《第5話 影の一真との邂逅》
漆黒の桜の下、赤い瞳の少年――影の一真が静かに立ち上がった。
風もないのに、森の空気がざわめき、落ちた桜の花びらが舞い上がる。
一真は息を整え、しおりの手を握ったまま声を上げた。
「……お前、俺か!?」
影の一真は微笑んだ。
しかし、その笑みには温かみはなく、
代わりに鋭い冷たさが漂っていた。
「そうだ。俺はお前だ。
でも、選ばれなかった“もう一つの桜井一真”だ」
一真は拳を握り、胸の奥で何かがうずいた。
――奴がここで戦い続けていたのか。
俺の代わりに。
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◆ 真実の告白
影の一真はゆっくりと歩み寄る。
「覚えているか? 一年前、
君はどちらかを選ばなければならなかった。
そして俺は、君が残した方で生きることを選んだ」
一真は頭を抱えた。
「それで、俺は……忘れさせられたのか……?」
影の一真は頷いた。
「君は覚えていない。
でも俺は覚えている。
君が守ったもの、捨てたもの、そして後悔……」
その言葉に、一真の胸が痛む。
同時に、力が手のひらでうずく。
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◆ 再会の緊張
影の一真は一歩前に出た。
「帰るんだな?
俺のいる場所に」
一真はしおりを振り返った。
彼女は静かに頷く。
「二人で戻るの。
この世界も、現実世界も救うために」
一真は息を整え、影の一真に向かって歩き出す。
「……ああ。行くぜ」
影の一真は小さく微笑んだ。
「……待っていたよ、俺も。
君が来るのを」
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◆ 境界の試練
その瞬間、森全体が揺れ、地面が裂けた。
黒い影が再び襲いかかる。
「またかよ……!」
しおりが銀の鍵を掲げ、光の結界を作る。
しかし、影の数は無限に近く、光を押し返す。
一真と影の一真は目を合わせ、無言で理解した。
――二人で力を合わせるしかない。
桜紋が二人の手のひらで光り合い、
闇を押し返す強烈な衝撃波が森を包む。
影はひるみ、黒い爪が砕ける音が響いた。
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◆ 未来への第一歩
光が消えた後、森は静かさを取り戻す。
赤い月が高く昇り、桜の木々の間に銀色の光が差し込む。
影の一真は立ったまま、一真を見つめる。
「君となら、世界を取り戻せそうだ」
一真はしおりを見つめ、深く頷いた。
「……ああ。俺たち、もう迷わない」
小さな桜の花びらが三人の周囲を漂い、
その光景は、どこか希望を孕んでいた。




