第十八幕 頂点たる魔導士たちpart4
短めですがなんとか。
我が魔法は我が信念、願い、力の情景
人は私を閃光と呼ぶ。
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--魔導演舞場
ゼクスの演奏、ラキウスの熱い演説の熱がまだ冷めやまぬ会場にふと昼でも分かる光の粒が漂い始める。
それは少しずつ収束しいつしか会場の外から大小様々な光帯が会場に伸びる。
少しの間それを見ていると。
一際強い輝きを放つ光帯と七色の輝きを放つ光帯が壇上に向かって降り注いだ。
「ふふーん!お兄ちゃんきっと驚くよ!!!」
何やら得意気なテレジアだったが
「馬鹿者! やはり貴様は黙っておれ。」
そう言うリオナに口を塞がれてしまった。
壇上に姿を表したのは美しい純白の髪を持つ女性と七色の宝石を身につけた少女だった。
そしてレギはその純白の髪の女性と目が合う。
白状しよう。レギは見蕩れていた。
「あれは...」
レギの呟きは周りからの大歓声に掻き消された。
「王女殿下!!!」
「"閃光"シリウス様よ!凛とした立ち姿...憧れますわ...。」
「あのお方こそ我が国エルフィニアの第一王女にしてギルド アルカナのマスターも務める世界が認める魔導士、シリウス様!!!」
「それにあちらのお方は隣国の王女にして"虹姫"ティナーシャ様でしょ!?お二人と同じ学院に通えるなんてなんて光栄なことかしら...。」
「ティナちゃん今日も可愛い...けど私たちよりずっと強いのよね...。」
「ああ まだ三年目なのに魔導十傑第3位だぜ?俺たちとは格が違うよ。」
在学生、新入生その両方から声が上がる。
今までのギルドとは歓声が比にならない。
それが紛れもなくトップギルドであることを物語っていた。
「静聴。」
ティナーシャと呼ばれたメルヴィと同じぐらいの少女が静かに、だがそれでも良く通る声で呟く。
恐らく魔力が込められているのだろう。先程まで騒いでいた生徒達が不自然に大人しくなる。
「ご苦労、ティナ。」
「いえ...これくらいは。」
「新入生諸君。知ってる者も多いだろうが私がギルド アルカナのマスター、シリウス・ノア・エルフィニアだ。」
凛としたシリウスの声に再び会場が歓声で包まれる。
「さて、新しき魔導の子らよ、よく学び、力をつけ、我が国を支える魔導士となることを私は願っている。それは新入生だけでなく在学生も同様だ。
それにここにいるティナーシャのように国を越えて学びに来ている者もいるだろう。新しい友と共に世界を知るといい。この学院はそれが可能であると私が保証しよう。」
シリウスの素晴らしい演説にレギは聴き入っていた。それは周りの新入生も同様であった。
「これがこの国の次期王位継承者にして私の主、シリウス様だ。凄いだろう?見蕩れてしまったかい?」
カレンが声を掛けてくる。
「カレン、からかうのはよせ。しかし本当に素晴らしい人なのだろう。話しひとつでも分かるぐらいにはな。」
「幼い頃からお仕えしているがシリウス様より優れた方を私は知らない。人としても、魔導士としても。偉大なお方だ。」
尊敬と何処か遠くを見るような瞳でカレンはシリウスを見上げる。
「まあ堅苦しい挨拶はこの辺にして次へいくか。
我がギルド、アルカナは学院の模範たる最高の魔導士を輩出する事をギルドの指針に掲げている。
故に少数精鋭、だがそれ故にその質は高い。我々が新しく団員を迎えるのは年2回、始業式と魔導大祭前の2回、新入生から一人、在学生から一人。それが通例だった。だが今年は特例だ。新入生を二人我がアルカナに迎え入れる。」
その一言に会場は大きくざわついた。特に在学生の方だ。
「49期生 リオナ、そしてテレジア。ここに。」
シリウスがそう言うとティナーシャが指を鳴らす。先程まで目の前にいたリオナとテレジアが気がつけば壇上に立っていた。
シリウスは2人の肩に手を乗せながら話を再開する。
