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モニカとアレクシスの対談①

前半は国王アレクシス、後半はモニカの一元視点となります。

 モニカと国王アレクシスは夕食会を一度辞し、近くの応接間へと移動する。

 二人で向き合うように椅子に腰掛け、国王はモニカの言葉を待つ。


「…………、……?」

 しかしいつまで経ってもモニカからは何も無く、ただ静かな時が過ぎる。


「あの……話……とは?」

 痺れを切らした国王から、この場が設けられた理由を問う。


 正直に答えるなら、アレクシスはモニカに叱られるものと思っていた。

 愚息の愚行は、父親であるアレクシスの責任でもある。


 しかし叱ろうとしているにしては、モニカの表情は少し暗い。

 第一、叱るのであればあの場で全員をまとめて叱りそうなものだ。


 宰相シャルルも、近衛騎士団長ジェラルドも、第二王子エイドリアンの暴挙を止めることができなかった点では、国王と大きく変わらない。


 ならば、なぜ自分だけが別室に誘われたのか。

 国王は分からなかった。


「……そう、だな。まずこれだけは、はっきり言っておく」

 国王に促されたことで、モニカはようやく口を開いた。


 国王は固唾を飲み、次の言葉に備える。

 あれだけの無礼の後では、決別の言葉でもおかしくはない。


 そう考えてから、改めて後悔が込み上げてくる。

 もっとエイドリアンを必死に抑え込むべきだったと。


 心の何処かで、モニカたちに甘えてしまっていた。

 赦してくれるだろうと。


 しかし、もし赦されなかったら。

 もし、もう二度と会えないとしたら。


 そう考えるだけど、情けないが涙が滲み出そうになる。

 年甲斐もなく、泣いてしまうかもしれない。


 彼女を困らせるだけだと分かっていても、堪えられる自信がない。

 今はただ、告げられる言葉を待つばかり。


「私たちがこの国から離れることはない。

 これからも、必要とあれば国のために尽力する」


 彼女の言葉を、一瞬では理解できなかった。

 理解が追いついた時、安心と喜びが国王に降りかかった。


 ――良かった

 ただそれだけで頭がいっぱいになった。


 愚息の無礼が赦されたとは考えないが、少なくともモニカたちはこれからもこの国にいてくれる、会ってくれる、力を貸してくれる。


 それだけで十分だ。

 一番欲しかった言葉だ。


 安堵に胸を撫で下ろし、滲み出そうだった涙も引く。

 アレクシスはようやく緩んだ表情をモニカに向けられた。




 モニカはどう切り出すべきか悩んでいたが、アレクシスに促されるがままに、ひとまず伝えるべきことを伝えた。


 この国を捨てるつもりはないこと。

 求められれば力を貸すこと。


 そう伝えるだけで、不安と緊張で押しつぶされそうだったアレクシスの表情が随分と晴れやかなものに変わり、彼の重圧を取り除けたと感じる。


 協力することをアレクシスに伝えたのは随分前のことだったから、忘れてしまっているか、あるいはそれだけ不安が強くなっていたのだろう。


 もちろん、魔族の領域に行け、などという無理難題には否を突きつけるが、アレクシスがそのような要求をしてくることはないと断定できる。


 アレクシスはモニカたちとの決別すら覚悟していたようだが、モニカにとってこの国、そして王族との決別は選択肢にはない。


 アレクシスがモニカに対して恩義を感じているように、モニカも歴代の王族、それに連なり自分たちを支えてくれた人々には感謝している。


 彼らの厚意を踏みにじるような真似は決してしない。

 でなければ、ここまで生活を整えてくれたかつての仲間に顔向けできない。


「ルーウェンが未来を願い、ランドルフが繋いできたこの国は私にとっても大切な場所だから、絶対に失わせたりはしない」


 強い意志を込めて、モニカはアレクシスに宣言する。

 それを、アレクシスは真剣な表情で受け止める。


「ルーウェン殿と、ランドルフ翁……ですね。

 あの方々のおかげで、今があると教えられました……」


 モニカたちの状況が開示されるにあたって、この二人の存在は切っても切れない立役者として伝えられているのだろう。


 ランドルフはアレクシスにとっては先祖であり、モニカたちが国を守り、王族が彼女たちを支える関係性を整えた人物でもある。


 ランドルフの尽力により、モニカたちの存在が悪用されることなく、また当時荒れていた王族や貴族の暴挙が正されたと言ってよい。


 モニカたちにとっては恩人であり、そしてかつて共に魔族侵攻に立ち向かった仲間でもある彼に報いる事は、疑問を挟む余地もない当然のことだった。


 それを改めてアレクシスに認識させることで、彼が抱いていた不安を取り除く。

 そうして始めて、この場を設けた意味ができる。


「さて、それでは本題です。

 すべてを話せとは言いません。話したいことだけ、話を聞きましょう」


 話題を切り替えるモニカ。

 この場を設けた理由は、アレクシスが胸に秘めた悩みを吐き出させること。


 モニカたちに対する不安とは別に、アレクシスは苦悩している。

 それが彼を足踏みさせ、第二王子に対する対応が後手に回っていると感じた。


 それを真っ向から指摘するより、自ら話させる。

 そうしないと、アレクシス自身の決断に繋がらない。


「……魔族侵攻が終結し市井が落ち着いた後、私は王位を退こうと考えています。

 ですが、どちらに王位を譲るのが良いか、迷っているのです」


 第一王子メイナードと第二王子エイドリアンのどちらが王位を継ぐのか。

 それが、国王アレクシスが抱える悩みだった。

合わせて追憶も一話だけですが更新いたします。

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