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後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第2章 学院生活編
62/123

第五十九幕 実技試験 part1

久々ですみません。




何事も無く目が覚める。


夜が明けて間もなく、辺りはまだ薄暗い。


同居人を起こさないように静かに足音を消して中庭に出る。



僅かに照らす朝焼けだけを背に、独り剣を振るう。

一振一振を噛み締めるように、昨夜得た感覚を馴染ませる為に。

夢で見る程に眼の裏に焼き付く記憶を頼りにこの腕に、魂に刻む。


けれど幾度振るおうとも、その感覚が手に馴染むことは無い。寧ろ想えば想う程、手を伸ばせば伸ばす程に遠ざかっていく。


落胆と諦めが心に渡来する。けれど今は不思議とそれが心地良かった。

できない自分、脆弱なこの身なれど確かに届いた。その事実が矛盾するこの感情を生み出していた。



それに深く集中すると何故か身体の隅々まで魔力が満ちているのを感じる。なんなら全回復より二割増ぐらいの魔力がある気が...それこそ俺が発散した時に消費された分まで回復している。まあそれでも誰より少ないのだから悲しい。


テレジアのおかげだろうがどうやって他人の魔法力を回復させたのだろうか...見当もつかない。普通にとんでもない技術な気がするけどまあテレジアだしな。


とまあ気がつけば雑念だらけの素振りになっていた所で思考を切り替える。

今日は実技試験だ。昨日ですらブチギレてたのに今日の結果に耐えられるのか少しだけ自分が不安になる。今一度師匠たちの言葉を胸に刻み想いは奥底に秘める。


そっと剣を置き芝生の上で坐禅を組む。



俺が為すべきことを為せ。

観察しろ、あいつらを超えるために。


そこで思考を断ち切り深く瞑想に入る。

数少ない魔力を身体の隅々まで張り巡らせる。一縷も消費することなく丁寧に、且つ迅速に。

当たり前になっている日課でありレギの魔力操作の原点。



魔力を帯びて少しだけ敏感になった肌に朝焼けと一陣の風が触れる。その心地良さに頭が晴れていく。


昨日より今日、今日より明日へ。

敗北を引きずってはいけない。

けれど忘れてはならない。


割り切ろう。今日は知識を見聞を経て経験へと変えていこう。




_________


「ではこれより中間試験、実技を始める。今日は単純な魔法技能を測る。そして明日が実戦形式となる事を心得ておくように。それでは各担当の元に割り振られた順番で向かうように。」


アドミラル先生によって実技試験の開始が宣言される。

試験は主に2つ、至ってシンプルなものだ。


その1

試験課題として事前に通知されてた魔法を各属性の試験官の前で詠唱、発動するというもの。


主な観点は3つ。

発動に適切なマナを操作する魔法制御。指定された範囲、効果を適切に付与る魔力操作。そして最後は単純な威力だ。


今回課題となったのは基本六属性の初等魔法。若しくはその上位に位置する中等魔法。


ちなみに俺は課題の魔法を2つしか使えない。後は何も言うな。


その2


現時点で使える最高の魔法の発動。


こちらも観点は上に同じ。


だがこちらは俺にもチャンスがある。

ダメ元ではあるが仕込みもあるしな。



気がつけば先生の説明も終わり生徒達はそれぞれの試験官の元へ移動しつつあった。


正直0点が確定している時点でめちゃくちゃ気が重いが俺も割り振られた所へ向かうとしよう...。



__________



「試験官に任命されたが故の規則で噂程度しか耳にしていなかったのですが...実際目にしても49期生は素晴らしいですね。それでこそシリウス様とアルフェニス様達の世代を超えるのでは?」


「それには同感ですな。中等部の頃から名を馳せていた子達は別として平均レベルを見ても非常に高い水準を誇ると言ってもよいでしょう。私自ら指導したいと思える生徒も多い、何にせよ楽しみですな。」


