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絵にはキャンパスを、心には楽しみを。

絵には技術なんて必要ない。

必要なのは楽しむ心だけだ。

私の母親は私を殴った。

どうして、貴方はいつもそうなるの?と。

私の家はもともと画家一家で、五つ上の兄と二つ上の姉、そして四つ下の弟でさえも、絵が関係した職につくよう昔から教育されてきた。

私の両親,とくに母親の方は、絵に対する熱意が人一倍あって、私たちはその血を受け継いでいるからか、並大抵の人より画力があった。

私も、きっとこのまま生きていけば,普通に平穏に、イラストレーターやら,漫画家やら、

絵に関連した仕事につけていた

のかもしれない。

だが、つい先日のことだ。

私が体調不良になり、私と母は病院に行った。体調の不良というのも,熱はなく、めまいがしているのか目の前がぼやぼやとしているといった症状で、

お医者さんに見てもらったところ、

「これは風邪や感染症の一種ではなく、なんらかの病気でしょうが、私には分かりかねます。一度大きな病院で見てもらったほうがいいかもしれません。これは、紹介状です。」

と、病気の詳細がわからなかった。母は、わかりました先生。と上っ面の笑顔を見せてその病院を出た。

車に乗ってから,小さく「使えない医者ね。」

と言っていた時の母の横顔がまだ鮮明に頭の中には浮かんでくる。

そして今日。大きな病院に招待状を握って、診察に行った。血液検査をして、触診も、レントゲンも撮ったが,体のどこかに異常があるわけではなく、お医者さんも頭を抱えていた。

ほんとうに眩暈がするのか。と、

そして、お医者さんは,パッと顔をあげて私に言った。「もしかしたらその目に問題があるのかもしれないよ。」

それが幸か不幸か、そのお医者さんのいう通り,私のこの症状の原因は,目にあった。

わかりたくもなかった。

私の目を精密検査したところ。

あと数年もしないうちにあなたの目は失明します。と告げられたのだ。

ここからが、母や家族と私の関係の間に亀裂が入り始める原因だったのだ。


普通の家庭だったら,このことを聞いたら、

家族全員で私のことを労って泣いたり,驚嘆して唖然としているのだろうか。

そうだったらよかった。だが,私の家庭でそれは何よりも欠落した欠点だった。

さっきのことだ。

家に帰った瞬間、私の頭には激痛が響いた。それが、母親の拳であると気づくのには少しの時間を有した。

母は、何度も私のことを殴って蹴った。

それは私が母の足枷になってしまったからだった。母にとって目が見えなくなるというのは、何よりも烏滸がましくて何よりも煩わしい病気。なぜなら私たちの家庭は絵がかけないものはいらないからだ。

家庭…というよりかは,この母親だけだろうか。だが、家族で1番強い母親に逆らうものなどいないから、実際、この家族自体が狂っていると言わざるおえない。

今もなお、母親に殴られた場所を痛そうに手で覆い、泣きじゃくった私を見ても,姉も兄も,何も言わず筆を動かしているのだから。

「あんたなんて!絵が描けないんだったら!なんなのよ!うちの子じゃないわよそんな子は!」

母親は部屋の中で怒鳴り散らかす。

私はこんな母親を見たことがない。

絵を描いて,優しく微笑んで褒めてくれる母親はもういないのだ。

私は,体をむくりと起こして言った。

「あと数年あるよ…それまでに絵をたくさん描くから…だから、もう殴らないで…、」

私の小さな抵抗に、母親は目も向けない,それどころか、私は油を注いでしまったようだ。

「あと数年?貴方ねぇ。将来って知らないの?将来画家になって欲しいと思ってここまで愛情深く育ててきたのに!どうして今貴方は目を失うなんて馬鹿なことになったの?あと数年よ!す、う、ね、ん!貴方は今15歳。お医者さんがいうにはあと持って三年…貴方が1番大切な大学受験の時に、貴方は目を失うのよ!

