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カエ「ドヤァ」
ラビ「なにやってだお前?」
カエ「せっかく城を作ったんやから王様ごっこや」
カエ「どや?すごいイスやろ!」
カエ「特注品やで」
密偵「ちなみにこのイスだけでボクなら十年は遊んで暮らせます」
ラビ「ハァ…お前な…共和制の国で王様ごっこは自殺行為だぞ」
カエ「まあでも雰囲気が出て言いやろ」
ラビ「少しは自分の立場を考えろ、ホレ」
カエ「なんやその紙の束は?」
ラビ「元老院からの恋文だ」
カエ「なんや抗議文書かいな」
カエ「そんなもん燃やして暖を取るしか使い道ないやろ」
ラビ「ハァ…」
カエ「まあええ、密偵、報告を頼むで」
密偵「了解です」
密偵「我々ローマ軍は国境線の防衛に成功」
密偵「その後も国境に留まり続け、昨日全軍が合流しました」
カエ「うむ」
密偵「次に敵の動向ですが」
密偵「少し離れた場所で右往左往しています」
カエ「なんや、まだワイらに戦いを挑む気概があるんか?」
ラビ「いや、それはないだろう」
ラビ「万全な状態になった我々に戦いを挑むとは思えん」
ラビ「仮に攻めてきても迎撃は容易だ」
カエ「ほなら、なんで帰らんのや?」
カエ「三十万の大所帯やぞ、兵糧が持たんやろ?」
密偵「これは捕虜からの尋問から得た情報ですが」
密偵「彼らは故郷を焼いてきたようです」
カエ「は?なんでそこまでするんや」
ラビ「常軌を逸してる」
密偵「情報が錯そうしてまして…詳しいことは…」
密偵「ですが、彼らに帰る場所がないことは確かなようです」
ラビ「それだとまずいな」
カエ「なにがや?」
ラビ「食べ物がなくなると人間は必死になる」
カエ「そりゃそうや」
ラビ「さっきは迎撃は容易だと言ったが…」
カエ「死に物狂いの人間が押し寄せてきたら話は別やな」
密偵「それも三十万ですからね…」
小指で頭をカキカキ……
カエ「しゃーない食料を提供するか」
カエ「それで生活が安定するまで世話してやるか」
密偵「えっ、敵ですよ」
カエ「三十万の死兵を相手にするリスクを考えたらマシやろ」
カエ「それにこれがきっかけで友好が結べれば将来的には得や」
ラビ「だが、奴らが素直に応じるか」
カエ「そうやな…それに元老院とローマの民衆が納得するか…」
密偵「……なんだか戦うよりも面倒ですね」
カエ「政治なんてそんなもんやで」
カエ「ま、もうしばらく様子を見ようや」
参考、引用文献
ローマ人の物語 塩野七海
ガリア戦記 著ユリウス・カエサル 訳國原吉之助