《第10話 揺れる心と微かな影》
春風が桜の森を揺らす中、三人はいつものように森の小道を歩いていた。
戦いは終わったが、日常はまだ少しぎこちなく、互いに探り合うような距離感があった。
一真は小石を蹴りながら影の一真を見た。
「……あのさ、正直に聞くけど、俺といるときの俺って、どう思う?」
影の一真は赤い瞳をそらし、少し間を置いた。
「……悪くはない。むしろ、守るべき存在として頼もしい」
一真は照れ笑いを浮かべ、少しだけ肩をすくめた。
「お前って素直じゃないな……」
しおりは二人のやり取りを静かに見守り、心の中で微笑んだ。
そんな微妙な距離感に、少しだけ安心感を覚えながらも、
胸の奥には小さな不安がくすぶっていた。
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◆ 微かな影の気配
森の奥から、わずかな黒い霧が漂う。
その存在は小さいが、確実に三人の周囲を警戒させる。
影の一真は立ち止まり、鋭い視線を霧に向けた。
「……まだ完全に安心はできないな」
一真は手のひらに桜紋を浮かべ、軽く握った。
「でも、今は俺たちで守れる。だから怖くない」
しおりも銀の鍵を握りしめ、二人に目を向ける。
「……二人がいれば、どんな影でも退けられる」
三人は無言のまま、心の中で互いを信じ合った。
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◆ 心の距離と絆
少し歩くと、小さな水辺に差し掛かる。
桜の花びらが水面に散り、柔らかな光が反射する。
一真は影の一真に小さく声をかけた。
「……お前さ、俺といるとき、楽しいか?」
影の一真は一瞬考え込み、ゆっくりと頷いた。
「……うん、悪くない。
お前と一緒だと、自分が本当に生きてる感じがする」
一真は微笑み、しおりの方を見た。
「なあ、しおりもそう思うか?」
しおりは頬をわずかに赤くし、静かに微笑む。
「ええ。二人といると、安心する。
そして……守りたいって思える」
三人の間に、言葉にならない絆と温もりが流れる。
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◆ 微かな警告
しかし、水面の波紋の奥に、黒い霧が一瞬揺れた。
影は小さく、しかし確実に存在していた。
影の一真が眉をひそめる。
「……また、何か来る気配がある」
一真は拳を握り、決意を込めて言った。
「……どんな敵でも、三人で立ち向かう」
しおりも小さく頷き、三人の手が自然に重なった。
桜の花びらが舞う中、静かな森は次の戦いの前触れを告げていた。
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第10話はここで幕を閉じる。
次回、第11話では微かな影の正体が明らかになり、
三人の絆を試す新たな試練が描かれる展開となる。