試験官達は単純な魔法技能のみを評価する。

そのため前年度に複数人指名され先入観等を廃するべく試験当日まで入学する生徒個人の情報の一切を遮断される。


そうして担当の生徒を見終えた試験官達は交代要員が来るまで談笑を楽しむのだ。

次世代を担う子達に未来を馳せ、或いは若葉をこの手で大樹へと育てたいと願いながら。


コンコンとドアが鳴る。次の試験官が到着したようだ。




「お疲れ様です。後は僕らが引き継ぎますのでお気をつけてお帰りください。」


「何故俺がこんな面倒な事を。」


現れた2人の魔導士の姿に先の試験管達は談笑を止める。

自分達もある程度名の知れた魔導士ではあると自負はあるが現れた2人は格が違った。


「君たちは"黒鎖の紳士"と"白亜の暴光"!まさかこんなビッグネームとここで会えるとはね。」



「ははは...その名前恥ずかしいから苦手なんですよね.....。」


「そんなもんどうでもいい。んで?今年の奴らは使えんのか?」


ぽりぽりと頬を掻く白髪の男とその口調が示す通りに荒々しくソファーに腰掛ける黒髪褐色の男。ついた二つ名とは髪色が正反対の2人だが界隈では有名人であった。


「貴殿ら程の魔導士達の眼に止まる子が居るかは分からないが非常にレベルは高いと思いますぞ。」


年配の試験官がそう告げる。


「ふん、てめえらの眼が節穴じゃないかどうか俺が確かめてやるよ。」



「アランがすみません。ご意見参考にさせて頂きます。」


「この世界は魔法の才能が全て、実力に於いて後塵を拝する我らを敬う必要はありませぬぞ。」


それだけ言い残し先の試験官達は部屋を後にする。


「そうだぜエド、あのジジイの言う通りだ。てめえはつえーんだから堂々してりゃいいんだよ。」


「君の自信は美徳だが傲慢は僕の赦すところではないよアラン。」


「ちっ、この偽善者め。」


傍から見れば一触即発だが2人だけが知るいつも通りのやり取りだった。



「貴方達とは久しぶりなのに変わったのは実力だけね.....。」


すると空間を捻じ曲げ学院長ティアが姿を現す。懐かしいような、少し残念そうな表情だ。


「お久しぶりですティア様。」


「おいババア!いつになったらシリウスに挑ませ


言い切る前にアランは壁をぶち破って彼方まで吹き飛んでいった。僕は何も見ていない。

ため息と共に口を開く。


「はぁ...いつもうちのアランが迷惑を掛けますねティア様。」


「もう慣れたものよ。けれどアラン、また強くなってるわね。」


ティアは何事も無かったかのように平然と告げる。


「あれだけのやり取りで見抜かれるなんて流石ですね先生。」


「分かりやすいのよアランは。それに貴方もちゃんと成長してるみたいで安心したわ。身に纏う空気が違う、貴方達の要求を飲んだ甲斐があったということね。ちゃんと約束は覚えているかしら?」


「当然覚えていますよ。嫌がるアランを連れてくるのは苦労しましたが...。この5年、自由に世界を旅させてもらいました。次の5年は後進育成に努めましょう。」



"黒鎖の紳士" エドワルド・セタス

"白亜の暴光" アラン・レシア


現ギルドマスターの中でも最も若いシリウス、アルフェニス達の後輩であり所謂レギ達の先輩にあたる魔導士。


なお素晴らしい才能、実力を持ちながら2人とも超の着く問題児であったとされる。


曰く研究にのめり込むあまり規則を破り続け講義にも殆ど出席しない異端児でありながらその頭脳、実力をもって首席に座する天才。千を極め一を識りたいと願った魔導士。

当時就任したてのアルフェニスは彼を卒業させるにその実務の半分を割いたとされる。



曰くその学院生活は喧騒の日々であったとされる一を識り一を極めた魔導士。

溢れんばかりの魔法力を誇りながら光のみの単一属性魔導士。

圧倒的な戦闘力を持ちながら筆記は壊滅、素行不良と問題児という文字が形となった生徒であったとされる。それでも学院在籍中に挙げた確かな実績のみで次席へと登り詰めた正しく異端児。アルフェニスと同じく就任したてのシリウスは日々アランの蛮行に胃と頭に恒常的な痛みを抱えるようになったとか。



「まとまった話は後にするわ。まずは普通に試験官として働いてきなさい。」


「そうですね。僕はともかくアランは心配ですが...。」


「大丈夫よ。あの子はだれより魔法に真摯なだけ、貴方も分かってるでしょ?ただ魔法だけを評価するのにあの子以上の適任はいないわ。そしてそれは貴方もそう、期待してるわ。」