そんなんじゃ到底画家になんてなれるわけないじゃない!これから描き続けたって、大学受験できなきゃ繋がらないのよ!」

母親は泣き崩れた。そして頭を冷やして来るわ,なんて言ってお風呂場の方に向かった。

お風呂場のドアが閉まったあと,

私は雑巾を持ってきて床に散らばった私の赤い血を拭った。

「手伝うよ。」そう冷たい声が後ろから聞こえた。それは姉だった。絞りきれてない雑巾を持って私の後ろに立っていた。

雑巾からは数滴滴が垂れている。

「絵を描くのはもうやめたの?」

「えぇ、ちょっと休憩…。」

姉は、きっとあんな母の姿を見て恐縮したのだろう。少し手元が震えてる。

もしくは,私にどうして助けてくれなかったのかと言われるのが怖いのだろう。

「これ,救急キットな。助けてやれなくてごめんな。おれ、昔っから母さんだけには逆らえないんだ。」

兄が物置から救急キットを持ってきて言った。

兄は姉と違って、素直にごめんなさいが言える。それが兄のいいところだろう。

姉は兄のその言葉を聞いて、黙り込んで俯いてしまった。

救急キットは、中を開けると埃臭い匂いがして,ほんとうに使えるかと思ったが,包帯や消毒液は使いたてのように綺麗だった。包装もしっかりとしている。

兄と姉は私の痔や傷に、消毒液をかけ、絆創膏やガーゼを。明らかに折れているかもしれないというところには添え木をつけて包帯を巻いてくれた。

この一瞬で虐待を受けている女の子になってしまった私は、姉に小さくごめんなさい。

と言われたあと、自分の部屋によろよろと入り,絵を描く筆を持った。

そして窓の外から見た景色を、鮮明に,赤の混じった瞳で見つめて、紙に映す。その時の絵は,いまだに額縁に入れて

部屋の片隅に飾っている。あの絵はなんというか、そう,赤一色の空だったから、

理を外れている絵だったから。



あれから3年が経った。

もう今の私には目が見えなかった。

お医者さんのいうとおりになってしまってほんとうに残念だ。今日は視力がなくなって、初めての病院での検査だ。

白杖をつき、道を歩く。人の気配は分からないし、物のある場所もわからない、壁に手をつたいながら,体をもたれさせながら,病室へと向かった。その拍子、あっと保険証が落ちた。

