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後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第1章 出会い編
27/123

第二十六幕 魔法とは part5

無職転生のアニメ最高でしたね〜。



--アルカナ とある一室



「最近の妾は自信を失ってばかりじゃ。」


「お前本当にリオナか?どれ。」


シリウスは隣に座る妹のほっぺを引っ張る。


「痛い!何をするか姉上!」


「どうやらちゃんと我が妹のようだな。お前が弱音を言うなど誰かが魔法で化けてるのかと思ったぞ。」


「こんなこと姉上の前以外で言えないのじゃ。妾とて人の子という訳じゃよ姉上。見栄を張るのも少々疲れた...。」


リオナはさらにシリウスに近づきその肩に頬を擦り寄せる。


「どうしたのだ本当に...。まあ姉としては嬉しいがな。」


シリウスはびっくりしながらも妹の頭を撫でる。


今まで頼られはすれど甘えられたのは初めてだった。

だから嬉しかった。けれどそれだけリオナが悩んでいるということだろう。


「テレジアか。」


「なんでもお見通しじゃな、姉上は...。」


シリウスは頭に浮かんだ言葉を投げかける。どうやら正解だったらしい。


「私が聞くのではなく。お前の口から話せ。悩みは口に出してこそだ。まだ約束まで時間がある。聞いてやろう。」




少しの沈黙の後リオナが口を開く。


「...妾は今まで同年代には誰にも負けなんだ。誰にも負けないほど努力を積み魔法と向き合ってきた自負がある。じゃがあやつは...テレジアはそんな妾を自然体で超えてくる...。無論あやつに引っ張られて妾の力が上がっていく実感は確かにある。じゃがそれでよいのか分からぬ...分からぬのじゃ。

このままでは妾はあやつの後を追うだけになる。それが妾にはどうしようもなく不安なのじゃ...。」



再び少しの沈黙が2人を包む。そしてシリウスが口を開いた。


「なあ分かるかリオナ。それはお前が才能で諦めてると忌み嫌う人々と同じだよ。お前はテレジアの才能に嫉妬しているだけだ。」



先程とは違う冷酷な声で言い放つ。誰よりもリオナの努力を知るが故にリオナのその言葉をシリウスは否定する。



「そうか.....。これが妾が今まで嘲ってきた者達の気持ちか。これは...耐え難いものじゃな...。」



リオナは今まで嘲ってきた者たちの気持ちを初めて理解したのだ。


人は自分の努力を軽々上回られた時、耐え難い不安を抱える。理不尽に嘆き、不条理に怒りそれらに理由を付けようとする。そしてその言い訳に最適なのが才能という言葉なのだ。




「リオナ。お前はこれまでの人生に後悔しているか?」


「後悔はない。憧憬を目指し妾が歩んだ道を否定することなどありえない。」



「そうだろう。お前はお前だしテレジアはテレジアだ。テレジアがどれだけお前の前を歩こうともお前が後を追う必要はないんだよ。」


「姉上...。」


「お前の幸せはお前が決めろ。他人で己を測るな。それに...お前は何も揺らぐ必要は無い。私はいずれ神域へ辿り着き最高の魔導士へと至る自信がある。けど私を超えるのはお前しかいないと、私は信じている。」




リオナはその言葉を沈黙と共に深く噛み締める。


そして観念したような、納得したような頷きと共に口を開く。


「そうじゃな...。姉上の言う通りじゃ。

妾は妾じゃな。他の誰でもない。たった一週間程度で自らを見失う所じゃった。感謝を、姉上。」


「この程度で何を言う。お前は今まで姉らしいことをさせてもらえなかったからな。愚痴なら何時でも聞くぞ。まあお前が自信を失うのも少しは分かる。テレジアはそれ程までに凄まじい。私もこの一週間で改めて実感した、恐らく才能なら魔導学院の歴史の中でも随一と言っていいだろう。」



