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後に伝説となる英雄たち  作者: 航柊
第1章 出会い編
22/123

第二十一幕 魔法

設定を出せるほど内容濃くないことに気がついたよね


「学園長、こちらの書類の印がまだ押されておりませんが。」


「ああ、ごめんなさいね。どうやら見過ごしていたみたい。!! そう、あの子たちの担当はベティなのね。よりにもよって新入生とはね...面倒なことになるに決まってるし何か考えなきゃね...。」



--講堂



「はいは〜い、新入生の皆さんおはようございます。必修科目の魔法学を担当するベティです。よろしくね〜。ではでは〜指定された席をペンダントに送ったのでその席に座ってね〜。」


ベティと名乗る教師が明るい挨拶をする。

魔法帽に杖を携えた如何にも魔導士といった格好をしている。



「ちっ、なぜ貴様なんぞが隣席なのじゃ...」


だが着席した右隣からそんな声が聴こえてくる。

足を組みながら不機嫌そうにこちらを睨んでくるのは白い髪のお姫様。


「仕方ないだろ?入学試験の筆記順位で席が決められたんだからな...。」


「よもや貴様が筆記次席とはな。カレンを上回るとはさすがの妾も少しは認めてやろう。」


「だからなんで上からなんだよ...」


「しかもそれが二人とは...カレンも腑抜けておるわ。」


その言葉と同時に視線を俺の向こうへやる。

すると左隣から


「ひぇ...すみません...私なんかが...。」


そこに居たのは昨日演舞場で声を掛けてきたエイルだった。


「謙遜はよせ、たしかエイル...といったか。私が君より筆記の出来が悪かっただけの事だ、君が謙遜すれば惨めになるのは私の方だ。」


「あ...ありがとうございます。アストリウス様...。」


「なに、次は負けないさ。それよりも私の事はカレンでいい。敬称も不要だ。」


「は...はい! ええと...そ、その...カレンさん...。」


「ふふ、恥ずかしがり屋だな、君は。」


小動物のように小さくなるエイルをカレン微笑ましく見ていた。



どうやらこの授業では4人1組でA〜Yまでのグループに分けられているようだ。

リオナ、レギ、エイル、カレンの4人はグループAということになる。


「しかしあの先生どこかで...。」


そんなカレンの呟きはベティの声にかき消される。


「そろそろみんな席に着いたかな?」




「はぁ〜い!では魔法学の授業を始めますね。

魔法学とはその名が示す通り我々が使う魔法に関する学問です。

では質問です、シン君。魔法の基本属性は?」


「はい。火、水、風、雷に加え近年そこに光、闇が追加され六属性です。」


「ありがとう。その通りです。

魔法には火、水、風、雷、光、闇を基本六属性とし、リオナさんやレギ君が使う複合魔法はこれら六属性のうち複数の属性を掛け合わせた魔法ですね。

これはまた後に解説致しますが使用難度は単一属性に比べて跳ね上がります。1年の段階でそれを習得している魔導士が同学年にいるということは49期生にとっても良い結果をもたらすことになるでしょう。」


うんうんと頷きながらそう言うベティの言葉に頷く者、軽く舌打ちをする者、リオナを称える者など様々な反応を見せた。


「さて、では少し難しい質問をしましょうか。」


少しだけベティの雰囲気が変わる。

そして魔導帽をクイッとあげて口を開く。


「あなたにとって魔法とは一体何か

Aグループの方々に答えてもらいましょう。5分だけ時間を取りましょうか。」


49期生に少しだけざわめきが広がる。





なるほどな。シンプル、それ故に難しい質問だ。レギは内心そう感じる。


ちらほらと様々な意見が聞こえるがどれも曖昧なものだ。

だがレギの思いついた答えはシンプルなものだった。


「はいは〜い。Aグループのみなさん答えは決まりましたか?では筆記首席のリオナさんからよろしくお願いします。」


ニッコリしながらけれどどこか品定めするように視線を送るベティ。

その視線を受けリオナは立ち上がる。


「決まっておる。魔法は妾の全てじゃ。妾の身も心も全て捧げておるわ!」


リオナの堂々たる宣言に男達と一部の女子からはある種の落胆が、リオナを敬愛する女子からは歓声が上がった。


隣のエイルは目を輝かせてリオナを見ている。

レギもまた、ライバルの言葉に悔しさを抱えながら胸を打たれる。

それだけの覚悟と決意をリオナの言葉からは感じられた。




だがそんな中ベティだけはつまらなそうに椅子に座り足を組みながらため息のように言葉を吐き出す



「はぁ〜、やっぱダメね。今年こそは真面目にやろうとしたけど...それにしてもシリウスちゃんの妹にしては随分苛烈に育ったわね〜。けどそんなんじゃあそこの赤髪ちゃんには勝てないわよ?」


先程までの雰囲気とはまるで違うだらけきった様子に困惑するのは49期生。


「なっ!?」


だが次の瞬間凄まじい怒気と共にレギの右から強烈な冷気が漂ってくる。

一方のテレジアはレギたちの遥か後方、最後尾のグループで目を丸くしている。


「妾の人生を愚弄するか貴様。事と次第によってはただでは済まさぬぞ。」


「生意気ねぇ。一応私、教師なのだけれど...