私は見えない目が使えないのでそれを手探りで探す。見えない見えない…この怖さが私の背中に重くのしかかって来る。

それは、私にとって唯一の汚点だから、

ひたいに汗を滲ませて私は手を動かすことをやめなかった。すると肩にトントンと手の感触がして、私が顔を上に上げると、

「これ,落としましたよ。」

と優しい声が上から降ってきた。

私は「ありがとうございます…。」

と会釈して声のする方に手を伸ばした。

「あ、僕はこっちです。」

「あ、すみません…、目のない生活に慣れていなくて…ほんとうにごめんなさい…、」

心の底から申し訳なくなった。

無体を働いてしまった。

声からして男の人だろうか。私のために拾ってくれたのに、私なんかに時間を使わせてしまった。

「いえいえ、大丈夫ですよ。心配しないでください。僕も心臓に重い病気を抱えている…もう3年も経つのにまだこれには慣れていません。」

「…、心臓の重い病気…。」

「でもね、僕は明るく楽しく元気よく。が座右の銘ですから、へこたれはしません!」

「こあきさーん?」

遠くから女の人の声がした。推測するに看護師さんだろうか。その声に反応して、男の人は体を上げたようだ。服の擦れる音がする。

「はーい、じゃあまたね,お嬢ちゃん。」

「あ!ありがとうございました!」

咄嗟にお礼を言ったが、少し不躾だったろうか。こあきさん…というのか。

今度またあったら、何か菓子折りでも持って行こう…。私は診察室へと先を急いだ。

「うん,いい傾向ですね。今、視力は失ってしまいましたが、まだ希望が残されています。貴方には回復の余地がある。」

「え??!それってほんとうですか?」

私はつい大声を出した。その声の大きさは、自分でも診察室の扉を抜けて,ほかの患者さんに聞こえてないか心配になる程だった。

「ええ、貴方の視力は無くなると言ったものの、完全に失われたというわけではありません。今は何も見えないかもしれませんが,長く時間をかければ、貴方の目は見えるようになるかもしれません。」

「…本当なんですね…、」

私は目から温かい涙を頬に伝わせた。

目は見えなくとも涙は出る物なのだな。

「ええ、日の光をたくさん浴びてください。それは貴方の目にとても良い休息です。

ですが…」

医者は言葉を詰まらせた。私は何も見えないがいるかもしれないという方向を見て、首を傾げた。嫌な予感がする。

診察室の空気が少し冷たい。

「その回復方法では,貴方が回復するのに、50年はかかる可能性があります。」

「50年……、」

桁違いの数字に私は言葉を詰まらせた。

回復するのに50年…、それってつまり,私が68歳になったらということだ。

回復するのにそんなに待ってられない…絵を描かなければ失望されてしまうのに…、

「手術をすれば、すぐに治りますが,どうしますか?」

私は首を横に振った。

それはお金的な問題でもあり、私には今そんな大金を出せるほど懐は暖かくはない。

母に出してもらうか兄と姉に出してもらう…というのはまた夢のまた夢だ。

あれから長い時がたって、私は高校で寮生活をして、家にはなかなか帰らなかったし,家というのが心底嫌いになってしまった。

理由は簡単で、母が私に対しての八つ当たりが激しくなってしまったからだ。

[絵ががかけない]これが何よりも、母にとってききたくも見たくもない言葉で、私はもう用済み。

兄も姉も母には逆らえず、私に逆上する母を傍観者のようにただ見つめるしかできない。

その時の姉と兄の表情を思い出すと今でも涙が出てきそうになる。

それから、家族間の仲がだんだん悪くなっていった。全て私のせい。

兄と姉は私のことを恨んでいる可能性がある。

私が家族間の仲を悪くしてしまったから。

弟はというと、飽きもせず母に媚を売っており、媚だけではなく、中学生にして、絵のコンクールで金賞を取った。

それも重なり,私は18歳になると同時に家を追い出されたのだ。

そして今,頑張って貯めたバイト代と、

毎日10000円お父さんが振り込んでくれるお金でなんとかやりくりしている。

だから,その手術を受けることは到底できないのだ。家の家賃も今月は厳しいかもだし,…、

「分かりました。では手術は見送らせていただきます。ですが,もし手術をしようと思わらた際は、いつでも気軽に相談してくださいね。

お大事に。」

医者は,私に優しい言葉をかけてくれた。

看護師さんは私に気を遣って、診察室のドアを開けてくれた。私は成人した物の、まだ子供扱いされる年頃なのかもしれない。

病院から帰って家にたどり着くと,一気に緊張が消える。というのも,道を歩く時も、信号を待つ時も、音でしかほとんど外界の世界を感じ取ることができない私は,全ての意識を耳に集中させる。

そのせいで神経をたくさん使うのやで家に帰ると汗だくのぐだぐだになってしまう。

家は、狭いが駅から近いために割と高い家賃をしている。家に引っ越してきた時,私はまだかろうじて目が見えていた。その時、物の場所を把握して目を閉じても生活できるように頑張った。

「もう今日は寝よう…。」



高校はもう卒業して、そのまま就職にすることにした私は、いまだに就職活動に挑んでいる。

でも、やはり、最終面接に入り,目が見えないということがわかると,私を職場に入れようとする人は少ないみたいで…なかなか捗ってはいない。目だけのせいではないのだろうけど、