「ディアボロスのマスターはあやつを太陽と例えたのじゃったな。溢れんばかりの才能を惜しみなく振りまく。それ故に太陽か...。

ふっ、妾とは真逆じゃな。じゃがもう何も言うまい。妾は己のやり方であやつに勝とうではないか。」


「もう大丈夫そうだな。もう一つアドバイスだリオナ。友を、ライバルを増やせ。そしてお前はもう少し色恋沙汰にもかまけてもいい。

お前は馬鹿にするだろうしあまり理解しないだろうがお前が思ってる以上に愛と友情は人を強くするぞ。」


立ち直りかけるリオナと妙な説得力でアドバイスをするのはシリウス。


「姉上...もしや恋人でもできたのか?」


リオナは怪訝な顔で疑問をぶつける。


そしてシリウスは少しだけ言葉に詰まりながら答える。


「まさか。だがお母様に言われたのだ、

そろそろそういう相手を見つけてもよいとな。それを考えた時に意外とすぐ思い浮かんだのだ。こいつとなら歩んでもいい、更なる高みへと至れる、そう思える者の名がな。

ま、まあまだ相手に話は出来てないし伝えれる気もしないのだが...。」


「ふふふ、あっはっはっは!閃光の魔女が眷恋にかまけておるなど!皆が知ったら驚くじゃろうな(笑)

色恋沙汰か...生憎妾の生き方は簡単には変えられぬ。周囲の目線もな。...だが姉上のアドバイスじゃ。心には留めておくとしよう。」


「学院生活は始まったばかりだ。

少しづつ、ゆっくり変えていけばいい。」



「そういえば姉上、約束があったのではなかったのか?随分話し込んでしまったが。」


「あの男など多少待たせるぐらいでちょうどいい。お前を優先して問題ないさ。」


だがその時


「おやおや酷いじゃないか。君が私を呼んだというのに。」


いるはずのない第三者の声がどこからともなく聞こえてくる。

リオナは身構えようとするがその瞬間に閃光が弾けた。



「...貴様...!どこから話を聞いていた。」



リオナの反応出来ない速度で扉の前に気づけば立っていた第三者の首に剣を当てリオナも聴いたことのない程の怒気を込めた言葉を放つシリウス。


「ちょっ!ステイステイ、あの〜私の首切れてる、切れてますよ〜。」


第三者... ディアボロスのマスターアルフェニスは両手をあげて抗議する。


「このまま首を切り落としてやろうか貴様。」


「それは困るよ。まだやりたいことがたくさんあるからね。ね、助けてくれないかい?リオナ君。」


言葉とは裏腹にどこか余裕そうなアルフェニスはリオナに助けを求める。


「姉上。妾の愚痴で長引いたのは事実じゃ。

とりあえずその剣は納めた方がよかろう。」


「ちっ。」


シリウスは舌打ちしながら剣を鞘に納める。


「礼を言うよリオナ君。君のおかけで面白い話も聞けたしね。閃光の魔女の弱みを握れるのはこの学院において何よりも得難いものだからね。」


「盗み聞きとはディアボロスのマスターは意地が悪いのう。!? あ、姉上?」


リオナの目線の先では腕に光剣を作り出す姉の姿があった。


そして無言でそれをアルフェニスに振るう。


「おっと。その魔法は流石にまずいな。」


そう言いアルフェニスも黒剣を作り出しシリウスの剣を受け止める。


「アルフェニス。貴様が耳にしたことをさっさと忘れろ。さもなくば...」


「生憎記憶力には自信があってね。そう簡単には忘れられないかな。」


「なるほどな。ならば死ね。」


2人の剣閃が再び重なろうとした瞬間に歌は紡がれる。


"冷轍の丘 ベルギアの歌 万人に吹きすさべ"


