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魔族との戦い

 杖を構えたモニカは、杖に魔力を込める。

「“神聖領域サンクチュアリ”」


 モニカを中心とした聖なる空間を作り出す魔法。

 魔物や魔獣に限らず、魔族であっても不調を強制する。

 か弱い魔物であれば死に至る場合もある。


「なんだ、この弱々しい領域は」

 しかし、相手によっては十分な効果を与えることは出来ない。


 辟易とした様子の魔族は、モニカの“神聖領域”を、顔を顰めただけで破壊する。

 まるで効果がない。


「“魔法阻害束縛ディスターブ・バインド”」

 サーシャの魔法が魔族を捕らえる。


 通常の“束縛”に、魔法行使を妨害する効果を加えたサーシャの魔法。

 魔法が使えなければ、腕力のみで束縛の魔法を突破できなければ逃れられない。


「愚かしい、こんなもの」

 しかし、阻害できる魔法にも限度がある。

 “魔法疎外束縛”の許容以上の魔力を使われれば、魔法阻害を突破されてしまう。


 それでも魔族が“魔法疎外束縛”を破壊するための一瞬、“火の槍”の猛攻が止んだ。

 その隙を待っていた。


「“身体強化フィジカルリインフォースメント”」

 身体能力を強化し、オリビアの“魔法防御壁”を内側からすり抜けて前に出る。


 魔族が油断して近づいてきた分、距離は短い。

 固い地面に足跡が付くほど踏み締め、モニカが駆ける。


 一息に距離を詰め、頭目掛けて杖を突き出す。

 魔法戦闘に依存した魔族なら、この接近に対応できない。

 前回の魔王も、モニカの近接戦闘の前に沈んだ。


 しかし、この魔族は前回の魔王のようにはいかなかった。

「この程度なのか」


 “物理防御壁マテリアルシールド

 オリビアも使う防御魔法が、魔族の眼前で展開される。

 モニカの突きは容易く阻まれる。


 突進と突きを防がれ体勢を崩したモニカに蔑視を向けながら、魔族は追撃する。

 “火の槍(ファイアランス)


 回避以外に防御手段を持たないモニカは、至近距離で魔族の攻撃魔法をまともに受けた。

 “火の槍”の勢いに吹き飛ばされ、右上半身を黒焦げにされながら転がる。


 そんな絶望的な状態であっても、仲間であるオリビアもサーシャも動じない。

 そこにあるのは無関心でも諦めでもなく、信頼である。


「“治癒ヒール”、“属性治癒エレメントヒール”」

 致命傷を受けたはずのモニカは、自ら魔法で回復し、立ち上がる。


 そこには、先ほどの“火の槍”で受けた傷も火傷も、何も残っていはいない。

 後衛職の神官とは思えない細く引き締まった筋肉を剥き出したまま、杖を構えなおす。


 まるで何事もなかったかのようにこちらに向き直る神官を見る。

 “火の槍”は確かに直撃し、肉体を黒く炭化させた。

 それを、一瞬で治癒させてしまうほどの魔法、それを自身で行える冷静さ。


 モニカの攻撃自体は対応が容易いが、その胆力には魔族もさすがに舌を巻く。

 ――悪鬼の分際で、魔法の発動が早い。


 モニカは再度突進する。

 今度は防がれることを前提に、すぐに回避行動に移れる体勢を意識する。


 素早く“物理防御壁”が展開されるのであれば、一撃で決めることは出来ない。

 ならば数で攻め、崩した瞬間に強打する。


 決定打ではなく有効打を狙い、杖による打突を繰り返す。

 モニカの連続攻撃を、魔族は無駄なあがきだと冷ややかな目で見ながら“物理防御壁”で防ぎ続ける。


 同時に、オリビア、サーシャに向けての“火の槍”も続ける。

 モニカの相手をする分、先ほどより連射性に欠けるが、防御ばかりの勇者の足止めには十分だ。


 加えて、“魔法阻害束縛”、“束縛”を飛ばしてくるサーシャを睨む。

 使う魔法と強度が分かった以上、これらの魔法で動きを止めることは出来ない。

 一度目は隙を見せてしまったが、次からは瞬時に破壊できる。


 オリビアに守られている以上、魔族側の攻撃魔法は届かず、一方的に妨害魔法を受けるしかない。

 機会を窺っているのか、じっと見つめてくる視線が妙に気に入らない。


 しかし、ただそれだけ。

 魔族はモニカを始め、オリビア、サーシャを順に見やる。


 そして、口元に薄く冷笑を浮かべる。

 ――蛮勇の小娘、守りばかりの勇者、邪魔ばかりに小童。取るに足りん。


 誰一人、有効な攻撃手段を持っていない。

 魔族に対する最たる有効打であるはずの勇者は前にすら出てこない。

 ――この程度なら、今のうちに始末できるか。


 魔族は近接で攻めてくるモニカの杖を“物理防御壁”で防いだ瞬間、その防御壁ごとモニカを弾き飛ばして距離を開ける。

 そして手に魔力を集める。


 先程までの“火の槍”よりも破壊力のある魔法。

 近くにモニカがいる状況では使いにくい魔法。


 “爆破バースト

 火の魔法に類する、対象を爆発させる魔法。


 魔族が使おうとしている“爆破”は、洞窟を崩してしまうほどの威力ではない。

 しかし至近距離でまともに受ければ、人族の体なら弾け飛ぶ。

 回復する間もない即死。


 ――まずは一人目。

 魔力を集めた手の平をモニカに向ける。

 “物理防御壁”に弾き飛ばされ、体勢を崩した神官を狙い撃つ。


 魔族の手に集まる魔力を、モニカも感じ取った。

 これを受ければさすがに即死する。

 回復は間に合わない。


 モニカの回復魔法がいかに早くても、即死してしまっては使うことは出来ない。

 そして、死から回復する魔法はない。


 しかしモニカの目に諦めはない。

 当たれば死ぬのであれば、当たらなければ良い。


 モニカには信頼できる仲間がいる。

 彼女らが必ず何とかしてくれる。


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