第十九幕 頂点たる魔導士たちpart5
こんな小説にブックマークしてくれる人がいて感動しました。
頑張ります。
本物の天才などいない...と言いたいところだけど彼女には天才という言葉を送らなければならないだろう。
しかもその溢れんばかりの才能を惜しみなく周りに振りまき世界を照らす。 正に太陽だ。
けれどその太陽が輝くのは誰がためか。
私はそれを見つけた。誰より早く。
私は輝く太陽より陰る月を愛でる。
そんな私を人は異端と呼ぶ。
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--ギルド プロメテウスの一室
「この一週間で何しやがったシリウスのやつ。」
「あれで一年とは...恐れ入りますねアルザ様。」
「シリウス様の妹君の事は噂に聴いていましたが赤髪のテレジアという少女、あれは一体何者なんです?」
「ジェラが辺境で見つけてきたらしい。よりにもよってシリウスに譲りやがって...。ジェラはもう一個の玩具にご執心だしな。」
炎の鳥でアルカナの様子を見ていたのはプロメテウスの一行。
「カンナ、周りを見渡してみろ。他のギルドのヤツらもいるだろ。」
「本当ですね。ディアボロス以外の使い魔を感知できます。」
「ここだけの話だがな。あの娘にはディアボロスを除く他ギルド全てからスカウトがいってる。暗黙のルールを破ってでもな。」
「なんと...!ですがあの魔法を見た今なら納得できます。極上の翡翠を前にしたら磨きたくなるもの。私も是非磨いてみたかったです。」
驚きの声を上げるカンナ。
「シリウス様はティナ姫というダイヤに加えてルビーとサファイアも手に入れたと...。やはりアルカナがライバルになりますね。」
「怖気付いたか?カンナ。」
「とんでもない。敵が強いほど燃える、それが我々でしょう。」
「分かってんじゃねえか。それでいい。」
そう言うとアルザは演舞場の映像へと目線を戻す。
--魔導演舞場
壇上から観覧席に戻ってきたリオナとテレジアに様々な声が掛けられる。
そのほとんどが羨望や称賛の声だった。
テレジアはそれを嬉しそうに、逆にリオナはそれを嫌ってるように見えた。早々にカレンを見つけるとテレジアに生徒達を押し付けて囲いを抜け出しこっちへ歩いてくる。
そしてすれ違いざまに
「貴様はああはなってくれるなよ。」
その言葉にカレンは苦い顔をする。
だがレギは
「心配はいらない。俺が誰の兄を生まれてから今までしてきてると思ってる。」
その答えにリオナはほんの少しだけ笑みを浮かべたように見えた。
「さて、次は君の番かい?レギ。」
そうシンが声を掛けてくる。
「それなんだが...俺は何も聞かされてないんだよ。
正直胃が痛いよ...いつの間にかキティ先輩や師匠たちいなくなってるし。」
レギがそう零した瞬間 世界から光と音が奪われた。
会場に緊張と静寂が広がる。
だがその時 コツ コツ と壇上に登る足音だけが響いた。
そして
「在学生諸君。ごきげんよう。そして新入生の君たちは初めまして。
私がディアボロスのマスター アルフェニス・ジェラキールだ。
在学生は知ってる人も多いだろうが私はシャイでね。あまりに人前に顔を出すのが得意じゃないんだ。このような形になってしまってすまないと思ってる。」
語りかけるように決して大きな声では無いアルフェニスの言葉だが全ての音を消し去った会場にはそれで充分だった。
「さて、長い話は好きじゃないからね。本題に入ろう。知ってる人も多いだろうけどディアボロスは他のギルドとは違い支援の役割が強いギルドだ。それ故に主に要求されるのは闇魔法への適正、補助魔法への適正だ。けれど今年からはそれを少し変えようと思っていてね。」
その言葉に生徒達、特に在学生の方から無言のざわめきが聴こえた気がした。
「ギルド ディアボロスは特殊魔法戦闘部隊"カーサス"を設立する。そしてカーサスではあらゆる事態に対処する為に一芸に特化した...
いや敢えてこう言おうか、私は異端な才能を求めている。
強大過ぎる魔力故に魔法を制御出来ず周りから疎まれた少女。
魔法に興味が無く剣のみに没頭した男。
自らの魔法によって他者から気づかれなかった者。
そして誰よりも才能という壁を知りながら足掻き続ける者。
けれどこの子達は誰よりも自分を信じている。だからこそ輝きを放つ。そしてその輝きを拾い上げるのは私の役目だ。
自らを無能と論ずる者たちよ。
大衆であるな、確固たる個であれ。
例え自分の行先に光が見えなくとも今を諦めていい理由にはならない。
君たちが輝きを放つ日を私は待っているよ。」
暗闇から聴こえる確かな熱を持ったその言葉はレギの胸を打つ。アルフェニスが語った子の話は間違いなくレギの知っている人物たちだろう。
レギだけではない。生徒達のほとんどが今の言葉に何かを感じたのは間違いないだろう。
レギは改めて偉大な人達の元に居ることを痛感した。
そしてふと暗闇が消え、世界に光と音が戻る。
すると先程までアルフェニスがいたであろう壇上には見覚えのあるピンクの髪を持つ少女が立っていた。
「さて!ここからはカーサスの隊長である我!