【レスティアイス】


「そこまでじゃ。いい大人が、それもマスター同士がなにをしておるのじゃ...。」


停滞の効果を付与された氷が部屋を覆う。

超越の魔導士に効果が薄いのは分かっているがこれで頭は冷えるだろうとリオナは考え魔法を放ったのだ。


「姉上...。貴方ともあろう者が取り乱すとは見てられん。そちらも姉上を煽るのはやめるのじゃ。」


「......すまない、リオナ。」


シリウスは流石にまずいと思ったのか反省した様子で少し縮こまっている。


「そうだよシリウス。私は話をしに来ただけだ。」


「他言したら覚えておけ。」


互いに言いたいことを言い互いに魔法を解く2人のマスター。



だがそれと同時に部屋のドアが開かれ4人目、5人目の来訪者が現れた。


「凄い魔力の反応があったから見に来たよ〜!なになに!何が起きてるの!」


「ギルド中、びっくり。私も、 起きた。」


騒がしい赤髪の某太陽と十傑3位にして隣国の姫君であるティナーシャだ。


「おやおや。騒がせて済まなかったね。起こしてごめんよティナちゃん。」


「あ、アル様だ。やっほー。」


「むむ!アル先輩!あ、アルフェニス様!こんにちは!!!」


「こんにちは。直接話すのは入学式の日以来かな。呼びにくかったらアル先輩でも構わないよ。間違ってはいないからね。」


「ならアル先輩で!今日は何しに来たんですか〜?」


「待つのじゃ、テレジア。相変わらず騒がしいやつじゃ、お前はこっちで静かにしておれ。」


リオナはそう言い慣れた手つきでテレジアの口を氷で塞ぐ。アルカナではもう見慣れた光景となっていた。


「はぁ...起こしてごめんなさいねティナ。けどせっかくだから会議室でお茶を用意しておいてくれる?そこの馬鹿とこの後話があるから。あと他のギルドの皆に説明もお願い。」


「分かりました。アル様も紅茶でいい?」


「構わないよ。君の淹れる紅茶は美味しいからね。」


「はいはーい。ではでは。」


「むーっむーっ ぷはぁ。もうリオナちゃん!急に氷で口塞ぐのやめてって言ってるじゃん!」


「こうでもせねば大人しくならないのはお主じゃろうが。」


「テレジア、今日の修練はどうだった?」


シリウスもなんとなくリオナの気持ちを汲んだのかテレジアに問いをぶつける。


「あ、はい!シリウス様!今日もたくさん魔法を使いました!マナたちがいつもより張り切っちゃって使いすぎたぐらい!ティア様に少し怒られちゃいました、えへへ。」


割れんばかりの笑顔でテレジアはシリウスの質問に答える。


「そうか。しっかり休んで魔法力を回復させるといい。リオナと共に今日は下がれ。」


「はーい!じゃあアル先輩!またどこかで〜

リオナちゃん!私荷物取ってくるね!」


そう言い勢いよく部屋から出ていく。



「ティア様が怒るほど魔法を使ったのにあれだけ元気とは恐れ入るね本当に。君は彼女をどう育てるつもりだい?シリウス。少しだけ真面目な話だ。」


「それは私もまだ決めかねている。だがあまり強制も矯正もさせるつもりはない。

あいつの才能は私如きが縛っていいものでは無い、そう感じている。」


「やはり彼女を君に任せたのは正解だったようだ。他の人ならばかの原石を磨こうとするだろうからね。彼女自身が望めば何色にもなり得る才能に我々が色を落とす必要は無い。」


問答を繰り広げる2人のマスターの会話を遮ってリオナは質問をぶつける。見る人から見たらとんでもない光景であるがそれをなすのがリオナなのだ。


「アルフェニス・ジェラキール。一つ質問じゃ。そこまで考えておいて何故そなたはあやつを、テレジアを姉上に譲ったのじゃ。初めに目をかけたのはそなたじゃろうに。」


「私は異端な才能が好きだからね。」


「はぐらかすでない。あれもある意味、いやあれこそが一番の異端な才能ではないか。」


「聡い子だ。そうだね、特別に答えてあげよう。私は染めたいのだよ。普通ならば弾かれてしまう才能を私の手で育て上げて黒くね。なにものにも染まらない、揺らぐことの無い力を与えてあげたい。迷子の子のを手を引いて先の世界を見せてあげたい。だからテレジア君や君の様な輝く才能は手元に欲しがらないのさ。君たちは自ら道を切り開けるからね。私が導く必要は無い。

