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リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


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第47話 警告(アルディアス視点)

 戦略観測室は、静まり返っていた。

 誰も、言葉を発しない。

 投影空間の中央に浮かぶのは、灰色の都市――ファランシア。

 その外縁部。

 先ほど干渉した監視塔の座標。

 そこに表示されているのは――

「構造再構築を確認」

 ノクス・アルヴェインの声が、静かに響いた。

 感情はない。

 ただ、事実だけを告げる声。

「存在固定化完了」

「同種干渉に対する耐性上昇を確認」

 わずかな沈黙。

 アルディアス・カグツチは、投影を見つめたまま動かない。

 先ほど、確かに消去したはずの構造。

 それが――

 再び、存在している。

「……不完全な再構築ではない」

 彼は低く呟いた。

「完全な存在復元だ」

 それは単なる修復ではない。

 再定義。

 存在の再確立。

 秩序干渉を受けた構造が、自律的に自らを維持した。

 あり得ない現象だった。

「都市単体では不可能」

 ノクスが続ける。

「外部同期因子の存在を確認」

 投影の中。

 都市の中心。

 塔の上に立つ少年。

 アオト=ミナセ。

 アルディアスの視線が、わずかに細まる。

「……やはり、あの少年か」

 背後で、ミハイマールが静かに笑った。

「面白いじゃない」

 彼女は投影を見上げる。

「都市は彼に従っていない」

「彼も都市を支配していない」

 一拍。

「それなのに、都市は彼の意志に応答する」

 矛盾。

 構造上、存在し得ない関係。

 それは支配ではない。

 統合でもない。

 だが――

「共鳴」

 アルディアスは、静かに言った。

 その言葉に、空間がわずかに緊張する。

 旧文明の禁忌概念。

 管理者と都市の、最終段階以前に存在するはずのない状態。

 対等性。

 独立性。

 そして、相互干渉。

「秩序の外にある状態だ」

 ノクスが、淡々と続ける。

「現行支配構造において、定義不能」

 未定義。

 それはすなわち――

 危険。

 アルディアスは、ゆっくりと右手を上げた。

 空間に、新たな表示が浮かび上がる。

 対象識別:アオト=ミナセ

 対象識別:管理都市ファランシア

 その下に、新しい項目が追加される。

 ――秩序干渉度:高

 わずかな沈黙。

 その数値を見つめながら、アルディアスは思考する。

 排除は可能だ。

 戦力差は絶対的。

 都市単体では、我々に勝てない。

 だが。

(……今、排除すれば)

 失われる。

 未知が。

 可能性が。

 そして――

 答えが。

「アルディアス」

 ミハイマールが問う。

「どうするの?」

 単純な問い。

 だが。

 それは世界の均衡を左右する問いだった。

 排除。

 捕獲。

 観測継続。

 あるいは――

 アルディアスは、決断した。

「警告を発する」

 その言葉と同時に。

 旗艦《アーク=テンレア》の外部構造が、静かに展開を開始する。

 兵装ではない。

 砲門でもない。

 もっと精密な構造。

 秩序干渉装置。

「対象都市へ、秩序定義信号を送信」

 ノクスが即座に応答する。

「出力調整完了」

 投影の中。

 灰色の都市。

 その上空に、見えない波が形成される。

 音はない。

 光もない。

 だが。

 それは確実に――

 届く。

 都市の深層へ。

 そして。

 少年へ。

「最後の機会だ」

 アルディアスは、静かに呟いた。

「選択しろ」

 統合するか。

 抵抗するか。

 あるいは――

 滅びるか。


 少年が、空を見上げていた。

 こちらが見えているはずはない。

 だが。

 その視線は、まっすぐだった。

 恐怖はない。

 逃避もない。

 ただ――

 意志がある。

 アルディアスの目が、わずかに細まる。

「……変数個体」

 静かに呟く。

「証明してみせろ」

 秩序の外にあるというのなら。

 その選択が。

 どこへ至るのかを。

 戦略観測室は、再び静寂に包まれた。

 だが。

 それは嵐の前の静けさだった。

 警告は、すでに送られた。

 次の段階は――

 戦争だ。

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