七話.赤き髪を探して【レイ(セレスタ)視点】
任務は、街区の警備と巡回。
外見は平静を装っていたが、内心は騒がしいままだった。
昨夜のあの一言――「貴様、私の伴侶にならんか?」
女王の赤い瞳が思い浮かぶたび、胸の奥に火種のようなざわめきが生まれる。
(忘れろ。いつも通りに、騎士の務めに集中しろ)
歩いていると、ふと目の前を通り過ぎた赤髪の青年に視線が吸い寄せられた。
年も背丈も、あの頃の“少年”に似ていた。
(……まさか)
一瞬、鼓動が跳ねる。
けれどその耳元にはイヤリングの影はなかった。
失望したわけじゃない。慣れている。何百回と繰り返してきたことだ。
それでも、どこか胸が冷える。
(あの人は、どこにいるんだろう)
私は歩みながら、前を見据える。
それでも街角を曲がるたび、私は誰かを探すように目を走らせる癖が、抜けなかった。
どうしても視界に入るすべての“赤”が彼女の姿に重なる。
街行く人々も。
巡回中の騎士たちも。
燃えるような赤髪――イグニス王国の民の証。
その色が街中に満ちているほどに、私はかき乱され、女王が治めるこの国の広さを思い知る。
(あの背中が守っている国。……私はその背中を、守りたい)
不意にこみ上げた思いを振り払うように、声をかける。
「ここは私が見る。控えとけよカイル」
「はいはい。肩の力抜けよ」
と、カイルはやれやれと肩をすくめ、一輪のルミナリアで手遊びしながらついていく。
石畳の道に馬の蹄が混じり、商人の声が飛び交い、子どもが走り回る。
穏やかな日常。
これを守るのが、自分の務め――そう思っていた、はずだった。
しばらくするとカイルの愚痴が始まった。
「いやー、歩くの早い~疲れたあ」
「なにいってるんだ……」
カイルを振り向く。
いつもなのだがめんどくさいことこの上ない。
しかし、そのおかげで陛下への思いが和らぐ気がした。
「警備は“見せる”ものでもある。だらけて見えるのは問題だ」
「……へえへえ」