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モニカ復活

引き続きオリビアの一元視点となります。

 宰相が用意してくれたお茶や菓子に舌鼓を打つ。

 国王との会食の時間が決まるまではここで時間を潰す必要がある。


 魔族侵攻の終息が確定している以上、慌てて行動に移す事はない。

 各地の魔物は各地の駐在している兵士や冒険者が対応する。


 今後の予定を決めておくことも考えてはいる。

 エステルのこと、ウィルのこと、ルーウェンのこと。


 モニカにとっての優先事項はルーウェンのこと。

 そのためにウィルの協力を求めようとしているのだろう。


 ウィルへの連絡手段はサーシャが用意している。

 接触すること自体は容易だ。


 モニカがウィルとの事を考えているなら、今の長考はそれをいつにするかを検討しているのだろうが、妙に長く時間を掛けているは気になる。


 とはいえ、そこはモニカが主体となって決定するだろう。

 オリビアに口を挟むつもりもない。


「サーシャはこれからどうするの?」

 物言わぬモニカの事は置いておいて、菓子に夢中のサーシャに問う。


「私? ん~……研究室に戻って、お面の解析……とかかな?」

 ケーキを口に運んだフォークの咥えたまま上目で考え、答えるサーシャ。


 危険という理由で王国の研究所への提出を先送りにした髑髏の仮面。

 そこに刻まれた魔法文字を解析することで魔法技術の向上を図ることができる。


 サーシャが個人で所有している研究室の一つが王都にあるため、しばらくはそこに篭って魔法文字の研究を進めるのだろう。


「オリビアもしばらく王都に居るよね?」

「そうねぇ。騎士団の訓練とかも見ておきたいわね」


 サーシャと同様、王都に邸宅を構えるオリビアは、勇者として活動するまでは騎士団の訓練にも参加していた。


 勇者としての役目が終われば、またあの頃の日常に戻る。

 やや不穏な空気はあるが、今はゆっくりとこの休息を楽しむ。


「オリビア」

「――んぐッ!?」


 考え込んでいたモニカが突然顔を上げて話しかけてきた事に驚き、口に含んでいた菓子が行き場を失いかける。


 慌てて駆け寄ってくるサーシャと、口を噤み申し訳無さそうな表情をするモニカに見守られながら、どうにか品位を欠くことなく落ち着きを取り戻すオリビア。


「……ごめん」

「いいえッ。……それで、考えはまとまったの?」


 非常に間の悪いリーダーの復活。

 文句を言いたくもあるが、悪意がないのは分かっているので追及も出来ない。


「いや、そっちは全く。

 ただ登城することがあるなら、クリストファー殿下には注意したほうがいい」


 第一王子メイナードの第一子クリストファーに注意が必要。

 そんなモニカの主張に、オリビアは少し首を傾げる。


 もし先程の宰相との話を聞いていたのなら、むしろ注意すべきは第二王子エイドリアンか、占星術師のほうに思える。


 あの無邪気で、勇者など眼中にない子どもへ警戒が必要とは思えない。

 しかしまっすぐにこちらを見つめる彼女の目に迷いは感じられない。


「何か気になるの?」

 モニカの主張に対する裏付けが欲しい。


「少しの違和感だ。

 あのくらいの歳の子なら、勇者と聞けば目を輝かせそうなものを」


 占星術師がそうであるように、勇者は人族にとっては無視できない存在。

 好意にしろ反感にしろ、何かしらの感情を抱かずにはいられない。


 それが、まだ十にもなっていないはずのあの子からは感じ取れなかった。

 まるで意図的に感情を隠したかのように。


「確かにそうね……」

 クリストファーの行動を思い返し、オリビアも考え込む。


 真意を汲み取れない相手。

 それが敵なのか味方なのかすら分からない状況は非常に厄介だ。


 第二王子エイドリアンのように反抗的な態度であったり、占星術師のように憧れから熱弁を振るう行為が見られるのであれば、真意は分かりやすい。


 第二王子は勇者を戦力として、自分の理想を叶える道具に使おうとしている。

 占星術師は勇者を英雄として、自分の好奇心を満たすために会おうとしている。


 真意さえ分かっていれば、どう対応すればいいのか自ずとははっきりする。

 好意には丁寧に対応し、敵意には果敢に立ち向かうだけだ。


 しかしクリストファーは違う。

 勇者一行に対する感情がまるで読めなかった。


 国王のように好意的なのか、第二王子のように打算的なのか、ですらない。

 無関心というには視線が不自然で、興味を隠すにしては言動が幼い。


「確信はないが、見た目に惑わされない方が良い」

 そう言いつつも、モニカの目は警戒の色がかなり強い。


 あの短い時間で、それも謁見そっちのけで長考していたモニカに警戒心を抱かせるほどの違和感を醸すクリストファーという存在。


 これがただ単に子どもらしい突拍子もない行動ゆえの雰囲気であれば良いが、そうでないなら、成長の暁には骨が折れる存在になり得る。


「分かったわ」

 オリビアは強く頷き、クリストファーに対する警戒度を上げる。


 具体的に何に注意すればいいのかはっきりしないが、過度な接触はもちろん、なるべくなら姿を見られる事も最小限に留めた方が良いだろう。


 騎士団の訓練場や施設は王城の敷地内にある。

 オリビアが騎士団の訓練に顔を出すなら、遭遇の可能性はゼロではない。


 クリストファーが騎士団の訓練場に直接来るとは思えないが、遠目に見られて情報を探られるのは気持ちの良いものではない。


「それで、モニカはこれからどうするの?」

 考えがまとまらないとは言っていたが、少しくらいは方針を決めているだろう。


「……その事だけど」

 モニカは伏し目がちに方針を語りだす。

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