表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第2章 学院生活編
54/123

第五十一幕 精霊魔導士

モンハン 楽しい

更新できなかった分ちょい長めです。



朝の支度を済ませ久々に学院の教室棟へと足を踏み入れる。


あの後テレジアが寝巻きのままで飛び込んできたりして大変だった...。

もう少しだけシンから授業のこと聞きたかったのにと思ったがまあ心配かけた代償だと思えばまあ仕方がないだろう。俺もテレジアに何かあればいてもたってもいられないのは間違いないからだ。



教室棟はまだ授業前で静かなものだった。


しばらく歩きそして俺は目当ての教室を探し出してそっと扉を開ける。とある人物を尋ねるために。



事前に得た情報通りに目的の人物はそこにいた。


朝日に照らされながらくーくーと可愛い寝息を立てるその人物は


「おはようございます。ティナーシャ先輩。」


「むにゃむにゃ。むぅ...ん?これは珍しい来客。」


目的の人物とは"虹姫"の名を拝しギルド アルカナ の副団長。

そして何故か俺の精霊召喚に際し協力してくれた

ティナーシャ・ゼル・クロスタリアその人である。


隣国クロスタリアの姫君でもあるティナーシャなのだが冷静に考えて学院の中でも大物中の大物だ。気まぐれでもなんだろうが協力してくれた幸運には感謝しなければならないだろう。

それにせっかく出来た縁だ、使わせてもらおうじゃないか...と思いシリウス様に普段どこにいるのか聞いておいたのだ。


「起こしてしまってすみません。ですがお礼と、聞きたいことがありまして。」


「ん。いいよ、けどちょっと待って」


ティナーシャは欠伸をひとつ挟みおもむろに立ち上がる。そして身に纏う宝石たちに触れた。


「おはよう、皆。今日もよろしく。」


触れた宝石から淡い光が立ちのぼる。


その幻想的な景色を眺めていたら不意に右眼が疼いた。耐えきれずに瞬きを一ついれる。その一瞬に俺の魔眼は写し出した。ティナーシャを囲む七人の精霊を。特に先頭の精霊はまるで俺からティナーシャを守るように立っていた。


再び瞬きをするとそれは幻のように消え去っていた。


キョトンとする俺に向けてティナーシャが えいっと指で突く。


「ん。ごめんね。この子達が少し警戒してるみたい。レギの子達に。」


なるほど。まあ確かにルクスは胡散臭いし危なそうだしな...。


『おっとその評価は心外だねレギ。ボクは普通の常識人さ。なあに他の精霊達より少しばかり好奇心旺盛なだけなはずさ。』


「ん。ルクスは悪い子だと思うけど悪さはしない賢い子。私はそう思う。」


!?このヒト自然に俺とルクスの会話に入ってきたけど


これには流石のルクスも驚いてるらしい。驚愕の感情が伝わってくる。


「ティナーシャ先輩もしかして俺たちの会話聞こえてます...?」


「ん。ティナでいいよ。うん、聴こえる。隣ぐらい近くないとだめだけど。私だけの力、えっへん。」


ピースしながらドヤ顔をキメるティナーシャ。


そして好奇心を刺激されたのだろう。ルクスが颯爽と顕現する。これから授業とかあるのに軽々しく魔力を使うのは勘弁して欲しい...。


「へぇ...なるほどね。」


ルクスはティナーシャの周りをくるくると回りながら観察する。


ティナーシャの身に纏う宝石がパチパチとスパークしてるのは気の所為ということにしておこうとしたが時は既に遅かった。


黒い宝石から光が弾ける。


ルクスとティナーシャの間に入るように現れたのは純白の装衣を見に纏った精霊。先程ティナーシャを守るように立っていた精霊だった。そしてその背にはルクスと同じ黒い羽根を持っていた。


