第二十幕 神を冠する魔導士
転スラのゲーム 楽しいですね
各ギルドの紹介が終わり、進行のアドミラル先生が小休止を宣言すると生徒達はギルドの話で盛り上がっていた。
「お前、次で高等上がれるだろ?どこのギルド受けるんだ?」
「まだ悩んでるんだよ...。得意な属性が無いってのもあるんだけどな、どのギルドも魅力的過ぎるんだよ。」
「まぁーそうだよなぁ。実際希望してるギルドじゃなくてもスカウトなんて来ようもんならそっち行っちゃうぜ俺は。」
そんな声が聴こえてくる中 見慣れない同級生らしき生徒がレギに話しかけてくる。
「あの...アルフェニス様ってどういう方ですか?」
「君は...」
「あ...!ごめんなさい。私はNo.67 エイル...エイル・クラーレです...。初めましてだもんね...あうぅ...。」
灰色の髪から片目だけを覗かせる少女は恥ずかしがり屋なのかは俯きながら名乗る。
「No.101 レギだ。よろしく、エイル。それでマスターの事を聞きたいのかい?」
「よろしく...お願いします。 はい... どんな感じなのかな...とか、それと...怒らないとか...。」
たどたどしい言葉ではあったがエイルの眼にはしっかりとした意志の光をレギは感じる。
「そうだな。まだお会いして一週間だけどとても素晴らしい人だ。俺はもうマスターを信頼しているしマスターからの信頼に応えられるようになりたいと思っているよ。
怒ったのはまだ見た事ないな、怒るより諭すタイプだと勝手に分析してるよ。」
自分なりの答えをしっかり返す。
「ありがとう...。あの...私...結界魔法に興味があって...アルフェニス様がこの学院の空間を結界によって支えてるって聞いて...私...闇魔法しか得意じゃないから...お話だけでも聞くことってできるかな...。」
「なるほど...。俺も結界魔法についてはマスターに聞きたいことがあるからな、今度会ったら訊いてみるよ。その時はまた連絡する。」
「...! あ、ありがとう...。君の魔法...洗練されて綺麗だった...また見せてね...。じゃあ...ばいばい。」
少しだけ目を輝かせてエイルはそう言い残しふらっと新入生達の波に消えていった。
その場にいるだけで落ち着くようなどこか不思議な雰囲気を持った子だった。
すると後ろからビシッと軽い衝撃を受ける。
「まーた新しい女の子とお喋りして!お兄ちゃんはほんとにもう...!
テレジアが頬を膨らませてデコピンしながら話しかけてくる。
「質問に答えただけだ... お前の思ってるような事はないよ。」
「分かってない...!分かってないよお兄ちゃんは〜!
あーいう子が案外※△%□…......」
またよく分からない話をし始めたため適当に聴き流していると...
凄まじい魔力の奔流と共に
火、水、風、雷、光、闇
壇上に六本の柱が出現する。
______________
そして中から現れたのは先程とは違い正装のローブに身を包んだマスター達。
唯一アルフェニスはメルヴィに肩で担がれていた。
「さっきあんな事言ったのにみんなの前に顔を出せない......」
「事前に通達はいっていたぞ馬鹿め。メルヴィご苦労だった、その荷物はもう置いてっていいぞ。」
「うむ!後は頼むぞシリウス様!」
そう言いメルヴィは壇上にアルフェニスを置き姿を消す。
「帰っていいかい?シリウス...。」
「いいわけないだろう。そらそろいらっしゃる、貴様も早く立て。」
______________
「あれがアルフェニス様...。」
エイルが壇上のアルフェニスを見上げそう呟く。
「あ!あの人転移門にいた人じゃない??お兄ちゃん!!!」
「そいえばお前もいたんだったな。そうそうあの時のアル先輩がマスターだったんだよ。」
「ふむふむ、あの時と今とじゃ周りのマナの反応が全然違う、凄いね。」
テレジアとそんな会話をしていると。
「へぇ〜〜。アナタほんとにマナが見えるのね。素晴らしい魔導士になれるわ、いつか私の後継者になれるかもね。」
ほんとになんの前触れもなくテレジアの首に後ろから抱きつくように女性が現れる。
「魔力も良し、器も良し、うーん顔も可愛い!