「確かに、流石ティア様。では僕も仕事をこなすとします。」


2人を見出し誰より2人を知るティアの言葉にエドワルドは微笑む。

このヒトはいつだって生徒達の事を想っている。それはつまり僕らをわざわざ指名するほどの理由が49期生にあるのだろう。


「楽しみだ。君もそうだろ?アラン。」


エドワルドの問いかけに一条の閃光が返ってくる。なおその頬にはしっかり紅葉が刻まれていた。


「はっ!バカ言ってんじゃねぇエド。

違ぇだろ、"俺たちにとって役に立つ"かどうか。それだけだ。」


「当然じゃないか。けど本分を見失ってはいけないよ。まずはきちんと仕事をしよう、その上で僕達の目的を果たそうじゃないか。」


アランの言葉にエドワルドは笑う。

一癖も二癖もある試験官2人はそうして演舞場に降り立つ。



___________


魔法は一にして無限。使用者に応じて姿を変える。


披露される魔法たちを魔眼を用いて観察する。使用者の所作、癖、魔力の流れに至るまで隅々と。


飛び交う魔法、未だ届かぬその光景を俺はただ眺める。空虚な虚しさを覚えながらも俺は魔法の美しさに目を奪われていた。その矛盾こそが俺の原点であると、改めて認識させられる。


リオナやカレン、シン達は最早言うまでもなく49期生の上位30人程の魔導士ともなると中等魔法、属性によって或いは上等魔法まで使いこなす生徒達も見受けられる。

十人十色、学識上は同じ魔法であっても使用者のアレンジ、意志の持ちようによって全く別の魔法と言えるまでに昇華させた者もいた。


俺だけではない。生徒達は皆目の前で披露される魔法に目を奪われている。皆が一同にこうして魔法を披露するのはそれこそ半年前の入学試験以来である。友でありライバルである同級生の魔法を目に焼き付けるのだ。


「次の生徒、前へ。」


俺の番がやってきたようだ。

そして試験官の前にやってきた所で気が付く、先程までの試験官と違う人物である事に。


「どうか僕の心を沸き立たせて欲しい、新たな魔導の子よ。ただ僕らは未熟だからね、ここからは試験その1は僕ら個人がで、その2は僕ら2人で担当するよ。」


少し離れた隣の試験官も見ると先程と変わっていた。そして奇しくも呼ばれた生徒はテレジアだった。


そして特殊な眼を持つ兄妹の胸中は双子らしく同じことを考えていた。


「「目の前の魔導士は計り知れない強者」」であると。


少しだけ生徒達の中にざわめきが広がる。


「おいあれ"白亜の暴光"じゃないか?」


「ということはあのお方が"黒鎖の紳士"様!?初めてお目にかかりましたわ...。」



「先生?先輩?有名人なんだね。ま、私の目は一目見た時から凄い人って分かってたけどね!」


「先輩でいいぜ、餓鬼。」


視線の先では既にバチバチのやり合いが繰り広げられていた。

妹が怖いもの知らずの失礼者で本当に胃が痛い。


「うちの妹が失礼ですみません。後で注意しておくので...。」


「アランはあれぐらいでちょうどいいさ。ああ、僕はエドワルド、エドでいいよ。君たち兄妹少し気になるところだけど雑談は後にして仕事をこなさないとね。さあ、君の魔法を見せてくれ。」


その言葉に俺も意識を切り替え静かに魔力を集中させる。


「No.101 レギ。宜しくお願いします。」


練り上げた魔力を魔法に変換し放つ。

ずっと使い続けてきた俺が最も得意とする闇の初等魔法 【レギオン】を。


____________


「美しい。これが本当に末席の放つ魔法なのか?」


たかが初等魔法、されど初等魔法。

初等魔法は全ての魔法の基礎となるものだ。


祖なる魔法にして原初の一


今目の前で繰り出された魔法は僕の意欲を激しく揺さぶる。完璧に操作された魔力。微塵も無駄の無い魔法力消費。初等魔法という括りは付くもののこの魔法は完成の域にあると言っても過言では無い。