「主へ近づくな、穢らわしい死精(バン・シー)の分際で。」


ルクスもその姿を見て目を細める。


「酷い言い草だね。同じ悪精同士仲良くしようじゃないか。ねえ玹霊(アーテル)。」


「そう呼ぶな殺すぞ。私にはジェットという主から拝命した名があるのだ。」


「ならジェット、ボクの事もルクスと呼んでくれると助かるのだけどね。」


二人の精霊の間に火花が散る。


なんでもう死精(こいつ)はすぐ絡まれるかな...。


後悔しないつもりだったけどこればっかりはちょっと面倒だとレギは内心思うのだった。


だがそれを制したのは華奢な腕だった。


「ん。二人とも喧嘩しないの。レギが困ってるでしょ。ロザリィ、ジェットを連れ戻して。」


ティナーシャの言葉にローズクォーツが輝きもう一人精霊が飛び出してくる。そして何故かそれに反応してニアも飛び出すのだった。


「「うちのバカがすみません(ごめんなさい)!」


ドゴッと鈍い音を鳴らしながら二つの影が地面に叩きつけられる。


ロザリィと呼ばれた精霊がジェットを。

勝手に飛び出してきたニアがルクスを。


そしてそんな二人を押さえつけながらお互いにぺこぺこと頭を下げ合っている精霊がまた二人。


一体何を見せられているのだろうか...。けどどこか既視感がある。


・・・そうだ


テレジアがやらかした時に謝ってる俺と同じなのだ。なるほど...第三者から見た俺はこんな感じなのかと少しだけ悲しくなった。


「何をするロザリィ!私は主を穢らわしい死精から守ろうとしただけだ!」


「バカっっっ!ティナに貴重な後輩(パシリ)が出来そうなんだから黙ってなさいな!

この子は下僕一号(ルーカス)と同じ匂いがするのよ!ぜっっったいティナの身の回りのお世話をしてくれるデキる子の匂いがね。いつも苦労してるあたしが言うんだから間違いないわ!」


いや、全部聴こえてるよ。

え、何?このロザリィ...さんは俺にティナ先輩の世話をさせようとしてんの?

いやでも剣幕が凄い、それに精霊なはずなのに目元に隈ができてる気がする...。あれは苦労しているヒトと同じ目だ。



「な!レギは渡さないわよ!ルクスがバカなのは謝るけどそれは許さないわ!」


「ティナに尽くせるのだから光栄なことだわ。昔は言い寄ってくる下僕たちがいっぱいいたのにジェットのバカが追い払うから...。」


ほらみろ、丸聞こえだったからうちのお転婆娘が勘違いしただろうに。

それにジェットとかいう悪精は正しいことをしている気もするのだが俺の感性がおかしいのだろうか。


ルクスはルクスで意識が逸れたのをいい事に

またティナ先輩の周りをくるくる飛んでるしそれを咎めようとジェットが乱入して何故かお互いに目に見えない速度で飛びあってるし。その隣ではロザリィさんとニアはギャーギャー言い争いを始めるしまさに地獄絵図だった。




「はあ...」


仕方なく騒動を抑えようとしてルクスとニアを強制退界させようとした所で俺は手を止める。己のものでは無い、圧倒的な魔力を感じたから。



「むぅ。もうめんどくさい。レギ、少し離れて。」


振り返りその魔力の発生源たるティナーシャにそう言われレギは黙って従う他なかった。


「あ、まずいわ。ティナキレてる。」


ロザリィさんのその言葉だけが辛うじて聴こえた気がした。



ティナーシャは一度眼を閉じる。

衝動のまま魔力を集中させる。己の身に流れる血、それがもたらす力を解放するために。


その額に紋様が浮かび上がりそして彼女は眼を開ける。


レギは改めて理解する。目の前に立つヒトこそが 序列第3位 "虹姫" そのヒトなのだと。


「ティナーシャ・ゼル・クロスタリアが告げる。王の前に跪きなさい、精霊の子らよ。私が望むのは静寂、そして対話。その一切を妨げる事を私は許可しない。」


凛と澄んだその声は響き渡る。

決して大きい訳では無いのに、どこまでも響いていく気がした。


そして精霊達は跪くのだ、王の前に。


若干一名を除いて。


「え?え?何が起こったの!?」


状況を理解出来ていないニアはあたふたしてる。あのルクスでさえも跪いているというのに。


「へぇ、凄いね。これが精霊王の血がなせる力か、とても興味深い。」




「やっぱり剣霊は凄い。私の力に抗える精霊()は少ない。レギは凄いね。」


気がつけばいつものティナ先輩に戻っていた。二重人格かと思うぐらいの変わりように乾いた笑いが出てくる。

それを聞いたニアは嬉しそうに跪いているルクスに自慢していた。


「ん。いいよ、聞きたいことって?」


だがティナーシャにそう言われそっと心を落ち着ける。


「まずは感謝を、ティナ先輩。見知らぬ俺の為に手を貸してくださって。」


「ん。いいよ気にしなくて。私精霊が大好きだしそれにリオナちゃんの頼みだったから。あ、これ言っちゃいけないやつ...ん、いいや。そういうこと、だから礼を言うならリオナに。」