このまま連れ帰って私の弟子にしちゃおうかしら...。」
囁くようにテレジアの耳元でそんなことを呟く。
「ひゃんっ!あ、あのー...どちら様ですか?」
あのテレジアが珍しく焦っていて目を丸くするレギ
だったが流石に見過ごせないので助けようとするが
身体が何故か動かない。
それに他の生徒達は最早この女性の存在に気がついてすらいないようだった。
まるで時が止まったようにレギとテレジア、そして見知らぬ女性以外の世界が停止する。
よく見たらテレジアも動けないようでその額に一筋の汗を流したその時
「あまりうちの新人を虐めないでくれますか、アイリス様。」
「やれやれ、久々の再開かと思えば、貴女様の遊び癖には困ったものですね...。ほら、レギ、動けるかい?」
気がつけばシリウスとアルフェニスが壇上から降りてきていた。
アルフェニスの一言でレギの身体に力が戻る。
そしてアイリスと呼ばれた女性は
「なぁに?アナタたちが遊んでくれないからじゃない。私退屈なのよ...。ねえシリウス、その子私にくれない?」
「お断りします。この子は私が責任をもって育て上げるので。...それにアイリス様に任せたらとんでもない事になりそうですし...。」
「な!言うようになったじゃないシリウス。私は嬉しいわぁ。ねえジェラ?」
「彼女にそんなこと言えるのは貴女ぐらいですよ...
まあもう少しアイリス様見習って頭柔らかくなって欲しいですけどね。」
「アルフェニス、貴様あとで覚えておけ。アイリス様、遊んでる場合ではありません貴女はお忙しい身なことを忘れないで頂きたい。」
「全く偉くなるってのも考えものね〜窮屈ったらありゃしないわ。
アナタ、シリウスの元が飽きたらいつでも私の元へいらっしゃいな。」
テレジアにそう言い残しシリウスとアルフェニスを連れ壇上の方へ向かうアイリス。
そんなアイリスを見ながら
「凄いよ、お兄ちゃん。あの人はマナを従えてるんじゃなくてマナがあの人に従ってる。凄い...。」
テレジアのそんな呟きがどこか遠くに聴こえるレギだった。
______________
アイリスが壇上に立つその瞬間、世界が動きだしギルドマスター六人が一斉に跪く。
その光景に生徒達にざわめきが広がる。
アイリスが手をかざすと杖とローブが出現しアイリスの長い黒髪が結ばれる。
そして...
「おもてをあげよ、我が剣たちよ。壮健そうで何よりだ。」
先程までの口調とは打って変わった荘厳な口調で喋り出す。
「アイリス様につきましてもお変わりなく。我らが6人、お会い出来る日をお待ちしておりました。」
ギルドマスターたちを代表してシリウスが返す。
そしてシリウスは生徒達のほうを向き
「この方こそ我らが主 "神域"にして
"魔導王" アイリス・ディア・ペルシウス様だ。
今年は10年に一度の魔導王祭が開かれるため1年間学院に滞在して頂く。アイリス様自ら教鞭を執る事もあるだろう。この貴重な機会を逃さぬように。」
シリウスの言葉に一瞬の静寂の後歓声が上がる。
「魔導王...僕ですら直接お目にかかるのは初めてだよ。君はあるかい?王女様。」
「ふん、妾ですら拝見したことはあれど言葉を交わしたことすらない。貴様が見たことないのも無理ないじゃろう。」
少し離れてシンとリオナがそんな事を話している。
「魔導を極めんとする者たちよ、励むがよい。我がそなたらを導こう。だが決して自らの道を狭めてはならない。我が示すのは無限にある道の一つでしかないのだから。」
装飾のついた杖を鳴らし高らかにそう宣言するアイリス。
王族のシリウスとも全てを見透かすようなアルフェニスとも違う絶対的な雰囲気を纏うアイリスにただただ圧倒される生徒達。
「ではな。また学院内で会うこともあろう。その時はよろしく頼む。」
そう言いアイリスが再び杖を鳴らす。
先程と同じように世界が停止する。
だがレギはそれを認識出来ている事に疑問を抱いた。そう、レギ以外の世界が止まっているのだ。
アイリスは音もなく壇上から降りレギに近づいてくる。
そしてすれ違いざまに
「イバラの道を行く者よ その歩みを止めることなかれ。 ふふっ 期待しているわぁ。」
手を振りながらそんな言葉を残していった。
「どういう意....」
振り返るともうそこにアイリスの姿はなく、世界が動き出していた。
「どうしたんだぜ?うちの顔に何かついてるか?」
振り返ったところに立っていたヨルハにそう声を掛けられる。
「いや、なんでもないよ。」
レギはそう返すのが精一杯だった。
頭の中では先程の言葉がこだましていた。
そろそろダンまちの続きが読みたくて震えてきました。
次回は軽い解説にしようかなと思います。