そういう所だけはシリウスちゃんにそっくりね。」


やれやれといった感じにそう答えるベティ


「どうやら氷漬けになりたいらしいようじゃな。侮辱は許さぬ。それだけは妾の誇りにかけてな。」


一触即発の雰囲気だったがその瞬間カレンが慌てて仲裁に入る。




「待て!リオナ!少し落ち着け。気になることがある。」


「邪魔をするなカレン!」


「私も怒っている。けど落ち着けリオナ。

ベティ先生、愛称ではなく貴女の本名をお教え願いたい。」


「あらあら。流石アストリウスのお嬢様ね、よく勉強してると褒めてあげる。

私の本名はエリザベート、エリザベート・メルクリウス。」


メルクリウスの名に一部の生徒が何かを思い出した顔をしている。


「やはり...。髪の色も喋り方も変わっていたから気づかなかった。

リオナ、この方はシリウス様のご学友だ。それに...シリウス様と同じ"超越"の魔導士だ。」


「詳しいじゃない、もしかしてアナタ私のファン?」


「貴女の事は入学する前にシリウス様、及びあなたの父上から注意を受けていましたので...。

"快楽の魔女" エリザベート・メルクリウス様。」


「狸爺め...まあいいわ。謹慎明けで退屈だったのだけれど中々面白そうじゃない。

アナタたちは運が良いわよ〜この私の授業を受けられるんだからねぇ。ただ私は私の生徒をその辺の雑魚共と同じにはさせない。そうねぇ、気に入らない子は落単させちゃおうかしら。」


悪女の様な笑みを浮かべてそう言葉を零すエリザベート。



「とりあえずそんな様子じゃ続きもできないしじゃじゃ馬なお姫様には大人しくしてもらおうかしらね。

【バインド・クアドラプル】」


エリザベートは一瞬のうちに指で虚空に魔法円を4回描きリオナに初等風捕縛魔法バインドを放つ。


「こんなもので妾を捕えられると思うか!」


リオナは【フリーズ】でバインドを凍らせることに成功したように見えたがエリザベートの魔法はリオナの魔法を弾きリオナを縛り付ける。


「ほらねぇ?アナタごときの中等魔法じゃ私の初等魔法にも遥かに劣る。分かったら暫く大人しくしてなさい。」


「ちっ...腐っても超越魔導士か...」


リオナは多少の抵抗を試みるが上手くいかず諦めたように黙る。


「思い出した!気まぐれで生徒を落単させる問題教師...ここ数年話を聞かなかったからてっきり辞めさせられたとばかり...」


後ろの席からそんな声が聴こえてくる。


「クビになんかならないわよ。私、優秀だもの。そんな事より静かにしなさい。単位、あげないわよ?さ、続き続き。ほらジェラの玩具のレギ、あんたの番よ。」


足を組み直してそう言い放つエリザベートの目は再び品定めするようにレギを見る。


カレンも諦めたように席につき講堂に静寂が広がる。


そんな中レギは僅かだけ躊躇いを見せるがすぐ立ち上がって口を開く。


「自分にとって魔法は...憧れです。けれど強くなるための手段でしかありません。俺にとって魔法は当たり前ではありません。だからこそ俺は魔法をもっと知りたい、理解したい、強くなるために。そのためならなんだってしますよ。だから俺はあなたを認めます。」



「へぇ〜、優等生かと思いきやアナタも生意気ねぇ。けどまあそんぐらいがしごきがいがあるというものかしらね〜、まあいいわ。じゃあ次、エイル・クラーレ。」



「ひゃ!?はい...あの...はい...ええと...

私は魔法を人類の叡智と努力の結晶と考えています...。古くは奇跡と呼ばれていたものを当時の人々が調べ、解析し、五百年前、ナイル・クラーレがマナを見つけ出した事で人類は魔法を真の意味で初めて観測しました。そこから不断の努力の元魔法は発達、進化し今に至ります...。

私は...クラーレの血を引く者として魔法の更なる進化、発展に尽くしたいと思っています...はい...。はっ!す、すいません長々と...。」


ぺこぺこと頭を下げるエイルに...


