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リブートオブアーク  作者: 和幸雄大


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第6話 廃都の鼓動(アオト視点)

眠れなかった。

眠る必要がないわけじゃない。

身体は疲れている。

それでも――眠りに落ちる直前で、義手が僕を引き戻す。

静かに。

確実に。

脈打っている。

まるで。

僕の意思とは別の何かが、僕を起こし続けているようだった。

……それが、ほんの少しだけ怖かった。

地下拠点の天井は低い。

崩れたコンクリートの隙間から、かすかな月光が差し込んでいる。

冷たい空気。

埃の匂い。

遠くで瓦礫が転がる音。

すべてが、現実だった。

夢じゃない。

(……ここは)

義手を見る。

淡い光。

規則的な明滅。

(……二千年前の世界じゃない)

分かっている。

それでも。

脳が、まだ追いついていない。

セリナたちは交代で見張りに立っている。

今はカイとエリーナの番だ。

僕は静かに上体を起こす。

義手の内部で、微弱な振動が続いている。

「……まだ、繋がってる」

声に出す。

返答はない。

だが。

同期は続いている。

マザーブレイン。

完全な通信ではない。

ただ――

深宇宙演算層との、断続的な同期。

それだけで十分だった。

僕は、完全に一人じゃない。

その時。

足元から、振動が伝わってきた。

微弱。

だが――規則的。

自然の揺れじゃない。

義手が反応する。

《地下構造スキャン:暫定実行》

視界の端に、解析表示が走る。

《旧文明反応――再活性化を確認》

息が止まる。

これは。

僕の知っている旧文明の“停止状態”じゃない。

(……動いてる)

この都市は、死んだはずだった。

焼かれ。

破壊され。

すべてを失ったはずだった。

それなのに。

地下で。

何かが――生きている。

いや。

違う。

僕の義手に応えるように。

都市が、目を覚まそうとしている。

背後で、布が擦れる音。

「アオト?」

振り返る。

セリナだった。

月光の中に立っている。

「どうしたの?」

迷いはなかった。

恐怖も。

逃避も。

ただ――知ろうとしている目。

「地下が動いてる」

短く答える。

彼女の表情が変わる。

「敵?」

「まだ分からない」

義手を見る。

解析は続いている。

「でも、旧文明ノードが再起動してる」

セリナは考える。

一瞬。

そして、言った。

「見に行く?」

その声に、躊躇はなかった。

王女の声ではない。

選択した人間の声だった。

「うん」

頷く。

「今なら、まだ間に合う」

地下通路。

空気が変わる。

温度が一定。

湿度が制御されている。

死んだ都市の空気じゃない。

機能している空間の空気。

それはまるで――

都市が呼吸を再開したかのようだった。

義手を壁に触れる。

反応。

応答。

微細な光が走る。

封鎖されていた隔壁が――開く。

その向こう。

巨大な円筒空間。

水晶柱。

金属フレーム。

中央コアシャフト。

静かに。

確実に。

生きている。

「これ……」

セリナが呟く。

「レグノルと同型」

「うん」

義手の表示が更新される。

《施設分類:都市基盤制御補助炉》

《稼働率:3.2%》

3.2%。

完全停止じゃない。

待機状態。

都市は。

まだ。

死んでいなかった。

いや――

待っていた。

「ファランシアは」

言葉が自然に出る。

「待機都市だった」

旧文明の。

保険。

沈黙。

だが、その瞬間――

義手の警告が跳ね上がる。

《高高度反応検知》

《飛空体――複数》

《識別:テンレア飛空艇部隊》

来た。

セリナが顔を上げる。

「七聖……」

僕は頷く。

「時間がない」

コアを見る。

応答している。

僕を認識している。

まだ間に合う。

「部分起動なら可能」

「防御と隠蔽だけでも」

セリナが言う。

「やって」

迷いはなかった。

信頼だった。

僕は制御端末に義手を接続する。

接続。

認証。

同期。

《アクセス権限:確認》

《補助炉:起動準備》

振動が伝わる。

都市の振動。

機械の鼓動。

それは――

僕の鼓動と、同期していた。

ファランシアが――

目を覚ます。

◆(七聖側)

雲海の上。

飛空艇ブリッジ。

エミリオは都市を見下ろしていた。

「……反応増大」

計器の光が、瞳に映る。

「まだ生きてたんだ」

笑う。

「この街」

通信が入る。

ミハイマールの声。

『炉心反応確認』

『鍵は起動している』

エミリオは答える。

「予定通りだ」

操縦士に告げる。

「高度維持」

一拍。

「武装待機」

視線を都市へ向ける。

「まずは――」

微笑む。

「顔合わせだ」

地下で。

少年が都市を起動する。

空で。

七聖が観測する。

その瞬間。

世界の均衡が。

静かに。

確実に。

書き換えられ始めていた。

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