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黄昏に舞う戦乙女  作者: テラン
天を見上げる戦乙女
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第28話




 岩山での決闘を見届けてから、セレン達はまだ他の傭兵部隊や中隊が戦っているであろう西側へと進路をとっていた。

 その道すがら今後の展開に考えを巡らす。


「これで戦争もお終いか〜…」

「へえ、てっきりセレン嬢は戦争をもっと続けたいのかと思ってたよ」


 セレンの呟きにアマンダが意外そうに返す。


「馬鹿言わないでよ。アタシがしたかったのは金稼ぎであって戦争じゃねえの! 戦争なんてロクなもんじゃないし、無いに越したことはないでしょ」

「急にしおらしくなりやがって。でもまあ、戦争なんざロクなもんじゃねえのは同意さ。傭兵としちゃあ、おまんまの食い上げだけどねえ」

「自分は戦争なんてもう当分いいっスよ〜」


 彼女達は戦いで食い扶持を稼ぐ傭兵だが、それはあくまでも仕事であり、仕事を抜きにすれば戦争とは無縁で平和に暮らしていたい一人の人間でもある。


「あー、目標額には届かなかったけど十分稼いだし、これでめでたしめでたし」

「あっちこっちに死体の山築いといてよく言うよ!」


 セレンからしてみれば、それはそれこれはこれ。

 戦争で死体の山を築けるのはセレンが優れた傭兵だからであり仕事に対して正当な報酬を求めるのは当然の事で、戦争が嫌いで早く終わって欲しいと考えるのとは別問題である。


「さーて、じゃあ残りもサクッと殺るか〜」

「レニも、レイチェル達と合流したらもうひと稼ぎするよ!」

「え、でも戦争はもうお終いってさっき言ってたっスよね?」


 そう言って二人はグルグルと腕を回したり、首をひねったり腰を捻ったりと準備運動を始めた。


「あァ? お偉いさんが終戦宣言するまでが戦争でしょ。まだまだ何処もかしこも殺し合いの真っ最中だっての!」

「そうさ、うちらは傭兵。上が終わりって言うまで戦わないとお仕事としちゃあ不十分だろう?」

「あわわ、不完全燃焼の【名前付(ネームド)】二人が怖い笑顔浮かべてるっス〜」


 そう、戦争は終わっていない。

 戦争の決着は明らかであっても現場の雇われ者が勝手に判断して手を休めて良い物ではないのだ。


「誰も彼も狩ろうってんじゃねえし。まだ続けたい奴だけ、今の内に殺っちまおう。どうせ生かしておいてもロクな事になんねえし」

「ま、そういう奴なら遠慮は要らねえな!」


 一番の大物を取られた二人はそう言って凶悪な表情を浮かべる。

 戦争が終わっていないのなら当然ながら成果報酬も有効ということだ。




◇◆◇




 西側の戦域へと戻る途中。

 セレン達はアマンダ傭兵団の残りのメンバーとの合流を目指していた。

 アマンダ達もまた、先の【名前付(ネームド)】の情報が正確であるかどうかの確信を得る為に先行して別行動を取っていたらしい。

 その合流地点へ向かう道中。


「ひっ! ぜ、前方に猛犬多数っス!」

「よーしセレン嬢、ひとまずアレを蹴散らすよ!」


 偵察した際に本陣で見掛けた猟犬達に発見され、一声吠えると一気に集まりだしたのだ。


「え、犬殺すの嫌なんだけど?」

「はあ?! あんだけ人殺しといてよくそんな事言えるね!」


 さも当たり前みたいにセレンは猟犬の討伐を拒否した。


「人はいいのよ、殺しに来るし」

「アレも殺しに来てるだろ!」


 どう見ても獰猛な殺気にまみれた戦闘犬なのだが、気が進まないらしい。


「犬は殺してもお金にならないし」

「そいつは同意するが戦いは避けられねえよ!」


 そう、残念ながら犬には成果報酬の定めは無い。


「とにかく嫌なの。それに悪い犬と決まった訳じゃない。きっとモフれば通じ合えるわ」

「その博愛精神をちっとは人にも向けられないのかねえ!」

「なに言い争ってるんスか! あの猛犬お食事中を邪魔されてカンカンっスよ〜!」


 手をワキワキさせながらセレンは犬と戯れたがる。

 しかして当の戦闘犬は口元を血で濡らし、低い唸り声を上げていた。


「食事?」

「逃げ遅れた馬喰ってたみたいっス」


 よく見れば集まってきた戦闘犬達の居た場所には事切れた馬が横たわっている。


「…よし、殺そう。矢ちょうだい」

「え…? あ、どうぞっス」


 スッと目が据わり、弓を構えるセレン。

 突然の変わりようと冷ややかな声色にレニは面食らう。


「馬を殺す犬は悪い犬だ。死ね」

「よーしレニ、良くやった」

「え、え? セレン姐さんの基準が分からないっス…」


 躊躇なく正確に戦闘犬の眉間を射抜く。

 見事な腕前である。


「細かい事ァいいんだよ、さっさと片付けな!」

「自分近づくの無理っス、怖いっス!」


 レニは戦闘犬の殺気に腰が引けて交戦を拒否している間も、セレンは次々と仕留めていく。


「仕方ない子だねえ、だったら石でも投げてな!」

「了解っス〜」

「死ね、クソが! 腹が減ったなら馬じゃなくて人を襲えよッ!」


 無茶苦茶言いながら矢の続く限り射るセレン。

 戦闘犬もただやられるだけでなく、ジグザグに走りながら迫ってくるが、怒りで冷淡になったセレンの放つ矢の餌食になるばかりだった。


「セレン姐さんが理不尽な怒り方してるっス」

「そりゃいつも通りだろ」





◇◆◇





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