パチパチパチとまずはリオナからそしてエリザベート、カレンと続き最後には講堂中から拍手が鳴り響いた。


その拍手にエイルは恥ずかしそうに縮こまってしまった。


エリザベートは満足そうに頷き


「ねえエイル。ハイルは元気?」


「!! おじい様を知っているのですか!?」


先程まで縮こまっていたとは思えないほどの勢いで身を乗り出し逆に問い返すエイル。


「ええ。ハイルは私の師よ。私がこんなめんどくさくてダルい教師をしてるのもあの人のおかげ。アナタの事も少しだけ聴いているわ。自分に似て研究馬鹿に育ってしまったってね。」


「あうっ...ぅぅぅ...」


研究馬鹿という単語にダメージを受けた様子でまた縮こまるエイル。


「頑張りなさいな。付いてこれなきゃ置いてくけどね。じゃあ次、カレン・アストリウス。」


「その事だがエリザベート先生。私もエイルと同じような考えなのだが先程のを超えれる意見が思い浮かばない。右に同じとさせてください。」


「へぇ〜一言一句嘘が混じってないのが逆に癪に障るけど仕方ないわね。」


エリザベートの右目が妖しく光る。


魔眼か...あの口ぶりからするに嘘偽りを見抜く魔眼。

本来魔眼は隠すものだが嘘偽りを見抜くというならば効果を知られても困ることは無い、寧ろ牽制に使えるというわけだ。


レギはまた戦闘面で分析している自分に気がついた。

これは自分の悪い癖だと分かってはいるものの今までやめれた試しはない。


「まあざっと4人にやって貰ったけど他の人には次回までに書いて提出してもらうわ。カレン、貴方もね。」


「「分かりました。」」



「それじゃ 今日はもう終わりね〜。残りの時間はさっきの考えるか適当に過ごしてなさい。ただ時間まで講堂から出ちゃダメよ〜出たら単位上げないから。 ばいば〜い」


そう言いエリザベートは授業の予定時間を半分以上残しさっさと出ていってしまった。


「貴様!魔法を解いていかぬか!」


「アナタは時間までそうしてなさい。逆に時間までに抜けられたら褒めてあげる。」



-- 廊下


「相変わらずみたいなだな。お前は。」


「あらあらシリウスじゃない。なぁに?また私を捕まえに来たの?」


「お前の尻拭いだよ全く...。お前をクビにさせる訳にも新入生たちを苦しめる訳にもいかないからな。これを読め。」


「.....! へぇ〜学院長も考えたわね。

けどまあ...つまらなくなりそうねぇ。」




--講堂


扉を開けシリウスが中に入るとまず目に入ったのが魔法で縛られたリオナだった。

ため息と共に再び頭痛がするシリウスだったが見て見ぬふりをし生徒たちに向けて学院長からの知らせを読み上げる。



「49期生の皆様 この内容を聞いているということは魔法学の初回授業が終わっているかと思います。

あなたたちはベティによくない印象を抱いている人も少なくないと思います。彼女は今までに数多の落単者、及び退学者を出しているのは事実です。

その前例を鑑み、特例として希望する生徒は新たにアドミラル先生を迎えた魔法学の受講を承認します。


最後に一つ、伝えねばなりません。ベティの授業は批判、罵倒、中傷なんでもありです。

けれどベティから単位をもぎ取った者は皆、素晴らしい魔導士になっているのもまた事実です。

道は2つ、けれど歩めるのは一つ。

選びなさい。」


「以上。ペンダントに誓約書が送られているはずだ。一度書き込んだら訂正は不可能だ。よく考えろ。質問は学院長に直接通すように。」


講堂は確かな静寂に包まれた。


だがそんな静寂をぶっ壊したのはレギにとって聞き覚えしかない騒がしい声だった。


「簡単な道を歩いたってつまらないもーん。

人生はいつだって挑戦だー!ってどっかの偉い人が言ってたらしいしね!!!」


テレジアはそう高らかに宣言しペンダントから誓約書を呼び出して自らの名前を書き込んだ。


講堂の時が動き出す。相談し合う者、頭を抱える者、さっさと決めて名前を書く者と様々だ。


レギの答えは決まっている。だがレギはそんなことよりも恐らく苦難の道を選んだ妹が心配になっているのであった。



______________


魔法


マナが人の思考、願い、祈りを汲み取り巻き起こる現象の総称。

古くは奇跡と称されていたのを古代の人々が検証、実験を繰り返しいつしか魔法と呼ばれるようになった。


属性の決定 術式の確立 効果設定 対象設定 発動者のマナ及び発動者が使役するマナこれらの要素が絡み合い引き起こされる。



今ではこの世界で最も重視される力であり人々の生活の一部となっている。

そしてより魔法への造詣を深め、精通する者を人は"魔導士"と呼ぶ。



魔導を極めんとする者よ

ひと握りの勇気を持って一歩踏み出せ

その一歩が積み重なって己の道となる


魔導全書 著 ハイル=クラーレ


ニコニコセールでいっぱい買いました

セールしか勝たん

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