この少年は"レギオン"に関して言えばこの僕よりも上なのだ。さぞ良い魔導士になるのだろう。


僕はこの少年、レギをもっと知りたいと願う。


「素晴らしい魔法だ。さあ!次を見せてくれ。」


レギが次に繰り出したのは風の初等魔法【ガスト】。

どうやら彼は得意な魔法から使っていくタイプらしい。その選択を僕は好ましく思った。これは僕も学生時代によく行った手法である。先に得意の魔法、自らの頂点を見せ評価を引き上げることで後続の苦手魔法の潜在評価を上げることが出来るというものだ。まあ試験官次第だけど...けど僕には有効と言う訳さ。

だが【ガスト】もまた素晴らしいものだった。


「さあ次だ、次の魔法を見せて


「終わりです。」


「.....え?」


「俺はこの2つしか使えません。以上です。」


僕は耳を疑う。


「君は何を言っているんだい?これは試験だ、魔法が完成していなくても披露してくれないか?」


思わず本音を零してしまう。彼の気持ちを考えもせずに、僕はかつてと同じ過ちを繰り返してしまった。


「ははっ、黒鎖の紳士さんよお、レギは本当に魔法がそれ以外使えないのさ。だからそいつは紛れも無い末席なんだよ。」


生徒の1人が僕の求めていた答えを口にする。そしてそれは僕が予期していた過ちと意味を同じくするものだった。


レギを見る。返ってくるその顔を、瞳を、俺は知っている。


怒り、絶望。そして拒絶。


そう、在りし日のアランと同じだ。

後悔に身が震える。全てがアランと同じだ。彼もまた幾度となく同じ質問をされたのだろう。


「何故他の魔法が使えないのか」と。


質問する方に悪意は無い。だからこそ彼らは心に傷を負うのだ。誰より魔法を使いたいのは他ならぬ彼らだというのに。


「...気を悪くしたのであればすまない。君の妹の試験が終わるまで待っていてくれ。」



アランが見守る中レギの妹、テレジアは闇を除いた五属性全ての中等魔法を完璧に披露してみせた。

魂が震えたよ。そして遠巻きに見えるアランの表情で彼が何を考えているか分かってしまう。


「真ん中に集まってくれ。」


「やっほ〜お兄ちゃん。あれ、なんか機嫌悪い? ...もしかしてお兄ちゃんに何かした?」


心臓を掴まれた気がしたよ。ほんとつくづく似ているね。


「やめろテレジア。悪いのは弱い俺だ。」


吐き捨てるようにレギは告げる。


これは嫌われてしまったかな...。だが今は切り替えよう、まずは試験だ。



「テレジア君、君から魔法を披露してくれ。」


「ふ〜ん、お兄ちゃんがいいならいいや。は〜い。見ててねお兄ちゃん、私の全力。」




離れていく兄妹の背を眺めながら僕は問いかける。


「なあアラン、君も感じただろ?」



「「彼(奴)は(てめえ)とそっくりだ。」」


2人の言葉が重なる。


「あのババアめ、最初からこうなる事分かってやがったな。」


「何を言ってるんだい、アガるの間違いだろ?アレン。」


「はっ!悪人の顔が出てるぜエド。」


____________


「はいは〜い!準備出来ました!」



負けた、負けた、負けた。

お兄ちゃんに、負けた。


その事実は嬉しい。だってお兄ちゃんが私に勝つぐらい強くなるなんて...。

けどおかしいの。なんでシン君の言葉にあんなにイラついたのか自分でも分からない。


兄の成長を喜ぶ自分と何故か苛立つ自分がぶつかり合う。その矛盾が私の心を掻き乱す。


けれどその矛盾は私に力をくれる。苛立ちに呼応して魔力は昂り続ける。ちょうどいい発散の場があるんだもん。全部ぶつけちゃお。


私のありったけ。


「試験2、開始してください。もし魔法のコントロールを失ったと判断した場合は強制的に遮断するよ。」



可哀想なお兄ちゃん。大好きなお兄ちゃん。

そんな悲しい顔をしないで。

私が魔法の美しさを、素晴らしさを魅せてあげる。


さあ 魔法と踊ろう。


"舞うは剣 閃くは天の華 輝きを手にし 黎明を願う

その者操りしは 三対六の羽 其は想いの結晶


唄は紡ぐ 咲き乱れる緋色の残花 永久なる幻想

悠久を生きる戦乙女よ 終わりへと我を導きたまえ


この身は神へと至るもの

我が名の元に全てを斬り伏せん"


究極技法(アルテマート) 天凛剣神(ザ・ソード)


想いのままに詠唱文を勝手に増やす。命令式はより複雑化し、魔法の制御は難しくなる。


だがそれがどうした。私はテレジアだ。

マナに愛された私に不可能なんてない!

