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プロローグ
そこで彼女は出会う。
白いカプセルの中で眠る、ひとりの少年と。
黒髪。細い指先。
まるで時間そのものに閉じ込められたような、静かな寝顔。
――二千年前の科学文明から来た、最後の遺民。
アオト=ミナセ。
その名前を、セリナはまだ知らない。
ただ、不思議と確信していた。
(この人が……何かを変える)
理由はなかった。
けれど胸の奥で、小さく何かが動いた。
やがて、封印されていた装置が低く唸りを上げる。
微かな振動。
淡い光。
そして――
少年の瞼が、ゆっくりと持ち上がった。
その瞬間。
止まっていたはずの時間が、再び流れ始める。
科学。
失われた記憶。
そして、選ばれなかった未来。
宇宙の彼方。
観測領域の深奥で、マザーブレインは沈黙したまま記録を更新する。
かつて守れなかった文明。
その代わりに託された、たったひとつの生命。
《対象:アオト=ミナセ》
《状態:覚醒確認》
《保護優先度:最上位》
少年の灰色の瞳が、ゆっくりと焦点を結ぶ。
それは終わりではない。
崩れた世界の底から、もう一度立ち上がるための始まりだった。
科学と魔法と神話が交錯する再起動譚――
『リブート・オブ・アーク』。
二千年の眠りを越えた少年の視線が、
静かに、しかし確かに世界を捉える。
物語は、ここから動き出す。