スマホでは合格か不合格かの通知は見ることができないので、私はその企業に直接足を運んで,結果を聞くほかない。

今回は自信があったのに…、私はまた、不合格だった。その企業の責任者直々にその言葉を聞くと,自分が小さな存在に思えて来る。

わたしは、顔にグッと力を入れて,道をトボトボと歩いた。また次がある…、また次が、次…。頭の中で反芻する。ほんとうに次なんてあるのだろうか。

はあーっと大きくため息をしながら道を歩く。こんな気持ちなのに意識を集中させなければ歩けないなんて、理不尽な世界だ。

私は、白杖で道を擦りながら歩く。

人の気配がなんとなくわかる時、私はとても虚しくなる。白杖を持つ私を避けてくれようと、

人々が道のはじによってくれる。

これがなんとも申し訳なくていたたまれない。

もう嫌だ…、一際大きく顔にグッと力を込めた、その時だった。

「そこの人、もしよかったら絵画体験してみませんか?」

それは、温かい声色の男の人の声だった。

「眉間に皺が寄っている。何か嫌なことでもあったのでしょう?こちら,無料ですので、ぜひ,少し寄られてはいかがですか?」

私は,唖然とした。

この人には、私の持つ白状が見えないのか?

私は目が見えない。なのに、目が必要な絵画教室に誘って来るなんて…。

非人道的だと言わざるおえなかった。

「私,目が見えないんです。だから絵は…。」

「なんら問題ありませんよ。絵は心の鏡ですから,貴方の目が見えないことは障害ではない。

どうぞ,少し寄られてください。」

その言葉に私はなんだか心が救われたような気がした。体がふわりと軽くなる。

男は私の手を引っ張った。

その手はゴツゴツとしていてところどころの薄皮がむけていた。だが、決して不潔なわけではないようで、手の表面自体はツルツルで、

男が近づいてきた瞬間にふわりと花のような香りが匂った。

私はその勢いにバランスを崩し,体の平衡感覚を失った。だが,それに対応するように男が私の体を支えてくれた。

顔も外見も内面も見えない私は、手や耳鼻で感覚を掴むしかない。

その人がどんな人でどんな性格なのか。

おどおどして、私の体を支えてくれている腕を掴んだ。温かい…。力のある腕だ。

「大丈夫ですか?ごめんなさい。どうぞこちらに、ゆっくりで大丈夫ですから。」

そこには木製なのか、すべすべしてて手触りが良い椅子があった、その椅子からは鉄製のような冷たさは感じなかった。

私はそこにゆっくりと腰掛け、机の方向を手探りで探し,なんとか一息つくことができた。

「では、何を書きましょうか。貴方は、何を書きたいですか?」

男の声が降って来る。

「…私,目が見えないので…上手に筆を動かせるか自信がないんです。」

なるほど,と小さく声を漏らして男は何やらいそいそと何かを持ってきたらしい。

「では、貴方にはこちらの画材がおすすめですよ.これなら自分に自信のない貴方でも、自分に自信がつけられるでしょう。ズバリ!アクリル絵の具です。」

彼が持ってきたのは、アクリル絵の具だった。

私はふと蘇る…弟が金賞を取った時の絵の画材も、確か、アクリル絵の具だったな…。

「アクリル絵の具。お嫌いですか?」

「い、いえ、す,少し…嫌なものを思い出しただけです。お気遣いありがとうございます。」

「アクリル絵の具は、水彩絵具と違って、固まりやすく、固形のまま固めたらそのまま水に溶けないという性質がありますよね。なら、そのアクリル絵の具なら,貴方が手で手探れば、何をどこに書けばいいのか一目でわかるということでしょ?」