お兄ちゃんは限界を超えてみせた。なら私も超えないでどうするの!



「あの馬鹿は...毎回妾達の想像を遥かに超えてくるのう。」


「それを言うなら君もだよリオナ...。」


「私語が多いぞ?静かに見守ろうでは無いか。私達が超えるべき輝きを。」


観覧してる者達にざわめきが広がる。

実力が伴わない者であっても目の前で起きている事象が奇跡であることを理解するのだ。


6本の光剣、リオナが目にした時よりも装飾が施され明らかに魔法の練度が上昇している。間違いなく超越に手を届かす、有り得ないはずの魔法。


____________


「歪な兄妹だ。僕はより彼に敬意を表するよ。」


「おいエド、結界を貼りな。」


流れをぶった切って目を輝かすアランを見て僕は諦めを口にする。


「はぁ...仕方ない、存分に確かめるといいよ。」



"天を突け 天を貫け" 【クリューソス】


アランが作り出したのは光の槍、全てを撃ち払ってきた絶槍。



「あはっ!面白い!この力を試すのにもってこい!!!」


相対するテレジアもその瞳に狂気の色を宿す。そして迫り来る光槍をその剣の1つで弾いてみせた。


「アランの【クリューソス】を入学して2ヶ月の子が弾くか...。はははっ、笑うしかないじゃないか。最高だ、最高だよ魔導学院。これが貴女が見せたかったものですか?先生(ティア)。」


時間にして1分にも満たなかったであろうその戦いは観る者達に生涯刻まれる事となる。

そして観る者達の心に新たな光を灯すのだ。


____________


「はぁ...はぁ...やるじゃん、アラン先輩。」


そのまま気を失うテレジアをそっと抱きとめる。

静寂の後の喝采。その声援の中心に妹はいる。


「いい魔法だった。お前は俺の誇りだよ。」


めちゃくちゃ良い顔で気絶する妹に声を掛ける。


勇気は得た。次は俺の番、一か八かの賭けに出るとしよう。



「素晴らしい魔法だっだ。さあ次は君の番だよレギ。」


テレジアをリオナに預け俺は1人演舞場へ舞い戻る。


「エド先生。1つ質問が。」


「なんだい?」


「魔法の使用に対して他の生徒の手を借りてもいいですか?」


「何を言っている。当然駄目だ。君の力を見る試験だからね、君が使える最高のものを見せてくれ。」


ここだ。俺はジョーカーを切る。


「それが、"新しい魔法"だとしても?」


「何...?」


「僕が考案、成立させ友の手を借りて発動へと至りました。勿論僕も魔法の使用には加わります。」


これは規則の穴だ。当然ながら99.5%の生徒は既存の魔法を使用する。新たな魔法の創造はそれだけ難しい。だがそれ故に細かい規則が定められていないのだ。


規則上は新魔法の際に1人のみで行うという文面は無い。ここからは試験官の裁量に委ねられる。故に賭け。試験官がNOと言えばそこまでなのだ。



「.....アラン。君はどう思う。」


熟考の末エドワルドはアランに発言を委ねる。


「見るだけ見てやる、つまらんものが出てくれば切り捨てればいいだろ。」


シンプルイズベスト。


「分かりやすくて助かるよ。認めよう、レギ。まずは見せてくれ、君が作り上げたという新たな魔法を。」



「感謝を。シン、来てくれ。」


頼れる相棒を呼ぶ。俺の無謀とも言える挑戦に力を貸してくれたシンには頭が上がらない。


「良かったねレギ、まず最初の賭けは勝ちだ。」


「だがここで失敗したら意味は無い、頼むぞ相棒。」


拳と拳をぶつけ合う。挑戦の時だ。


「任されたよ。見せつけてあげよう、これが僕らの新魔法。」



「「【淵海(アビス)】」」



ぼちぼち再開していきます。

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