まあ結局の所好みの子に育て上げたい悪い大人だよ。」


「理解はしたが納得はできん。まだ隠していることがありそうだしのう。だが間違ってはおらぬのじゃろうな。」


「こいつの人の力を見抜く目は本物だ。それだけはな。」


「それだけとは酷いじゃないかシリウス。

だからリオナ君は君の道を往くといい。思うがままにね。私の子の超えるべき壁として。」


「あの末席を何故そこまで気にかけるのじゃ。」


「彼はかの太陽の横に立ち続けその身を何度太陽の輝きで焼かれようとも屈しなかった子だよ。今の君ならその意味が分かるんじゃないかい?」


「......。ふん、実力が伴わなければ意味など無いわ。」


「そうだね。今は、まだ...ね。」



「おっまたせ〜っ!さ!リオナちゃん帰ろ〜!」


ドアを再び勢いよく開けテレジアが帰ってくる。


「さて、我々も部屋へ向かうとしようかシリウス。」


「貴様と長く話してると気が狂いそうだ。手短に済ませるとしよう。」


「だから呼んどいてそれは酷いと思うんだが...」


そう言い先に部屋から出ていく2人。


「ほら!ぼーっとしてないで帰ろ!リオナちゃん!」


「分かった、分かったから引っ張るのはやめるのじゃ。」


「リオナちゃんにいっぱい聞いて欲しい話があるの!帰りながら話そ〜!」



--帰り道



「テレジア。」


「?なぁにリオナちゃん。」


「妾は貴様を友と認めてやろう。感謝するがよい。」


「...!!! むぅ!今までリオナちゃん私の事友達と思ってなかったの!?」


「ただの騒がしい猫だと思っておったわ。」


「猫可愛いよね〜。ってちが〜う!けどまあいいや!それじゃリオナちゃんが友達って認めてくれた記念に私から一つだけアドバイス!リオナちゃんは可愛いんだからもっと笑うように!!!以上!」


「なんじゃそれは...。適当なことを言うでない。」


「適当なんかじゃないもん!リオナちゃん自分が綺麗って自覚ある?その顔でニコって笑われたらお兄ちゃんなんてイチコロだよ!」


「そこで何故貴様の兄が出てくるのじゃ全く。......のうテレジア。」


「ん?どうしたの?リオナちゃん。」


「これは他言無用じゃ。」


「う、うん。」


「妾はな...仮面を付けておる。強い妾を演じておるのじゃ...。人に見せられない所などいくらでもある。妾はこの身を削って魔法に尽くしてきた。笑顔の作り方なんぞどこかに置いてきた。そんな妾を貴様は笑うか?」


リオナは初めて自らの口からカレンと姉以外の他人に本音を零す。


「笑わないよ。私知ってたから、リオナちゃんの身体がボロボロなの、マナが教えてくれたの。それにその...ね、私も私を演じてるから。だから私は何も言わなかった。けどリオナちゃんは言ってくれたから。なら私もそれに応えたい。だから私は笑わない。」


リオナの本音にテレジアも真剣に返す。


「ほう。貴様のその太陽の如き笑顔も演技じゃと?そう言うのか?」


リオナは多少驚きながらも問いを返す。


「え、えーと。それは素っていうか...隠してる面があるだけであって仮面とはちょっと違う...のかな?」


しどろもどろになりながら答えるテレジア。


「素であれだけ騒がしいのか...貴様...。まあよいわ...何にせよ少しだけ心が晴れた。」


「ふふーん!これで私たち互いの秘密知っちゃったし親友だね!あ、そいえばカレンちゃんにはこの事教えていいよ!あの子私の事少しだけ警戒してるみたいだし...」


「貴様なんぞ悪友で充分じゃ。そろそろ人も増えてくる。誰かに聞かれる訳にもいかぬ。この話は終わりじゃ。」


「むーっ!親友でいいじゃーん。はーい。じゃあ次は私の話を聞いてもらう番!今日ね!ティア様と〜〜〜〜......




--学生寮


「ではな、テレジア。改めて釘を刺すが誰にも言うでないぞ。」


「分かってるよ〜。けどリオナちゃんがいつか皆に話せる日が来るといいな。」


「ふん。貴様にその言葉そっくり返そう。」


「えへへ。また明日ね、リオナちゃん。」


テレジアと別れるリオナ。

今日の出来事など散々色々な話をされたがリオナの心は軽かった。


--寮 一室



「帰ったぞ、カレン。」


「お帰り、リオナ。ん?何だ、何か良いことでもあったか?」


カレンの何気ないその一言にリオナはさらに心が軽くなる。


「ふっ、やはりお前が一番の友じゃカレン。今日はの.........