まさかの事実ではあった。

なるほど...気まぐれかあるいはカレンかテレジアの入れ知恵なのか...?いや、詮索はやめよう。どんな事があろうとリオナが俺に手を貸してくれたのは事実だ。貸しが一つ出来たな。放課後菓子のひとつでも持っていくか。


「それで?他は?」


「他ギルドに教える義理は無いと思います。答えられる範囲で構わない、精霊魔導士について、俺はこれから何をすればいいのか、教えて頂けませんか?」


それを口にした途端に寒気と重圧に襲われる。それはジェット、ロザリィ、そしてティナーシャの身に纏う宝石から発せられているようだった。言葉は無い。けれども 身の程を知れ まるでそう言われているかのようだった。


「鎮まりなさい。愛しい精霊()たち。

ん。一つ聞かせて。アッシュ先輩も精霊魔導士、どうして私に?」


アッシュ先輩...!師匠(アシュレイ)の事か!?今度どさくさに紛れて呼んでみよう。


そして当然の疑問だろう。師匠でありしかも同じギルドの先輩に聞かないのかと。

けど俺の答えはシンプルだった。


「簡単ですよ。精霊魔導士としてはティナ先輩の方が上だと感じたからです。俺は弱くて未熟だから...少しでも多く学びたい。使えるものはなんでも使いたい、そう思ってます。」


「よく言ったわ!流石あたしが見込んだ男。そうよね!あの憎きアシュレイ・ブラックより私のティナの方が凄いわよね!」


いつの間にティナ先輩の命令から抜け出したのかロザリィ...さんが俺の周りを飛び回りながら頭を撫でてくる。


「ん。分かった。自分の意思で決めたことなら私は何も言わない。いいよ、教えてあげる。私が許可したから、ジェットも仲良くね?」


「...不本意ではありますが主がそう仰るのであれば。」


不服そうではあるがジェットが俺を見る目がゴミから小癪なやつぐらいにはなったらしい。


「ありがとうございます、ティナ先輩。」


俺は誠心誠意頭を下げる。施しには感謝を。

そしていつか恩を返せるように努力しなければならない。


「ん。ヒトに頼ることはいいこと。この学院のヒトたちは変にプライドが高い。手を取り合うことが少ない。もったいない。」


ティナーシャは残念そうに告げる。


そうか。ティナ先輩は隣国からの留学生だ。

故にこの国の内情に詳しくは無いのかもしれない。エルフィニアでは魔法の力こそ最も尊ばれるもの。優秀な魔導士を輩出することがそのままその家の力となる。

特にそれは中小程度の力を持つ一族の中で謙虚であり学院内でもライバルとして互いに牽制し合っているのだ。それはそれで優秀な魔導士が生まれる為決して悪いことではない。だがそういった経緯から互いに手の内を明かし手を取り合う魔導士は多くは無いのだ。


だがまあ俺にはそんなしがらみは無いしあったとしてもそんな余裕は無い。強くなるためだったら頭などいくらでも下げよう。


「まあみんな色々抱えてるって事ですよ。ま、俺にはプライドなんて無いですけどね。」


「ん。レギは強欲。けどそれは魔導士としていいこと。だけどレギは精霊魔導士としてダメダメ。」


褒められたと思ったら直球で否定されて思わずショックを受けてしまう。


「ぐ、具体的にどこが駄目なのかお聞きしても...?」


「レギは精霊魔導士に一番大切なものはなんだと思う?」


俺はその問いに迷いなく答える。


「精霊と主の信頼関係、ティナ先輩を見てそう確信しました。」


俺の答えにロザリィは満面の笑みを浮かべジェットも心無しか嬉しそうではあった。

だが質問の主だけが何処か様子がおかしい。


「も、もちろんそれも大事...同じぐらいには。」


どうやらティナ先輩だけが悲しい事にここに居る者たちの中で答えが違ったらしい。

それを察したロザリィとジェットからの何とかしろという圧がエグい。


........これならなんとかいけそうだ。


「すみません、ティナ先輩。先輩にとって精霊と信頼関係を築く事は当たり前のことでしたね。考えが至らず申し訳ありません。」


「こ、こほん、ん。レギは優しい。そんな優しいレギに一番大切なことを教えてあげる。」


「お願いします。」


「ん。それはね、倒れないこと。どんな事があっても生き延びること。私たちの命は精霊をこちら側の世界に繋ぎ止める楔。私たちが死ねば精霊は寄る辺を失い再びマナの輪廻に引き込まれるの。まあルクスみたいな例外もいるけど...。本来精霊は主の死とともに(ソウル)が崩壊するの。だからもう私たちの命は自分だけのものじゃない。宿した精霊の数だけ、命は重くなる。」


