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黄昏に舞う戦乙女  作者: テラン
天を見上げる戦乙女
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第4話




 100人の傭兵を青年中隊長との待ち合わせ場所へと向かわせた後、まだ領軍のはぐれ兵との合流と再編に時間が掛かるというので、まだ確保出来そうな傭兵を捜しつつ偵察を言い渡された。


 セレン達の居る周辺一帯からはもう戦闘の音はしない。

 戦力集めに出て見通しの良い平地や丘はあらかた見て回ったので、これから向かうのは敵本陣があると思われる北の方角に広がる針葉樹林周辺である。

 友軍からの伝達によれば森へ通じる街道の先が現在の激戦地らしい。


「ベテルギウス、どっちがいいかな? そっかあっちかぁ。ほら、アンタ達もしっかり付いてきなさい!」


 四人の騎士達は足取り軽くグングン進んでいく彼女の後を追いかけていた。

 しかも行き先は乗っている戦馬の反応を見て適当に決めているようにしか見えない。

 セレンは林に囲まれた凸凹の道を進んでいく。


「ちっ!」


 槍を引き抜いた直後、木々の向こうから矢を射掛けられた。

 放たれた矢を右手で持った槍で弾き落とし、踵を返して木立ちがまばらな林の中へと突っ込んでいく。


「こっち狙ってんじゃあ…」


 弓で狙い撃たれないように戦馬を駆り、何度も方向転換しながら木々を避けてジグザグに走り、予備の短槍を空いてる左手で抜いて投擲した。


「…ねえよッ!」


 弓の射線をズラしながら、進行方向上の地形を見通して左手に新たな短槍を構えて走る。

 前方には敵部隊から別行動をとっていたと思われる10人くらいの分隊。


「鈍い! ザコはザコらしく身を潜めて震えてろよッ!」


 先ほど放った短槍は兵士一人の胸を正確に貫いており、隊列は崩されていた。

 突如として森に吹き荒れた暴風が如く!

 セレンは潜伏していた敵兵を見抜いて容赦なく首を槍で貫き、起き上がり抜剣した兵士を返す槍で仕留めて、振り回した石突きで弓兵の弓に引っ掛けて落とさせる。


「馬鹿なの? 何で逃げずにアタシらに仕掛けてんのさ。馬鹿は死ねよッ!」


 立ち直らせる暇を与えず、木々に当たらないように二本の槍を振り回して次々と敵兵を刺し貫きつつ、石突きで地面を抉り土砂を飛ばして、怯んだ剣兵を横目に弓兵二人を仕留めていく。

 馬上から短槍を投げつけ、右手の槍の持ち手を替えながら、まるで伸び縮みするかのように広い範囲を攻撃して、隙を見せた者から順番に刈り取る。

 本来ならば騎馬や槍が不得手とする森の中で、まるで障害にならないとばかりに縦横無尽に敵部隊をかき回していった。


「弱っ! 人数が多ければどうにかなるとか思ったわけ? なんでよ、こんなに弱いのにッ!」


 隊長格と思われる敵兵へと槍に力を込めて串刺しにして手放し、馬から降りて最初に投擲した短槍を掴んで引き抜き、敵兵の残りに向き直る。


「援護します!」


 そこへ遅ればせながら到着した騎士達が退路を塞ぐようにして現れ、残りの三人は大した抵抗も出来ずに捕縛されていく。

 セレンはそれを一瞥してから視線を外し、自分の槍を死体から引き抜いて血を拭いながら周囲に注意を向けた。


「遅い。これからシメってところに来て何が援護よ」

「それは申し訳ない。しかし全滅させられては情報を聞き出せないので」


 セレンは一瞬だけ何か考えてすぐにやめた。


「そんなの皆殺しにした後で生きてる奴に聞けばいいじゃない」

「そんな無茶苦茶な…」


 騎士達の言葉は聞き流しながら印章を取り出して死体に印を付けていく。


「…何か変だと思わない?」

「何か、とは」


 違和感に気が付いたセレンは周囲を見渡して敵部隊の残した痕跡を調べる。

 森に親しんでいない者の痕跡を探すのは容易で、少し進んだ先でそれを見付け出した。


「こいつらが仕掛けてきたのは、コレを守るためだったみたいね」


 近くの岩陰に回り込んで手招きする。


「これは、何だ? いや、まずは中隊長へ報告しなければ…」


 そこには見るからに厳重な封をされた一抱えほどある壷が横たわっていた。


「傭兵長殿、こいつら毒を飲んでます!」

「あァ? 傭兵長って誰だ! …ん、アタシのことか!」


 どうやらそういう事になっているらしい。





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