テレジアは今日起きたこと、姉との会話、テレジアとの会話を洗いざらいカレンに話した。誰よりも信頼を置く友に。


「なんとシリウス様が我を忘れるところなど...それは私も見てみたかったな。それに友...か。私は嬉しいよリオナ。私もシリウス様に賛成だ、お前はもう少し普通の少女でいていいのだ。」


「それにしても姉上は何故あれ程焦っておったのかのう。もしやディアボロスのマスターが姉上の想い人...いや、流石の姉上も想い人に剣を振るような真似はせぬか...。そう言うカレンは好いとる男の1人でもおるのか?」


「なっ!?私も興味が無いと言えば嘘にはなる...が特定の相手などまだいない。それこそお前はどうなんだ。」


「その辺の男など塵芥にしか見えておらぬ。

じゃが妾も一国の姫、そういう事を少しづつ知らねばならぬのだろうな...。」


「この堅物め...お前の恋人になる男はさぞ苦労するのだろうな。お前の私生活を知った時が楽しみだ。」


「わ、妾もその辺は何とかせねばと思っておる!あまり言うでないわ!」


カレンは慌てるリオナを見て思う。


ふっ、その顔を他の者達にも見せられれば苦労はしないだろうに。

それほどまでに今日のリオナは柔らかい表情をしている。やはりシリウス様は偉大なお方だ。だが話を聞く限り恐らくシリウス様はアルフェニス様に恋をなさっているのだろう。

リオナは気づいていないが...案外リオナも恋をすればシリウス様のようになるのかも...


そんなことを考えながらカレンは自然に笑っていたらしい。


「なんじゃカレン。その顔は。」


リオナに言われて初めてカレンは自らの口角が上がっているのに気がついた。


「ふふっリオナ。昨日言ったことを覚えているか?今のお前はテレジアに心を許しているように見えるぞ?」


カレンはニヤニヤしながらそう問い詰める。


「そうじゃな...。妾も少しは変わろうと思ったのじゃ。カレン、お前には苦労をかけたな。じゃが貴様は妾の親友じゃ、これからも苦労を掛けさせてもらうぞ?」


真面目な顔で"親友"と呼ばれた事に思わず言葉が詰まるカレン。


「ほんとに...お前は...。」


思わず涙を流してしまうカレン。


「はっ!貴様の泣き顔が見えるとはそれだけで変わった価値があろうと言うものじゃ。」


リオナは思わず笑う。自分でも不思議なくらい心が暖かくなった。けどその涙をみてどれだけ自分がカレンに負担を掛けていたのかを察する。


「いつかは本当に変わらねば...ならぬのだろうな。」


そんな呟きをした所でリオナは課題のことを思い出す。


課題を出されてから既に5日が経過しようとしている。

昨日催促の連絡が来ていたことも思い出した。


「すまないな、リオナ。見苦しい所を見せた。私は一足先に浴場へ向かうとするよ。」


「姉上の気持ちが理解出来たのじゃ。人のそういう所を見せられると案外うれしいものじゃとな。うむ、妾も課題を片付けてすぐ向かうとしよう。」


「分かった。」


カレンを見送りリオナは課題へと向き合う。




「改めて言おう。妾は誰よりも魔法を愛しておる。それはこれからも変えるつもりも変わるつもりもない。じゃがそれでも、妾が魔法に呪われておっても妾を見て、慕ってくれる者はいるのだと知った。だからほんの少しでも、魔法と同等の愛を分け与えようと思ったのじゃ。魔法は全てであって全てでは無いのだ。魔法を通じて出会った者、得たもの、これから出会う者、得るもの、それら全ても魔法の一部、そう思う事にした。

妾は魔法しか見てこなんだが少し見渡すだけでも世界は広いのじゃ。そこには至る所に魔法が転がっておる。妾は魔法を愛すあまり他を蔑ろにし過ぎた。それらと向き合い、全てを手にし妾は偉大な魔導士になるのだ。」



リオナは課題を提出し終えるとふと憧憬を思い出した。今思えば彼女は王宮の皆から愛されていた。父も母も尊大な彼女の態度など気にもせず笑いあっていたでは無いか。何故今まで忘れていたのだろうか。だが気づけた。そこが重要なのだ。


憧れに近づくために妾は変わろう、少しづつでも。

これで第1章を終わります。(今更章追加しました)


次回から第2章 学院生活編 開幕です。

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