第十四幕 頂点たる魔導士たちpart1
ギルド紹介タイム
魔法
それは奇跡の具現化
されどその奇跡は努力した者にしか舞い降りない
故に人工の奇跡
どこかの偉い人はこうとも言ったらしい。
私はこの言葉が好きだ。
努力する者に魔法は等しく平等である。
初めから天才などいはしないのだ。
才ある者はそれに見合う努力を。
才無き者は並び立つ為の努力を。
私の親友は天才と呼ばれる普通の少女。
私の新しい友は才能に抗う努力の天才。
そして抗う兄を愛する常識の外にいる才能の怪物。
様々な才能が集う49期生
誰かが言った異端の世代。
そんな中に私もいる。私は紡ぎ、伝えよう。
異端が作り上げる伝説の物語を。
〜カレン・アストリウス〜
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--始業式 魔導演舞場
「ではこれより魔導学院始業式を始めます。
ティア様、お願いします。」
司会進行のアドミラル先生が号令を掛ける。
「ごきげんよう 生徒諸君。
今年もまた新たなる魔導の使徒を迎え、研鑽の
日々が始まります。魔法の子らよ、よく学び、思
考し、そして魔法と踊りなさい。未知を我々に示
し、我々に選ばせてみせなさい。以上。」
ティアは挨拶を手短に切り上げる。
「ではこれより各ギルドによるギルド紹介と今年の方針の発表を行います。生徒諸君、特にギルドにスカウトされたい者は自らの魔法と向き合いよく聞くように。」
生徒たち、特に在学生の顔付きが変わる。
ギルドに所属するという事の重みをレギたち新入生は肌で感じとることになった。
「ではまず火を司るギルド プロメテウスからお願いします。」
アドミラルの一言と同時に演舞場が炎に包まれた。
急な出来事に冷静さを欠いた新入生の一部が騒ぎ出すが...
「慌てるな!腑抜け共が。よく見るがよい、この炎は熱を持っておらぬ、見掛け倒しの炎じゃ。」
リオナが一喝しようやく静まる。
「はっ。可愛くねえ姫様だな。だが正解だ。」
その一言共に空から男が降ってくる。その男が壇上に降り立つとその左右に炎の渦と共に男女が現れる。
すると観覧席から
「きゃぁぁ "陽華" カンナ様よ!」
「なんて凛々しい。私もいつか...。」
と在学生だけでなくその手に詳しい新入生からも声が上がる。
「カンナ姉サマ...。」
そんな呟きが前に座るヨルハから聴こえる。
カンナと呼ばれた女性は東洋風の戦衣装を纏っているためもしかしたらヨルハの親戚か何かなのだろうとレギは予想した。
そしてまがいなりにも強者達と一週間修行したレギだからこそ分かるカンナと呼ばれた女性は師匠たちと同等レベルのオーラを発していた。
つまり魔導十傑、少なくとも[偉大なる魔導士]には名を連ねていることだろう。
そして真ん中に立つ男の放つオーラはそれらとは比較にならない強烈な圧を発していた。新入生の大半、それに在学生の一部もそのオーラにあてられ気圧されていた。
「少々試した。許せ。」
そう言うと男は発していたオーラと講堂を覆っていた炎をきれいに消して見せた。そして
「怖気づかねえ新入生共、お前らはまだ見所あるな。だが怖気付いた在学生共!貴様らはダメだ。」
その一言に講堂が僅かにざわつく。
「俺たちプロメテウスが求めるのは戦士のみ。軟弱な心を持つやつは必要ねえ。プロメテウスへの入団条件はたった一つ。
俺 ギルドマスター アルザ・ラス・アストリアに力を示すことだ。何でもいい。俺を前にして己の力を正しく見せれた者を俺は、俺たちは歓迎する!」
そう叫ぶとアルザは手をかざし巨大な火球を生み出した。
「おいおいまじかよ...」
馬鹿でも分かる今回のは膨大な熱量を持った紛れもない超魔法。
その規模にさすがに新入生だけでなく在学生たちも騒がしくなる。
だがその時アルザの傍らにいたカンナがその背に背負った刀を抜く。炎の如き緋色の刀身を持つ美しい刀だった。
「全く、予定に無いことされても困ります。
カリマ、貴方は分かっていたようですね。」
迫る炎を前にカンナがそう愚痴を零す。
「そう怒るなよカンナ。アルザ様はお前の力を披露したいのさ。」
「そうだ。力を示せカンナ。」
「アルザ様がそう仰られるのなら...」
そう言いカンナが壇上から飛び立つ、その足には炎の翼が出現していた。見たことの無い綺麗な魔法だった。
「あれが一条家の火燕...」
ヨルハはあの魔法を知っているらしい。
後で教えて貰おうとレギはカンナを見上げながら考えていた。いざという時に備えてアルカディアに手をかけながら。
「"緋剣 火華閃"」
緋色の刀身がさらに紅く輝く。そしてそのまま炎を十字に切り裂く。炎の欠片が空に散るが観覧席に落ちる前にそれをカンナはまるで舞いのように切り裂いていく。
先程まで騒がしかった演舞場はその舞いに見蕩れるように静まり返っていた。
「この度はうちのマスターがご迷惑をお掛けしました。」
カンナがそう言い飛んだままお辞儀をすると観覧席から歓声が上がる。
「いつか俺も、プロメテウスに入ってカンナ様を支えてみせる。」
「カンナ様...かっこよすぎますわ...」
「素晴らしい魔法と技術、流石カンナね。」
「はっはっは!流石は俺のカンナだ。
貴様ら!今年はこのカンナを筆頭に魔導大祭を取りに行く!!! 共に戦いたいと願う者よ。俺はいつでも貴様らの挑戦をギルドにて待つ。自ら選ばせに来るがいい。」
「私はアルザ様のものではないですよ。ですが皆様の挑戦を私は心からお待ちしています。」
そうカンナが笑顔で締めくくる。
その言葉たちに沸き立つプロメテウス志望の生徒による熱気で演舞場は更なる盛り上がりを見せた。
しばらく演舞場が騒がしくなっていたがその時
「全くもって暑苦しい。ナギア。」
「は〜い ラグナ様〜。
"鎮静の群青 静寂の幻雨 全てを包め 凪の大海よ"
【カームレーゲン】」
演舞場にほんの瞬きの間だけ雨が降る。
一瞬で演舞場に静寂が広がる。
「ち、ラグナかよ。相変わらず湿気た女だぜ。」
「黙れ筋肉火ダルマ。我々の時間だ。そこをどけ。」
現れたのは大海の魔女率いるギルド サダルメリク。水を司るギルドである。
本当は六属性まとめてやろうと思ったんですけどまとめると長くなりそうなので分けてみます。