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第14話 羽音の距離(エリーナ視点)

 廃都を渡る風は、まだ冷たかった。

 ファランシアの空は相変わらず灰色で、

 遠くには崩れた尖塔と、戦いの名残りの煙が薄く漂っている。

 私は上空を旋回しながら、街の外縁を確認した。

 敵影なし。

 魔力反応もなし。

「……とりあえず、今日は静か」

 通信石に小さく報告する。

『了解』

 カイの短い返答が返ってきた。

 私は高度を落とし、半壊した広場へ降り立つ。

 地上は、思った以上に忙しい。

 バルドが瓦礫を運び、負傷者の応急処置をしている人たちに指示を飛ばしている。

「そっち危ねぇぞ! 壁浮いてる!」

「水は地下二区画! 混乱すんな!」

 ……あの人、戦う時よりこういう時の方が生き生きしてる気がする。

 カイは簡易司令所で地図とにらめっこしていた。

「補給路はここ一本。警戒線は外周二重」

 淡々と。

 でも確実。

 ほんと、この人たち頼りになる。

 そして――

 視線の先で、セリナ様とアオトが並んで歩いていた。

 街の端。

 地下炉心の制御ポイント近く。

 肩が、近い。

「…………」

 胸の奥が、もやっとする。

 嫌いじゃない。

 むしろアオトは命の恩人だし、尊敬もしてる。

 でも。

(距離、近くない?)

 ……私、何気に気にしてる?

 私は無意識に腕を組んでいた。

「エリーナ?」

 振り返ると、アオトが立っていた。

「今戻ったところ?」

「はい。上空から見て異常なしです」

 義手の光が弱まっているのを見て、思わず言った。

「……まだ無理してますよね」

 アオトは少し困った顔をした。

「完全に切ると、街の安定が落ちるから」

「だからって、自分の体削るの普通におかしいです」

 思ったより強い口調になった。

 一瞬、沈黙。

 アオトは小さく笑った。

「……ごめん」

 素直に謝られると、逆に困る。

「怒ってるわけじゃ……」

 言いかけて、やめた。

「……ほどほどにしてください」

「努力します」

 信用できない返事。

 その夜。

 簡易食事を囲んで、みんなで座る。

 乾燥肉と保存スープ。

 味は正直ひどい。

「うぇ……」

 思わず声が出る。

 バルドが笑った。

「贅沢言うな。戦場メシだぞ」

「戦場でも美味しい方がいいです!」

 セリナ様がくすっと笑う。

 アオトも小さく微笑んだ。

 ……ずるい。

 その笑顔を見ると、さっきのモヤモヤが消える。

「エリーナ」

 セリナ様がこちらを見る。

「今日はありがとう。上空警戒」

「いえ。私の役目ですから」

 本当は、それだけじゃない。

 この場所を守りたい。

 この人たちを守りたい。

 ただ、それだけ。

◆(七聖側)

 テンレア本拠。

 巨大な戦術投影盤の前で、ミハイマールが腕を組んでいた。

「都市制御が定着し始めています」

「予想より早いな」

 アルディアスが低く言う。

 ノクスは静かに告げた。

「鍵保持者は、戦うより“根を張る”タイプだ」

「厄介だな」

 ミハイマールが頷く。

「次は小競り合いでは意味がありません」

「戦力を集中させます」

 ジュリアの映像が淡く揺れる。

『ファランシア周辺、反転生者感情の上昇を確認』

『放置すれば、小国家が形成されます』

 アルディアスの瞳が赤く光った。

「ならば、焼き直す」

 一拍。

「今度は、都市ごとだ」

◆(エリーナ視点)

 夜の風に羽織を翻しながら、私は空を見上げた。

 まだ静か。

 でも、それが続かないのは分かっている。

 地上を見る。

 焚き火の灯り。

 人の影。

 それは、かつての王都よりずっと小さい。

 でも――

(ここから、始まるんだ)

 私は小さく息を吸った。

 アオトも。

 セリナ様も。

 バルドもカイも。

 みんな、不器用で無茶で、でも本気だ。

 だから。

 私は飛ぶ。

 この街の空を守るために。

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