は震えていた。

「レグノル王国騎士団」

 セリナの目が見開かれる。

「祖国奪還の旗が立ったと聞き」

 老騎士は頭を垂れる。

「参陣に参りました」

 その後ろ。

 谷の道にはさらに人影があった。

 農民。

 元兵士。

 傭兵。

 武器を握る者たち。

 バルドが小さく笑う。

「……来やがったな」

 セリナは旗を見上げた。

 アルヴァは失われた砦だ。

 魔導炉も無い。

 だが――

 人は集まっている。

 カイが低く言った。

「レグノルの戦力が……確保できるかもしれん」

 谷を風が吹き抜けた。

 アルヴァ砦。

 それはもう

 ただの砦ではなかった。

 祖国を取り戻すための――

 希望の砦に生まれ変わった。

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