「この2人は魔導学院の歴史の中でも随一の可能性を持つと私は確信する。間違いなく歴史を変える魔導士になると。」
その言葉に在学生の目がリオナとテレジアへ向く。
ほとんどが品定めのような視線の中に明らかな敵意も混じってる様に感じるのは気のせいではないだろう。
だが実力のある者程二人の能力に気がつくだろう。
恐らくそれがシリウスの狙いなのではないだろうかとレギは予想する。
「ふふ、いっぱい見られてるねリオナちゃん。」
「はっ!姉上も人が悪い。妾たちを在校生のやる気の薪にしようとはな。」
在学生の前だと言うのにあの二人は全く意に介さないらしい。そういうとこは見習ってもいいと思うレギであった。
「なんのことだろうな。だがこれくらいで怖じ気付くお前たちではないだろう。
ちょうどいい機会だ、力を示せ。」
「安い挑発じゃな。おいテレジア。貴様の好きなように魔法を放て。妾が合わせてやる。」
「ほんとに〜?私張り切っちゃうよ?」
「構わん。なんとかしてやろう。」
「おーけい!リオナちゃんを信じるね!」
そう言いテレジアが魔力を練り始める。
先程のゼクスの魔法によってこの会場の空間には普段以上のマナが満ちている。マナを見分ける事のできるテレジアはそのマナの流れが手に取るように分かるのだ。
そしてティアの元で初めて超越魔法を放ってから三日、テレジアはあの感覚を反復し続けた。リオナ、シリウスをもって天才と言わしめたテレジアの才能は加速する。
会場に散らばっていたマナがテレジアの元へ集まっていく。マナに理解のある生徒達は何が起きているのか理解したのだろう。少しずつざわめきが広がっていく。
そしてテレジアは詠唱を始める。シリウスに習った光の最上位高等魔法を。
"陽光の前に壁はなく
何者にも阻まれる事なき 無窮の閃光
いま 世界を照らせ 中天の星よ"
【ソル グリューエン】
テレジアが渾身の魔法を放つ
そして才能は共鳴する。
"咲き乱れるは氷の万華
映るは流転する世界
現すは総てを反す 鏡面の薄氷 "
【万華氷鏡】
テレジアが放った一条の閃光をリオナは多数の氷の華で乱反射させる。
それはまるで光の舞踏。万華鏡が魅せる幻想そのものであった。
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「魔法融合を新入生で見れるとはね...。」
そんな誰かの言葉と共に
パチパチと在学生から拍手が上がる。そう、ここは魔導学院、魔法を極めんとする者たちが通う世界有数の学び舎。だからこそ理解するのだ。使用された魔法の素晴らしさに。
だが新入生の方は皆唖然としていた。同級生が見せた規格外の魔法に。
だがそんな中
「ふん!俺は必ずここで上り詰めてみせる。あいつらにできて俺に出来ない道理はねえからな。」
「はっはっは!よく言ったリンドール。
その通りだ。俺たちが歩みを止めなければいつかは辿り着けるだろうよ。やりがいがあると言ったものだ。」
リンドールの言葉にグランが続く。それを聴いて新入生達にも活気が満ちていく。
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それを見てシリウスは満足そうに頷き再び口を開いた。
「二人の力は見ての通りだ。この二人を加え我々アルカナは今一度魔導大祭を取りに行く。
在学生諸君、今年は新入生同様に二名、迎え入れる予定だ。 私に選ばせてみろ。」
そう言葉を残しティナーシャが指を鳴らしシリウス達は壇上から姿を消す。
一瞬の沈黙の後 会場はこれまでで最高の盛り上がりを見せた。
そんな会場の中で
「壁は高ければ高い程とはよく言ったものだな。誰よりも高い壁は誰よりも近くにか...。」
そんなレギの呟きは隣にいるヨルハとシン以外には誰にも聞こえずに騒ぎの中に消えていった。
魔法を考えるのが既に難しくなってきて改めて色んな作者さんたちの凄さを実感しました。