ティナーシャは淡々と揺るがない事実を述べる。だがその言葉は重かった。


「そうだ。我ら精霊は契約の際に主の魂を借り受ける事で現界を果たしている。今の姿形、性格や力も主あってのものだ。それを失えば我らは我らで無くなる。なればこそ、我々はその生涯を賭して主に仕えるのだ。」


「あら、珍しくジェットにしては良いこといいじゃない。そういう事よ新人精霊魔導士くん。ティナに言われてこっそり君の戦いを観させてもらったの。見事なものではあったわ。けど精霊魔導士として歩んでいくならあれは駄目よ。」


ジェットが崇高な思いを口にしロザリィが諭すように言葉を紡ぐ。

だが俺はやるせない思いを感じていた。そしてついそれを零してしまう。


「けど俺にはティナ先輩みたいな魔法力も魔法適正もありません。近接戦闘以外に道があるとは...。」


「厳しいでしょうね。今のままでは。」


「ん。何とかはなる。....多分。」


「なんでもやります。教えて貰えますか?」




「ん。どう思うロザリィ。」


「まだ無理でしょ。この子たちゲートの使い方も知らないみたいだし、もう少し鍛えないと。」


ヒソヒソとロザリィさんとティナ先輩が話し始める。まあ丸聞こえなのだが。それにしても


『なあルクス、ニア、ゲートってなんだ?お前知ってるか?』


『私は知らないわ!!!』


『ゲートというのはボクら精霊が現界する際に通る門のようなものだね。そのゲートを作るために契約者の魔力を使っているんだよ。まあボクも詳しいことは知らないよ、正直気にしたことも無かったからね。』



