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中央ルートから西側ルートにて

 中央の侵攻ルートには兆候は見られなかった。

 第一砦まで足を運び、その先にも進んでみたものの、魔物の氾濫はない。


 いくつか魔物の痕跡は見られたものの、それらは普段の彼らの営みから逸脱するようなものとは思えない。

 魔物の異常行動、増加、あるいは本来この場所に生息していない魔物の痕跡があれば、それは侵攻の兆候となる。


 しばらく捜索し、先に捜索していた冒険者のパーティとも情報交換をする。

 彼らも魔物の異常は感じていないようだ。


 中央ルートの第一砦の先は彼らに任せて、モニカたちは第一砦へと戻る。

 第一砦の代表に、問題がないことを報告する。


 中央ルートの第一砦、第二砦、城塞都市の防衛体制にも問題はない。

 兵士の練度、腕利きの冒険者の配置、防衛設備の整備、備蓄食料に余念はない。


 モニカたちは引き続きの監視を任せ、西側の城塞都市へと移動した。

 その西側のルートで、問題が起きていた。


「冒険者が無断で進入した?」

 西の城塞都市の市長に挨拶を済ませ、第二砦に到着した時、第一砦から第二砦へ連絡が入っていた。


 到着したばかりのモニカたちは、第二砦の代表から報告を受ける。

「どうやら、第一砦にいた冒険者が数名、無断で先に進んでしまったようで」


 魔族侵攻の予兆が国中で発生している今、魔族の侵攻元となる北の山脈、とりわけ第一砦の先には、許可の下りた冒険者しか進ませていない。

 許可の下りる冒険者は、実績を積み、相応の実力を持つ者のみである。


 今回先に進んだ冒険者はまだ実績が少なく、先に進むには危険と判断された冒険者たちだ。

「功を焦ったか」


 より危険で強い魔物を討伐し、その素材を持ち帰れば、それだけ冒険者としての評価に繋がる。

 また、その素材でより強い装備を整えることにより、さらなる高みを目指すことが出来る。


 危険を冒してでも成し遂げたい目標があるのであれば、誰にも阻むことはできない。

 それが成し遂げられたのであれば、それは立派な功績である。


 今回の場合、魔族侵攻の兆候、つまり魔物の異常行動などの痕跡を見つけることが出来れば、魔族侵攻のルートが判る。

 侵攻ルートが判れば、防衛の戦力集中、後方の町や村の住民の避難なども迅速に行える。


 過去には中央、東、西の全てのルートから同時に侵攻してきたこともあるが、歴史書ではおよそ千二百年も昔に一度きりの事。

 可能性の高い侵攻ルートが判るだけでも、十分な功績といえる。


 だからこそ、許可の下りた冒険者は第一砦よりも先に進む。

 痕跡を見つけることは防衛力の向上、国民の安全に繋がり、功績となるからだ。


 但し、その行いが功績となるのは、認められた範囲での活動である場合に限る。

 たとえ偉業であっても、無断で行った活動が得られる評価は良いものではない。


 ましてや、今は魔族侵攻という有事である。

 砦にいるということは、国に雇われ配備された冒険者であり、砦での役割が与えられているはずである。


 有事の際の冒険者の役割は、魔物の討伐だけではない。

 物資の搬送、またはその護衛。前線で戦うことが許可された冒険者のサポートなども含まれる。


 その役割を放棄し、勝手な行動をすれば、処罰は避けられない。

 但しそれは、この先から生きて戻ってきた場合である。


 侵攻ルートになっている場合、第一砦よりも先はずっと危険な場所になる。

 許可が下りないような未熟な冒険者たちが、その先に発生する魔物とまともに戦えるかも怪しい。

 最悪の場合、全滅することも容易に想像できてしまう。


 砦は、魔族、魔物の侵攻を阻む防衛拠点であると同時に、危険な場所に未熟な冒険者を行かせないための関所でもある。

 冒険者は大事な戦力であり、未来を繋ぐ人材でもある。


 兵士は拠点で防衛し、冒険者は自由に移動し敵拠点を叩く。

 この関係で国中を守っている。


 しかし、頭ではこの関係を理解していても、衝動を抑えきれない者もいる。

 自分はもっと出来るはず、先に進めるはずだと。

 今回無断で先に進んだ冒険者たちは、まさにこのケースである。


「急ごう。もしここが今回の侵攻ルートだとすれば、強い魔物がいるかもしれない」

 第二砦の代表への挨拶もそこそこに、モニカたちは第二砦を発つ。


 今から移動を開始すれば、野営することにはなるが明日の朝には第一砦に到着できる。

 “空間転移”が使えない状況が、実にもどかしい。


「冒険者たち、無事だといいね」

 歩みを進めながら、サーシャは先頭を行くモニカに話しかける。


「そうだな。次代を担う若者を生かさなければ、私たちもおいそれと引退できない」

 やれやれ、と嘆息するモニカに、オリビアは小さく笑う。


「私たちも見た目だけなら若者なのにねぇ。すっかり思考がおばあちゃん……」

 オリビアの発言に対して、モニカ、サーシャは沈黙を貫きながら、歩みを早めた。


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