第五幕 理想と現実
レギとテレジアの設定を12歳から15歳へ。それに伴い同級生はみな15歳ということで。
まるで時が静止したかのように感じる世界でレギは彼女をただ美しいと思った。
隣にいるヨルハからは自分の姿がどう写っているのだろう。情景が、理想が現実と重なる。まるで物語から飛び出してきたようだった。
「おいお前、大丈夫か?急に固まってよ。」
ヨルハの一言で俺は現実に戻される。
そう、あくまで容姿が酷似しているだけであり物語の剣の女神ではないのだ。怪訝な視線を向けるヨルハに
「いや、大丈夫、気にしないでくれ。」と返答する。
「そうか?ならいいけどよ。しっかしあれが噂の鋼鉄の氷姫サマかよ。うちでも分かる、あれはヤバい。」
「鋼鉄の氷姫?彼女が?」
「なんだお前この国にいて鋼鉄の氷姫サマ知らねえのか? リオナ・ノア・エルフィニア、この国の第2王女にして氷の魔法を主体とした剣技を扱う通称鋼鉄の氷姫。列国にもある程度名が通ってる有望な姫サマって話だ。」
「世間話には疎くてね。ありがとう。」
あれがこの国の王女...。もしかしなくてもテレジアが入学試験で凄い凄いって言ってたやつだな。
新入生の挨拶を終えたリオナはそのまま壇上を降りテレジアの横に座った。
「魔法とはイメージ、空想を形にするものです。思考を止めない限り、魔法は無限です。誰よりも自由でありなさい。それこそが最高の魔導士であると私は信じています。新たな魔導の子よ、まだ見ぬ景色、ヒト、魔法、全てがあなた達を待っているわ。この学院があなた達にとって良き場所になるよう、祈っています。」
ティアがそう締め括り入学式は終わりへと向かう。
「ではこれで入学式を終わります。新入生諸君はこれから寮へ案内します。それまで少し休息とします。」
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「そいえばさっきは聴きそびれたんだがその剣は?」
話題を逸らすようにレギはヨルハにそう聞いた。
「ああこれか?これはうちの国に代々伝わる剣の中でも刀ってやつだ。その中でもサイズが大きい太刀って呼ばれるうちの愛刀。銘は黒揚羽ってんだ。」
「東洋の神秘と名高いあの刀か。」
「うちの国じゃ刀はそんなに珍しいものじゃないぜ?とは言ってもこの大きさになるとさすがに数は少ないけどな。」
「それを扱う君の剣技、是非とも拝見したいところだ。」
「嫌でもそのうち見ることになるさ、うちには今のとここれしかないからな。それはあんたもだろ?。」
「そうだな、今は...な。」
ヨルハとの会話を終えたところでふとテレジアのほうに目をやる。すると噂の鋼鉄の氷姫、それとおそらくNo.3の少女と話していた。気にはなるが入学試験トップ3の会話なだけにさすがに多少の抵抗があったレギは視線を切って資料を見始めた。
だがレギの視線を感じ取ったテレジアがこちらを見てきた。
だが気づかぬ振りして資料を見ていたら痺れを切らしたのかずんずんと近寄ってきて声を掛けてくる。
「ほら、お兄ちゃん!リオナちゃんが気になるんでしょ?こっちこっち。」
俺の心の中を見抜き更に既に王女様をちゃん付けで呼ぶ妹の明るさに辟易しながら半ば強引に腕を引かれレギはリオナとNo.3の少女の方に連れていかれた。
「こちらは私のお兄ちゃん!ほらお兄ちゃん挨拶して!」
「テレジアの双子の兄、No.101 レギだ、騒がしい妹だがよろしく頼む。」
「私はカレン。カレン・アストリウスだ。そうか、貴殿が噂の101番目か、試験のログは見させてもらった。貴殿を入学させた者の気持ちも理解出来る。私は貴殿を歓迎するよ。どうかよろしく。」
「ありがとう。あいにく俺には才能が無いからな。けどあんたみたいな人がそう言ってくれるだけで俺はまだ頑張れるよ。」
「ふん、所詮貴様も才能を言い訳にするのか。それでは意味がなかろう。精々妾の邪魔をするでないぞ、末席。」
「おいリオナそういう言い方はよせ。」
「事実じゃろ?それに既に達観しておるのも気に食わん。ではな、テレジア、貴様もそろそろ兄離れをしておけ。」
レギはリオナの外見から大人しい印象を抱いていたため理想と現実とのギャップに少し固まっていると
「すまない、悪気は...あるんだがあいつにも色々あるんだ。気にせず貴殿は貴殿の道を進んでくれ。」
そう告げ頭を下げるカレンの言葉でなんとか気を持ち直し
「こういうことには慣れてる、今更だ。」
「良くも悪くも真っ直ぐな姫さんみたいだな。それに兄離れして欲しいのは俺もだ。頼むぞテレジア。」
「悪い子じゃないと思うんだよね〜リオナちゃん。
え、私お兄ちゃんのご飯食べれなくなったら死んじゃうかも...。他にも.....」
一人であれこれし考え始めたテレジアを悩ましく眺めながら、先程リオナに言われた達観してるという言葉の意味を考えていたレギに一人の男に声をかけてきた。
「はっはっは 散々な言われようだったな末席。」
よく声の通る大柄の男だった。
「俺はNo.6 グラン・アルグロスだ、グランと呼んでくれればいいぜ。俺はお前みたいに腕っ節に自信のあるやつは嫌いじゃねえ。俺と一緒にあの偉そうな姫さんに目に物見せてやろうではないか!」
「俺もお前は試験で見させてもらった。少し珍しい魔法のようだったが。」
「なるほどいい眼をしてるな。ますます気に入ったぜ。お前とはいいダチになれそうだ。」
グランのように声を掛けてくる者。遠巻きから色々な小言を言ってくる者。様々いたがひとまず落ち着いたようだ。ちょうどその時
「待たせたわね、新入生諸君。これから寮へ案内するわ、ついてきなさい。」
--学生寮
「ここが貴方たちが今日から暮らす寮よ。部屋は2人1組。ペンダントに【キー】と詠唱して表示された番号の部屋に各自向かうこと。ペンダント自体が勝手に鍵になるわ。」
「同部屋の相手は我々上位階級の者が互いの魔法、才能を高め合えると判断した者が同室となっているわ。ルームメイトに異議があるもの、疑問に思うことがもちろんある場合で当人同士の間で決着がつかなければ私の元まで連絡なさい。以上よ。」
「俺の部屋はあそこか。角部屋は読書に向いてるな。」
そんなことを考えながらレギは部屋の前に着く。扉の装飾が半分光ってるため既にルームメイトが中にいるらしい。ペンダントが光り、鍵が空く。
扉を開けるとそこに居たのは
情景........と同じ姿をした口の悪いお姫様だった。
妾とかのじゃ等尊大な口調大好きです。
次回多少のバトル要素あるかもです。