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第21話 観測と決断(七聖サイド/ファランシア)

◆ 七聖サイド

 雲海の上。

 テンレア主艦のブリッジは、墓所のような静けさに包まれていた。

 投影盤の中央――かつてファランシアと呼ばれた座標は、吐き気を催すノイズに覆われている。

「……消えた、わけじゃないわ」

 ミハイマールが苛立ちを隠さず、解析層を切り替える。

 返ってくるのは、意味を成さない数値の奔流だけ。

「都市構造は存在している。けれど、私たちの観測系が“拒絶”されている。

 遮蔽でも魔法でもない……世界そのものが、こちらを弾いている」

「位相を外されたな」

 ノクス・アルヴェインが仮面の奥で静かに言った。

「正規鍵による深層接続だ。

 あの少年、都市の“心臓”に触れた」

 ブリッジの空気が、わずかに凍る。

「へぇ……」

 エミリオ・アクアマリンが軽く椅子を回し、楽しそうに笑った。

「普通なら、即死だね。

 瓦礫の街を抱え込んで、正気でいられるはずがない」

「戯言はいい」

 アルディアス・カグツチが低く唸る。

「鍵を保持したまま街と融合されれば、厄介だ。

 ――今すぐ焼く」

「待ちなさい」

 ミハイマールの声が、即座にそれを遮った。

「完全同期は未達。今焼けば、鍵の情報は失われる。

 ……測るのが先よ。どこまで耐えるか」

 アルディアスは睨みつけるが、引かない。

「試金石を送る」

 ミハイマールが静かに告げる。

「“街”になろうとしているなら、その器がどこまで持つかを見る」

 短い沈黙。

 全員が理解していた。

 ――耐えなければ、焼く。

「小規模高機動部隊を出す」

 アルディアスが決断する。

「主力は動かすな。だが――

 想定外は、必ず潰す」

 命令が下り、ブリッジの光が落ちた。

 七聖は、次の段階へと静かに移行する。

◆ ファランシア(アオト視点)

 街が、軋んでいた。

 音ではない。

 地下の深層で、何かが“身構える”感覚。

(……来る)

 義手の奥で、神経を引き裂くような痛みが走る。

 視界に警告ログが溢れた。

《外部接近予兆》

《高機動ユニット・少数》

 大部隊じゃない。

 だが、一体一体の出力が異常に高い。

「アオト……?」

 セリナの声が、遠くに聞こえる。

 膝が折れそうになるのを、歯を食いしばって耐えた。

「……七聖が、様子見を始めた」

 叩いて、壊れるか確かめる。

 それだけだ。

 カイが即座に動く。

「配置変更。外縁部を細分化しろ。

 街を“一つ”として見せるな」

 エリーナが翼を広げ、空へ飛ぶ。

「上から見てきます。来たらすぐ知らせます!」

 セリナが、そっと近づいた。

「……怖い?」

 一瞬、言葉に詰まる。

 怖い。

 脳が焼き切れるのも、この街が灰になるのも。

 でも――

「……一人じゃないから」

 震える声で、そう答えた。

 セリナは一度だけ目を伏せ、そして微笑む。

「ええ。

 見せつけてあげましょう」

 剣の柄を握りしめる。

「私たちが、ここで生きているってことを」

 雲の向こうで、影が動いた。

 これは決戦じゃない。

 だが――

 七聖が“人間として扱うか、切り捨てるか”を決める、

 最初の試験だった。

 ファランシアは、静かに息を潜める。

 踏み込ませるか。拒むか。

 選択は――これからだ。

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