①
「・・・これより大罪人クレア・ルーシェの処刑を始める。」
重苦しい空気の中、ある公爵令嬢の処刑が始まろうとしていた
緊張のあまり手の震えが止まらなくなる処刑人
「・・・私が言うのも何だけど、その、どんまい。」
そんな彼に声をかけたのは
これから処刑される公爵家令嬢クレア・ルーシェその人だった
「俺、どうなるんだ。」
恐怖で涙を流す処刑人
本来ならばこの状況で涙を流すのはクレアのはずなのだが・・・
(気の毒になぁ)
(というか、まだ続けるのかこれ?)
(お偉いさんももう諦めたらいいのにねえ)
(本当・・・というか、これ何度目の処刑?)
見物に来た群衆も哀れむような視線を処刑人に送っていた
~数か月前~
「あの、私はいつまでこの体勢でいればいいんですか?
結構腰にくるんですが。」
「・・・一体どうなってるんだ?」
初めての処刑はギロチンだった
次期皇后である妹を亡き者にした罪と、クレアの近くで不審な死を遂げた者たちへの殺人容疑
全て身に覚えのないことであったが、残念ながら自分と無関係ではないとは言えないことも事実
「私が指示したことじゃないですが、私が原因で死んだかもしれないので罪は受け入れます。」
クレアは逃げも隠れもせず、すべての罪を受け入れた
こうして元公爵令嬢クレアは大罪人としてギロチンにより命を散らす、はずだった
「ギロチンが引っかかるって・・・ありえるのか?」
「でも実際に落ちてこないぞ、どうなってんだ。」
処刑人達がどんなに刃を落とそうとしても、刃はびくともせず
その場にいた全員が首をかしげ、途方に暮れていると
《バキッ》
ギロチンはなぜか柱が折れてしまい、クレアにヤジを飛ばしていた男の直撃し死亡するという
普通ならありえない事態になってしまった
当然だが処刑は延期に
その後、ギロチンを新調するのにも時間がかかると言うことで絞首刑を行うことになったが
「痛っ!」
床下が開くと同時に紐がちぎれてしまい、クレアは尻もちをついたものの当然命に別条はない
「なぜだ?千切れる筈がないのに。」
「見た目によらずこいつ重いのか?」
「失礼な、平均的よ。」
その後も縄を用意するが、何度も紐がちぎれるわ、挙句の果てに床板が開かなくなってしまい、
原因究明のために処刑はまたもや延期となった
この時点でも周囲は何かがおかしいと思い始めたが、一度決まった刑はそう簡単には覆らず
他の方法も試された・・・が、
毒殺刑→毒を運んでいた処刑人が突然の心臓発作×3
翌日に延期になるも、毒を保存していた倉庫が原因不明の火災により焼失
火刑→突風により、火をつけようとしていた処刑人が丸焦げになり死亡
それならと防火服を着させるが、クレアの周辺のみに集中豪雨
溺死刑→川に落とすも体に巻かれていた紐が千切れ、岸へと普通に流される
それなら濁流にのませようとするが、それでも無傷で岸へと流れつく
斬首刑→上空にいた鳥が落とした亀が頭を直撃し、処刑人が死亡
石打ち刑→石が一つも当たらず投石していた処刑人達が疲れただけで終わり
生き埋め→穴を掘っても温泉を掘り当てるは死体やらが出てくるはで穴を掘る事すらできなかった
そのため、今回もどうせ失敗するだろう
誰もがそう思った
そして・・・その通りになった
「がーーーーー!」
今回は処刑人が鎖を使い首を絞めるというシンプルな処刑方であった
緊張のあまり力を入れすぎたのか、はたまた別の理由なのかは不明であるが
結果、処刑人は筋肉を裂傷させてのたうち回るという結果で終わった
「おい!大丈夫か!」
そして、いつの間にかスタンバイしていた医師達により病院へ
「やっぱり用意してもらってよかった。」
「「「うんうん。」」」
クレアの言葉に群衆達も頷くしかなかった
こうして誰もが想像した通り今回の処刑も失敗で終わったのであった