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仮面の魔王の誘い

魔王を攻撃して移動したモニカの様子です。


モニカ側の一元視点となります。

 魔王の攻撃を受け流しつつ、反撃を繰り返す神官モニカ。

 杖で強打するたびに、魔王は大きく後退を繰り返し、モニカの接近を待つ。


 僅かな違和感を覚えながらも、緩やかな曲がり道に沿って追う。

 ――まるで誘われているようだ


 そんな直感を裏付けため、辺りの地理を思い出す。

(そろそろ、あの広間との分かれ道……、そういうことか)




 洞窟に入ってから祭壇への道順はオリビアが正確に覚えていた。前回は分かれ道に行き止まり、合流を繰り返したにも関わらず、最短の道を示した。


 その道中には無理やり土の魔法で塞がれていた箇所もあったが、オリビアが示した道順を疑う理由はなく、壁を壊して突破した。


 そして洞窟を進み、件の分かれ道。

 祭壇があった広間への道か、奥に続く道か。


 魔族の気配は奥に続く道の方にある。

「祭壇は後回しだ」


 広間に足を踏み入れなければ、あの仮面の男、魔王は動かない。

 おそらくあの広間が、魔王にとって一番戦いやすい場所。




 その場所に誘導されている。

 少しずつ後退し、分かれ道に差し掛かったところでモニカを押し込むために。


 今の魔王は本気を出していない。

 あるいは、あの場所に行くことで本来の力を発揮できるのか。


 魔王から感じる威圧が、先日よりも弱いのはその所為(せい)か。

 背筋が凍るような、肌がひりつくような感覚はない。


 広間に入れば、どれほどの力を発揮してくるだろう。

(それでも、アレに及ぶとは思えないな……)


 魔王エステルを匿っていた老人ウィル。

 彼が保持し、解呪しようとしていた呪いの塊。


 アレに比べれば、この魔王や魔族の脅威は脅威ではなくなってしまう。

 なんせ、どうにかできると思える程度なのだから。


 どう戦えばいいか、どう対処すればいいか。

 考える余地が残されている。


 しかしあの呪いは違った。

 あの死の気配の、おそらく末端に触れただけで、死を実感した。


 生きることを諦めざるを得ない。

 死ぬことを受け入れざるを得ない。


 そんな絶対的な死の気配に対して、何ができるか思いつかなかった。

 そもそも対処のしようがあるのかすら疑わしい。


 あの恐怖というにはあまりにも生温い感覚を知ってしまっては、魔王の放つ威圧感など微笑ましく思えてしまう。


 今もこうして、モニカを祭壇のある広間の方へ誘導するように距離を保ち、モニカの攻撃を受けては少しずつ後退していく様は、実に健気だ。


 誘われるうちに、サーシャやオリビアとの距離もだいぶ開いた。

 あちらの戦いは始まったとしても、こちらには届かないだろう。


 後ろを気にする必要がない。

 なら、しておくべきことがある。


「……話は出来るか?」


 知りたい情報は魔族の方が持っている様子だった。

 魔王の方に確認したいのは、それとは別の事。


 魔王が着けている仮面。

 かつて王城を襲撃したエステルが着けていたものと同じもの。


 その内側に刻まれた魔法文字も同じであるなら、この魔王も彼女と同様に本来の気質からかけ離れた行動をさせられているだけなのかもしれない。


 エステルが人族の社会に打ち解けているように、この魔王も同じような平和な暮らしを望んでいるかもしれない。


 もしそれを望んでいて、仮面で捻じ曲げられているとしたら。

 エステルという前例を見てしまった以上、それを考えずにはいられない。


 今まで出会った魔王はそもそも会話に応じようとはしなかった。

 言葉を介していても、拒絶と侮蔑が込められた応答ばかり。


 この魔王も、過去の魔王たちと同じかもしれない。

 それでも、まずは会話が成立するかどうかを確認する。


「…………」


 魔王からの返答はない。

 顔全体を覆う仮面のせいで口元が見えず、話そうとしているかも分からない。


 ――砕くか

 仮面の強度はエステルのそれを砕いた時に判明している。


 ただ、砕いて裏面の魔法文字が読み取れなくなるのは勿体ない。

 サーシャが興味を示していた魔法文字は、応用できれば生活に利便性が増す。


 エステルの時はそうとは思わずに仮面を砕いてしまい、その破片も回収し損ねたが、無傷の現物が目の前にあるなら押さえておきたい。


 魔王の間合いに一歩踏み込む。

 間髪入れずに突き出される魔王の手を杖で弾き、さらに一歩踏み込む。


 迫りくるもう片手の追撃は躱して、魔王の仮面を鷲掴みにする。

 強い抵抗感に、仮面が魔王の顔に貼り付いていると悟る。


(接着剤か、それとも魔法によるものか。

 すぐには外せそうにないな)


 仮面を掴んだまま、魔王の頭を押し込み、そのまま地面に叩き付ける。

 頭を庇うことも受け身を取ることもせず、魔王は地面に押し込まれた。


「――――!」

 洞窟の奥から魔族の怒鳴り声が聞こえてくる。


 オリビアかサーシャか、何か怒りに触れることを言ったのだろうか。それとも思い通りにならない事で、癇癪(かんしゃく)でも起こしているのだろうか。


 あまり心配はしていないが、怒りに任せて出鱈目なことをし始めても危ない。

 こちらも早々にけりを付けて戻った方が良いだろう。


 下から振るわれる、闇の魔力が篭った手を避ける。

 モニカが後退したことで、魔王は体勢を立て直す。


(やはりこの程度では気を失ったりはしないか。

 なら、気を失うまで(なぐ)るまで)


 杖に魔力を込めなおす。

 聖属性の杖が神々しい淡い光を纏い、魔王を威圧する。


 相手が闇の魔力で魔力障害を狙ってくるなら、こちらも同じ手を使う。

 杖が帯びる光の魔力による魔力障害を、その頭に叩き込む。


(これだけは、魔法が効きにくい魔族が相手でも通用する。

 エステルは二度耐えたけど、お前は何度まで耐えられるかな?)

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