メルヴィ様の出番だぞ!我々はここに魔導大祭の制覇を宣言する。全てを倒し我々が優勝する。
そしてもし我々を無所属の者が倒せば無条件でディアボロスへの入団とカーサスへの所属が決まるぞ!
メンバーは我とアシュレイ、シェイドの三人。
そして...」
ドヤ顔で宣言するメルヴィと壇上に現れるアシュレイとシェイド。そしてメルヴィが虚空に手を伸ばすと空間がねじ曲がり気がつけばレギの襟を掴み壇上に引っ張り出していた。
「この男、新入生のレギだ!!!」
メルヴィが言い放った生徒達の視線がレギに集まる。その瞬間レギは激しい頭痛を覚えた。
簡単な話だ。魔導十傑を狙うよりはるかに簡単なのは考えるまでもない。
つまりレギは魔導大祭において誰よりも狙われる存在になったのは間違いない。
その事実に頭痛が止まらないレギだった。
当然観覧席から声が上がる。
「噂の魔法力に欠けたガキだろ?俺がぶっ倒してやるよ。」
「少し可哀想だけれど私達にとってはチャンスだもの。狙わせてもらうわ。」
勿論中にはアシュレイやシェイドたちを狙う声もあるがそんなものは極小数に過ぎない。
だがそれでも
「はっ!貴様らこのレギの首なら簡単に取れると思ったな?あまり舐めてくれるなよ。こいつは我々が全力をもって育てると決めたからな。無論こいつの努力次第ではあるがな!」
そう高笑いしながらメルヴィが宣言する。
「メルヴィの馬鹿は今に始まったことではないがこれで貴様も後には引けるまい。まあ元より退路など無いがな。」
「まあそういう事だ。それに俺達も超えてきた道だ、死なない程度に頑張れよ。」
「本番まではいくら負けてもいいぞ!だが本番は負けるな。よいな?」
三人からそれぞれプレッシャーを言葉に変えてぶつけられる。
「それは先輩達も同じでしょ?俺の先輩達は最強ってことを証明してください。」
レギは精一杯の抵抗とばかりに言葉を返す。
ポカンとしたメルヴィだったが数秒おいて
「はっはっは!よく言った!聴こえてるな!各ギルドたちよ!!!」
はち切れんばかりの魔力を発しながらメルヴィが最後の一言を放つ。
「かかってこい。」
小柄なメルヴィの姿が誰よりも大きく見えたのは気のせいではないだろう。
その言葉に会場から大歓声が沸きあがる。
これが"一位" これがメルヴィ・キティ・ラミア
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「はっ おいカンナ、メルヴィを倒せ。いいな?」
「私の前に立ちはだかる者は全て切り伏せます。ご心配なく。」
「不愉快だ。アルフェニスの奴、何を考えている。」
「あれはメルヴィちゃんの勝手だと思いますよ〜?ラグナ様〜。」
「あれを再び超えろ。それがお前の役目だ、ギル。」
「...」
「どうだい?勝てそうかな、ゼクス、ヴァイオレット。」
「んなもん勝つしかねえだろ。」
「私は自分がメルヴィに負けてるなんて一度も考えたことはありません。ラキウス様。」
「ティナ。」
「はい、シリウス様。」
「私はお前を信じている。」
「ん。必ずや。」
それを見ていた各ギルドの陣営が一様に戦意を滾らせる。
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ギルド ディアボロス 最奥
「ふっふっふ、また派手にやっておるのう。全くお前とは正反対じゃな。 のうジェラ?」
「あの子たちにはそれを為せるだけの自信と積み重ねがあるからね。...正反対とは言い過ぎじゃないかい?」
「根暗陰キャだから間違ってはおらんじゃろ。」
「どんな魔法よりその言葉が効くよ...。
確固たる自信と力...。レギもそれを手に入れなければならない。君の力も必要になる、その時は頼むよ。」
「ふむ。やつが相応しい男になれば自然と手を貸してやろう。卒業前の遊びにはちょうどよい。」
「なるさ。ならなければ彼はここに来た意味が無い。」
十三幕に書いた魔導大祭の間隔を3年から2年に変更しました。
次回辺りにキャラ解説等するかもしれないです。




