表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リブートオブアーク ―科学と魔法が交差する王国再建戦記―  作者: 和幸雄大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/147

第12話 都市の鍵(アオト視点)

視界が、白く滲んでいた。

義手から伸びる光のラインが、廃都ファランシア全域へと走っていく。

地下炉心、防壁ノード、環境制御層――

本来なら都市AIが担うべき処理を、僕はひとりで引き受けていた。

(……重い)

脳が焼けるように熱い。

肺が、酸素を拒むように軋む。

血液の代わりに、光が体内を流れているような錯覚。

《都市防衛モード:暫定展開》

《遮蔽率:62%》

《負荷警告》

数値は上がっている。

だが、その代償は確実に僕自身へ返ってきていた。

「アオト!」

遠くでセリナの声がする。

答えたいのに、喉が動かない。

上空では主艦級飛空艇が高度を下げ、魔導砲の照準が街へ収束していく。

逃げ場はない。

エミリオの声が、外部スピーカー越しに響いた。

『悪くないね。ほんとに』

軽い調子。

だが、その奥にある“本気”が分かる。

『でもさ、それ全部“部分起動”でしょ?

 君、都市を“触ってる”だけだ』

胸の奥が冷たくなる。

その通りだった。

僕が扱っているのは旧文明システムの表層だけ。

深層制御――都市の本質までは、まだ届いていない。

一方、七聖は違う。

彼らの技術はツギハギで、不完全で、荒い。

それでも――兵器として最適化されている。

だから速い。

だから強い。

だから、世界を壊せる。

だが。

(……それでも)

僕は義手を握りしめた。

マザーブレインから受け継いだ基幹認証。

都市と人を切り離さない設計思想。

破壊ではなく、維持を前提とした制御体系。

これは兵器じゃない。

生活のための科学だ。

「……セリナ」

やっと声が出た。

彼女が駆け寄ってくる。

「無理しないで! アオト、もう限界よ!」

視界の端で、仲間たちが戦っているのが見えた。

カイが隊をまとめ、

バルドが負傷者を庇い、

エリーナが空で敵の進路を乱している。

僕一人じゃない。

みんなが戦っている。

「……今の僕じゃ」

一拍。

「街を完全に守れない」

敗北宣言のような言葉だった。

だが、続ける。

「でも――時間は作れる」

義手を、地面へ叩きつけた。

《認証:正規管理対象》

《都市基盤レイヤー接続》

《干渉レベル上昇》

地下炉心が唸りを上げる。

街が応答する。

《視覚層再構築》

《空間位相微調整》

世界が、歪む。

建物の輪郭が揺らぎ、

空間が折り重なり、

現実そのものが、わずかにズレる。

魔導砲の照準が逸れた。

主艦の影が霞む。

完全防御じゃない。

ただの“誤認”。

それでも――

「退避経路、確保できる!」

エリーナの声。

「味方全員の避難、開始します!」

カイが叫ぶ。

「各員、王女の指示に従え!」

セリナが剣を掲げる。

「退くわよ! ここは捨てる!」

その声には、迷いがなかった。

王としての決断だった。

エミリオが楽しそうに笑う。

『へぇ……撤退を選ぶんだ』

僕は歯を食いしばる。

「今回は……引き分けだ」

一瞬の沈黙。

そして――

『いいや』

エミリオの声が低くなる。

『これは“観測”だよ』

一拍。

『次は、もっと本気で来る』

通信が切れる。

飛空艇編隊が高度を上げ、灰色の空へ溶けていく。

義手の光が、ゆっくりと収束していく。

都市の鼓動が遠ざかる。

接続が、解除される。

その瞬間。

膝の力が抜けた。

僕はその場に崩れ落ちる。

「アオト!」

セリナが抱き留めてくれる。

温かい。

人の温度だった。

「……ごめん」

「謝らないで」

彼女は静かに言う。

「あなたは、守った」

街は守れなかった。

でも。

みんなは守れた。

それで、今は十分だった。

廃都ファランシアは、まだ灰色のまま立っている。

何も変わっていないように見える。

だが――

深層で。

確かに。

都市は僕を認証した。

旧文明は、僕を拒絶しなかった。

僕はもう。

ただの生き残りじゃない。

都市の鍵だ。

そして――

この戦いは、まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