1.変身
俺は相澤 新一。無職だが、金はある。そのため、働く必要はない。
その日、散歩をしていた俺は、閑静な住宅街で露店を見かけた。
「お客さん、異性化薬はいかがかね?」
「あ?」
「異性化薬じゃよ」
露店の老婆が、ピンクの液体が入った瓶を渡してくる。
「今ならたったの百円。お客さんに譲るさね」
「異性化薬って?」
「飲んでのお楽しみじゃよ」
興味本位で俺は薬を買い取った。
「それを飲めばお主は……ニヒヒ」
老婆は不敵に微笑んだ。
俺は家に帰り、薬を飲んだ。
が、何も起きなかった。
今日はもう遅い。
俺はベッドにダイブすると、そのまま眠りに就いた。
翌朝、俺は眼を覚ます。
「ん……はーあ……」
大きく伸びをし、体を起こした。
「ん?」
なんだ、この違和感?
俺はベッドから降りた。
洗面所へ行き、鏡を覗き込む。
と、そこには端正な顔立ちをした黒長髪の女性が映っていた。
「こ、これは!?」
女性の甲高い声。
俺は昨晩の薬のことを思い出した。
確か老婆が異性化薬って言ってた。そういうことだったのか。
俺は脱衣所に行き、服を脱いでみた。
どこからどう見ても、女の体だった。
「えーと……?」
どうすればいいのかわからない。
そもそもこれ、戻れるのか。
俺が元に戻ることを意識すると、その体は本来あるべき姿になる。
「戻った?」
女になるイメージをすると、その体は異性化する。
面白い。
俺はいったん、男に戻った。
お昼。
俺は近所のショッピングセンターに来ていた。
レディースの服を買うためだ。
俺は適当に数着、服を取って試着室に飛び込む。
鏡で確認しながら、女性の姿で服を着込む。
これでいいか。
俺は着替えると、服を手にレジへと向かう。
服を購入し、家へと帰宅してレディースに着替えた。
着替えたところで何をするわけでもなく。
「そうだ!」
俺は隣町の住宅街へ繰り出した。
古いアパートにやってくると、俺は一角に移動してチャイムを鳴らした。
「はーい」
男性が出てくる。
顔を出した男性は、誰なのか、と疑問符を浮かべた。
男性の名は、安藤 雄介。俺の旧友である。
こいつは彼女募集中だった。ちょっと夢を見させてやるかな。
「安藤 雄介さんですよね?」
「はい。……?」
「私、工藤 美幸です。恋人になりたいです」
「え!?」
驚き戸惑う雄介。
「ご迷惑でした?」
「い、いや。大歓迎だよ。でも、俺なんかじゃ釣り合わないんじゃ?」
「私には安藤さん……いえ、雄介さんしかいないんです。付き合ってもらえますか?」
何やってんだ俺?
「そう言ってもらえると嬉しいな。うん、いいよ」
彼女できてよかったな雄介。いや、彼氏か。