《第14話 静かな日常と小さな事件》
桜の花びらが舞う穏やかな午後。
三人は森の奥にある小屋で休息を取っていた。
外からは鳥のさえずりと、かすかな風の音が聞こえる。
一真は木のベンチに腰かけ、しおりをちらりと見た。
「……お前、最近よく笑うな」
しおりは少し照れながらも、微笑む。
「ふふ、二人と一緒だと自然に笑顔になるの」
影の一真はその様子を静かに見つめ、赤い瞳を細めた。
「……そうか、俺も少し安心する」
三人の間に、穏やかで小さな幸福が流れていた。
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◆ 小さな事件
その時、森の奥からかすかな音が聞こえた。
ガサガサ、と葉をかき分ける音に三人はすぐに反応する。
一真は桜紋を光らせ、影の一真も身構える。
「……また何か来るのか?」
しおりは銀の鍵を掲げ、結界を準備する。
しかし現れたのは、黒い影ではなく、迷子になった小さな狐だった。
小さな体を震わせ、三人をじっと見つめている。
一真は思わず笑った。
「……なんだ、影じゃなかったのか」
影の一真も少し肩の力を抜き、狐を優しく撫でる。
「……可愛いが、森の中では気をつけろよ」
しおりも微笑み、狐を抱き上げた。
「大丈夫、怪我はしてないみたい」
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◆ 心の距離
狐を抱えながら、三人は森の中を歩く。
日常の小さな出来事の中で、互いの距離感は少しずつ縮まっていく。
一真は影の一真を見て、静かに言った。
「……お前、いつも冷静だけど、こういう時の笑顔もいいな」
影の一真は一瞬戸惑い、赤い瞳が柔らかくなる。
「……お前も、こういう時間を楽しめるようになったな」
しおりは二人の間に立ち、心の中で微笑む。
「二人とも、少しずつ変わってきてる……それを感じるだけで嬉しい」
三人の絆は、戦いを超えた日常の中で確かに育まれていた。
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◆ 微かな不安の影
穏やかな時間の中、森の奥で小さな黒い影が一瞬揺れる。
狐の存在に気を取られている三人にはまだ気づかれていない。
一真は笑顔のまま、心のどこかで微かな予感を覚える。
――平穏は長くは続かない。
まだ見えない影が、次の試練を用意している。
しかし三人は、互いの手を握り合い、安心と信頼を胸に前を向く。
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