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魔族との対面

設定変更(2025年3月28日)

【魔物や魔獣の素材】が魔力の代用にできる設定を、

【魔物や魔獣の素材】を精製することで出来あがる【魔結晶】が魔力の代用にできる設定に変更しました。

 背後から襲来する“火の槍”。

「“魔法防御壁マジックシールド”」

 サーシャの素早い察知に反応したオリビアは前方に“魔法防御壁”を発動し、被害を抑える。


 しかし、前回の魔王の攻撃をものともせずに受け止めた“魔法防御壁”は、たった一発の“火の槍”によってひび割れた。

 この事実は、襲撃者が前回の魔王よりも強い力を持っていることを三人に知らしめた。


 ひび割れた“魔法防御壁”に魔力を注ぎ修復する。

 このまま二発目が来れば、防ぎ切れずに余計な被害を受けてしまう。


 “火の槍”発射元を睨み付け、三人は臨戦態勢をとる。

 背後の不気味な祭壇のことは、近付かなければ問題ない、と警戒を解く。


 元来た通路の奥、オリビアの魔法の明かりが消えている。

 暗がりに戻った洞窟を見て、退路を断たれたように感じる。


 そこから響いてくる足跡。

 “火の槍”を放った襲撃者か。


「まったく、こんなところまで嗅ぎつけてくるとは」

 暗がりから聞こえてくる声に陰鬱な感情が込められている。


 その感情を苛立ちに変えてぶつけるように、“火の槍”が放たれる。

 暗がりが火の明るさで照らされ、微かに見える人の影。


 先ほどよりも大きい“火の槍”。

 奇襲が防がれたことで、魔法に込める魔力を強くしたのか。


 対応するように、既に展開している“魔法防御壁”に魔力を追加して受け止める。

 そうしてもなお、先ほどよりも大きくひび割れた。


「“魔法解除キャンセレーション”」

 発動した魔法を解除するサーシャの魔法。

 オリビアの防御魔法を削る“火の槍”を掻き消した。


 “火の槍(ファイアランス)

 攻撃を凌いだのも束の間、一息つく間もなく、もう一本“火の槍”が襲い来る。


 “魔法防御壁”に魔力を注ぐも修復が間に合わない。

 限界を迎えた“魔法防御壁”が砕け散る。


 “魔法防御壁”を突破した“火の槍”を、オリビアは盾で受け止める。

 盾自体にもある程度の魔法防御性能が備わっているが、“魔法防御壁”ほどではない。


「くっ……ぅっ……」

 歯噛みするオリビアは盾の向きを逸らし、“火の槍”は進行を変えて壁に衝突した。


 ロックイーターの分泌液で表面が固められているとはいえ、強い衝撃を受ければ剥がれ落ちる。

 衝突により土埃が立ち込めた。


「“風の槍(ウインドランス)”」

 その土埃を払うように、モニカが風を槍に変えて放つ。

 “風の槍”が土埃を吹き飛ばしながら、微かに見えた襲撃者の影を狙う。


 しかし“風の槍”は襲撃者に直撃する前にかき消えてしまう。

 “魔法防御壁”に阻まれたか、あるいは直接的に消されてしまったのか。


「所詮は悪鬼の魔法、この程度か」

 侮蔑を含んだ声音はまた一つ近付いている。

 “火の槍”を放ち、“風の槍”を防ぎながらも、こちらへの歩みを止めていない。


 こちらの攻撃魔法がまるで通用しない襲撃者に、一層警戒を強める。

 そして、まだ消えていない魔法の明かりにより、近付いてきた者の姿が明るみに出た。


 ローブをまとった長身の男。

 その風貌は人族のそれと見分けはつかないが、三人にははっきりと分かった。

 ――魔族だ。


 北の山脈の向こう側から来る、人族の領域を狙う侵略者。

 無慈悲に強力な魔法を行使するその者たちを、人族は魔族と呼んだ。


 魔族の姿は人族とまるで同じである。

 魔族が人族に紛れ込めば、そうそう気付かれることがない程に。


 違いがあるとすれば、保有している魔力の量。

 人族が決して持ち得ない膨大な量の魔力。


 そしてもう一つ。

 詠唱も発声も必要としない魔法の行使。


 人族が魔法を行使する際、詠唱し魔法名を発声するのに対し、魔族はどちらも必要としない。

 呼吸を自然に行うように、魔族は魔法を使用する。

 そのため、魔法の発動が人族よりも遥かに速い。


 注意深く魔力の変化を察知し続けなければ、魔族の魔法には対応できない。

 それを魔族の周囲の状況、所作から感じ取らなければならない。


 魔族の目がオリビアを捉える。

 魔族にとって、警戒すべきは勇者。

 オリビアの風体は最も勇者に近い。


「勇者の防御は見事だと言っておこう。一度とはいえ、私の魔法を防いでみせたのだから」

 魔族はオリビアを勇者と見定め、称賛を口にする。


 しかし、その目には侮蔑しか含まれていない。

 こちらを侮り、下に見ている。


 今の応酬で、魔族は三人を値踏みした。

 そして判定した。

 ――取るに足らない。


 遠距離での魔法攻撃を主力とする魔族が堂々と姿を現したことからも、その侮りが判る。

 この距離であっても、自分の優勢は揺るがない、と。


 魔族の周囲の魔力が動く。

 それは、注視しているからこそ察知できた僅かな変化。


「これならどうか」

「“魔法防御壁マジックシールド”」

 魔族の言葉に重なる早さでオリビアは魔法を行使する。


 一瞬遅れて投擲される“火の槍”、それは一本に留まらない。

 一本投擲されれば次が装填されるように、連続して放たれる“火の槍”。


 オリビアの表情が引き締まり、ありったけの魔力を“魔法防御壁”に注ぎ込む。

 先程の同じ轍は踏まない。


 連続で来ることが分かっているなら、魔力を注ぎ続け、途切れることなく修復し続けるまで。

 そうしなければ、魔族の“火の槍”は防げない。


 オリビアの“魔法防御壁”が弱いのではない。

 魔族の“火の槍”が強力なのである。

 連続して放たれる“火の槍”を受け切るには、相応の魔力を“魔法防御壁”に費やす必要がある。


 “火の槍”を一本受けるたびに、“魔法防御壁”を構成する魔力が削られる。

 欠落した魔力を補うオリビアにとって、それは自身がゴリゴリと削られているに等しい。


 どんなにオリビアの魔力量が人族の平均を遥かに上回り、高効率で“魔法防御壁”を使う技量を持っているとしても、魔族より先に魔力切れになるのは確実。

 “火の槍”を受けるオリビアの後ろで、モニカが手持ち袋から布袋を取り出す。


 ここに辿り着くまでに倒したロックウルフから回収した素材、そして砦に戻った時に仕入れた素材。

 それらを精製して用意した魔結晶を布袋に入れておいた。

 魔結晶は魔力の代用として使うことが出来る。


 オリビアはそれを受け取り、“魔法防御壁”の持続に費やす。

 しかし、それで状況は好転しない。


「モニカ、このままでは……」

「分かっている」


 正直なところ、目の前の魔族よりも後ろの祭壇の方が気掛かりでならない。

 しかし、防戦一方も気分が良くない。


「サーシャ、行けるな」

「うん」

 モニカの呼びかけに、サーシャは力強く頷く。


「打って出る」

 余計な荷物は置き、杖を握り直し、モニカは攻勢に出る。

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