「手の感覚で、ボコボコの絵を描くということということですか?」

「ええ。目が見えないのは絵において欠点ではありません。絵に向き合わない。それが絵にとっていちばんの欠点であると僕は思いますよ。」

笑っているのか、顔は読み取れないけど、

私は筆の場所を探し,持ち、絵の具を握った。

パレットの場所もよくわからなかったが、ここです。と男が丁寧に教えてくれて、これは何色。これは何色。と教えてくれた。

画用紙を触る。

もう何ヶ月も触っていなかった画用紙の感覚。不思議と手に馴染む。ざらざらとした質感と、紙の網目まで、手で取るように触る。

ここら辺が真ん中だな。と予想で感覚で絵の具を置く。男によればこれは黄色だそうだ。

私は黄色を画用紙全体に塗る。

塗り終えたところで、男が声をかけてくれた。

「ドライヤーをかけてもいいですか?」

私はこくりと頷いた。

アクリル絵の具はドライヤーで乾かした方が、

早く乾く。

そして乾いたことを男に教えてもらったら,また私は紙全体をよく手で触る。

塗ったところは、さっきの画用紙だけの時とは違い、少しすべすべとしている。

だがよく触るとムラがあり、まだ画用紙のざらざらが残っているところがある。

私はその上からオレンジ色と茶色を半分くらいで混ぜたであろう絵の具を筆を立てるように、描きながら真ん中に置いていく。するとアクリル絵の具ならではにぼこぼことする。

とんがった突起がそのまま固まるのだ。

またドライヤーをしてもらい、私は,次にその上から黒色の絵の具でまたそこに重ねた。

それをまた乾かす。ぼこぼことしている場所から数センチ離れているところに私は緑色の絵の具を置く。そしてギザギザと描いていく。

私が書いているのはひまわりだ。

頭の中で想像し、書いている。目を開いて確認することはできない。でも自分の描いたものを信じてただひたすらに筆を振るう。

「……ひまわり…ですか?」

「あ、…」

絵に集中すると周りが見えなくなる…つい悪い癖だ。男の人が心配そうにこちらをみて来る様子を想像する。声色と吐息の感じからそんな感じがする。顔色ってこんなに想像するのが難しいんだ。

「ひまわり。みたことあるんですね。とてもお上手です。」

「いえいえそんな…、」

「貴方…やはり、元々目が見えないわけではないのですか?」

「……まあ、はい。」

見ず知らずの人になぜ私は律儀に自分のことを教えているのだろうか。

時々思う。自分って自分のこと大切にしてないなって。人の秘密をバラすのは気が引けるのに

自分の秘密はどれだけ出されてもなんら感じない。そんなもんかとなってしまう。

「そうですか…そうだ!また今度ここにきませんか?」

「っ、はぁ!?え、」

つい大声が出てしまう。

この男は何を言っているのだろうか。

「いやぁ、最初見かけた時は、人生終わったみたいな顔してたので、なんとなーく声をかけたんですけど、あなたのその、筆を振る姿を見ると、もっと絵を描いてて欲しいなって思ったんですよ。」

「え、」

そのことばに息が詰まる。

絵を描いてる姿って、どんな姿?

「私,どんなふうに絵を描いていましたか?」

「え?、そりゃぁ,とびっきりの笑顔でしたよ」

私は、ハッとした。

自分の見えないところで私は笑っていたのか。

恨もうと決めた絵を。

私の亡くなった才能を。

頬を温かい雫が伝うのを感じた。

私,絵のこと嫌いになってなかったんだ。

絵のこと楽しいって思えたんだ。

目が見えないせいで絵を描けないと思っていた。決めつけていた私に、ふわりと風が吹くように、花がタネを風に乗せて運ぶように、そんな辛い気持ちは消えていった。

「…、私,明日もう一度来ても良いですか?」

「ええ、どうぞ。この絵画教室にまた新しい仲間が増えることを願っています。」

男の人は、ふふッと声を漏らした。

「楽しむ準備はできましたか?」

そう言われた気がした。

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