「ん。大体ルクスの言う通り。普通の精霊魔導士はあまり気にしなくてもいい。けど魔法力が少ないヒトや精霊を多く宿すヒトは別。

精霊は呼んでるだけで魔力を使う。それを節約すべき。特にレギは。」


「要は無駄を省くって事よ。ただでさえリソースが少ないのだからそれをコントロールしなさいな。」


手痛いとこを突かれた...。だが俺にしてみれば目から鱗なのだ。特に!特にこいつらは何故か勝手に現界するからその消費を減らせるなら大歓迎である。


「教えてください!どうやればいいですか?」


「ん。お手本見せてあげる。よく見てて。」


「はい。」


「こう、ぐるっと。」


ティナ先輩は空中に指で円を描く。

すると薄い膜のようなものが現れた。これがゲートなのだろう。


その中からひょこっと黄色の髪の精霊が顔を出して手を振ってくる。


「はぁ〜い。私はアスファ、よろしく〜。」


それだけ聞くとティナ先輩はシャボン玉を割るように膜に触れゲートを閉じる。


「どう、分かった?」


いや、何も分からん。あーひとつだけ理解した。このヒト天才だ。多分やればなんとかなっちゃうタイプのヒトだ...。どっかのテレジアみたいに、言葉足らずの感覚派。


俺が戸惑っているとロザリィさんが助け舟を出してくれる。


「あーはいはい。ティナは天才ね〜。

はぁ...仕方ないからあたしが分かりやすく教えてあげるわ。」


ああ、ロザリィさんも苦労してるいるのだろうな。対応が慣れすぎていた。


「いい?イメージしなさい。門でも扉でもティナみたいな円でもいいわ、特に輪郭をハッキリとね。より具体的なイメージの方が最初は組みやすいわよ。」


そっとロザリィはレギの額触れる。



俺はその言葉通りにイメージを組み立てていく。

思い浮かべる光景は小さい頃に読み込んだ本に描かれていたかの妖精王の扉。絵などは無かったが細かい描写から幾度も空想をふくらませた思い出が蘇る。


様々な装飾が施された白く美しい扉が頭の中に出来上がる。


「いい感じね。へぇ...いい歳して御伽噺に想いを馳せるなんて可愛いじゃない。こんなのを思い浮かべたヒトは初めてよ。」


どうやらロザリィさんは俺の頭の中のイメージを覗いているらしい。口に出されるとまあまあ恥ずかしい...。


「そうだよ可愛いだろう?レギは今でも英雄に憧れているんだ。」


ルクスが茶々を入れてくる。危うくイメージが崩れそうになったぞ馬鹿野郎。


「次はそのイメージに魔力を流し込むわ。今回はあたしがやってあげる。感覚を少しでも覚えなさい。輪郭をなぞって外側から少しずつ内側へ。こんな感じかしら。」


ロザリィさんがちょちょいと書き上げた扉はまさに俺のイメージした通りだった。


「私が通ってみるわ!」


ニアが物珍しそうにゲートに飛び込んでいく。


「へぇ〜普段意識してなかったけど私たちはこんなのくぐって来てたのね。改めて見ると不思議な感じ。けど通れたわよ!」


「じゃあ次は自分でやってみなさい。魔法だと思えばいいわ。」


"イメージ 確立 魔力 注入開始"


【ゲート】


目を閉じて真剣に組み上げる。

だが目を開けてそこにあったのは先程ロザリィさんが組み上げたものとは比べ物にならないほど粗末な扉だった。


「...まあまあね。最初からゲートが作れただけマシよ。」


腕を組みながらうんうんと頷くロザリィ。

そしてパタパタとレギの耳元へと近づく。


「ティナの説明で分からない事があればまた聞きなさいな。 ま、めげずに頑張りなさい。お礼はティナの話し相手にでもなってくれればそれでいいわ。」


ロザリィさん.....いや、ロザリィ姐さん!!!

優しすぎるロザリィに思わず畏敬を抱く。


「ありがとうございます、ロザリィ姐さん。」


「姐さん!?ま、まあいいわ。じゃあティナ、私はシリウスの所に行くから。また後でね。」


「ん。またあとで。」


それだけ言うとロザリィは窓から飛び立つ。


「ティナ先輩ほどにもなるとああやって契約者と精霊が離れても大丈夫なのですね。」


「出来るわけが無いだろう馬鹿者が。」


「ん。ロザリィは特別。」


「彼女は超位精霊(フィラソピア)だよ。ボク達とは一つ位が違う存在なんだ。」


「そこの死精と同じ主を移り渡るクロスタリアの守護精霊にしてまたの名を"妖精女王(ティターニア)" 癪だがやつを従えている事こそが王たる証そのものだ。」


「今年はロザリィと一緒にアッシュ先輩とメルちゃんを倒す。ティナ頑張る。あ.....そういえばもしかしてレギって敵?」


あまりの天然っぷりに流石に空気が凍りつく。だが決して悪気がある訳では無い...はずだ。


「一応、はい。俺はアシュレイ先輩やメルヴィ先輩と同じギルドです...。」


「むむ。うーん。...まあいいや。レギはいい子だしね。敵になったら倒せばいいだけ。」


「もちろんですとも。主が出張らずとも私が倒してみせましょう。」


ティナーシャの一言にジェットが続く。


「ははは...お手柔らかに。」


乾いた笑いしか出てこない。

けれど俺とて鼻から負けるつもりは無い。

どんな相手にも心で負ける訳にはいかないからだ。



その後少しだけティナ先輩と語らい俺は教室を後にする。


「私がここで寝てたらまたお話しよ。」


去り際にティナ先輩がそう言ってくれた事が嬉しかった。

俺が対立するギルドの者と理解しても変わらず接してくれる。こうしてくれるヒトは存外少ないのだとマスターは仰っていたからな、繋がりは大事にしなければ。




久しぶりのベティ先生の授業はこれまたキツかった。だがそんな日常が嬉しく思えた。


そして師匠(アシュレイ)の言っていた通り中間試験の内容が発表され生徒たちはその話で持ち切りになり俺がいなかった事などもう忘れたようだ。


帰り際にカレンがそういえば私はプロメテウスに入ったぞなんて言うからびっくりした。何やらリオナと喧嘩したらしい。凄い気になったがえげつない課題の量だったため仕方なく帰路につくことになった。



俺がいつも通りの日常に戻るにはまだまだ時間がかかるらしい。


とは言ってもゲートの練習、ギルドでの修行、そして騎士団での訓練。

......死なないように頑張ろう。


「ルクス、ニア、俺が死にそうになったら止めてくれよ?」


「縛り付けてでも止めてあげるわ!」


「キミが死んだらその魂をボクが貰える訳なんだけど.....って冗談だよ。けどキミは無茶しそうだからね、見張っておかないと。」


とても主と精霊とは思えない軽口を叩き合いながら三人はギルドへ向かう。強くなるために。


話が動くと言ったな...頑張ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